2004.09.30

雨に濡れた本

極端に東へ針路を振った台風21号に影響か、今日は久しぶりにしっかりと雨が降った。

雨と言えば、「雨に濡れてへろへろになった本」が読者窓口に送られてきたことがある。

添えられた手紙によれば、差出人はとある国にこのとある本を持って旅行に行き、そこで雨に遭ったそうだ。

雨に濡れた本は、水を含んで紙がふにゃふにゃになり、やがては背を綴じている糊が緩んで一部の折りが外れ、最後には分解してしまった。

許すまじ! 雨に濡れてバラバラになるとはどういうことだ!

交換せよ!

なぜならば、本のどこにも「雨に濡れたらバラバラになります」と注意書きがないじゃないか!


いいぞぉ。下半期のベストお問い合わせ賞に最有力ノミネートだ。年間総合チャンピオンも狙える好位置につけた。

以後我々は悔い改め、本には注意書きを添えることにしよう。


【本書をご利用の際は、以下の点にご注意ください】
・紙の断面に沿って指などを走らせると、皮膚表面を切断することがありますが、肉切包丁の代わりにはお使いいただけません。
・コーヒーなどをこぼしたときは、固く絞った雑巾などで拭き取ってください。洗濯機で洗うと、本としての体裁を損なう恐れがあります。
・電子レンジで温めると、発火することがあります。発火した本は、しばしば機能に問題が残ります。温めるときは、コタツ(中温)の中に入れてください。
・本書をそのまま凍らせても膨張して破裂することはありませんが、ページ同士が貼り付いて開きにくくなります。
・凍らせた本書を使用して生命体の頭部などに打撃を加えると、著しい損傷を与える危険があります。
・記憶したページを破って食べる主義の方は、その行為を止めるものではありませんが、紙質やインクが体質に合わないことがありますので、異常を感じたときは最寄りの医者にご相談ください。
・文字が小さくて見えにくい方は、各自拡大コピーを取るなりしてお読みください。
・文字が読めない方は、義務教育からやり直してください。

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2004.01.14

大阪06、東京03

とある国の現地旅行手配会社としてガイドブックに掲載されている会社の市外局番は「06」で、シャルジャ首長国にある。
さらにこの現地手配会社の、日本での予約先として東京の会社名と電話番号が書いてある。その市外局番はもちろん「03」だ。その隣のページには、同じく日本での予約先として大阪の会社名と電話番号が書いてある。その市外局番は言うまでもなく「06」だ。

さて、とある読者が、ドバイの現地発着ツアーを買うために、「06」で始まるシャルジャ首長国の番号に電話をしようと思い立った。彼または彼女は、受話器を取ると、迷わず「06-xxx-xxxx」とダイヤルした。
不通だった。
彼または彼女は思った。
「このガイドブックは間違っている。誤植だ。大阪の局番はずいぶん前から4桁になっているのに、まだ3桁のままだ。情けない。いいとも、わたしが頭に“6”を付けてかけるから。なんて気の利くわたしだろう」
再び受話器を取ると、今度は「06-6xxx-xxxx」とダイヤルした。
繋がった。
「○○○社ですか。ドバイのツアーを申し込みたいのですが」
うちは××ですが
「失礼(ガチャン)……とことん間違ってるじゃないか。仕方がないなあ、じゃあ次の番号にかけるか。東京03の……」

電話をかけた読者は結局のところ目的を果たした。だから、これはとんだへちょいガイドブックだと思いこそすれ、クレームは言ってこられない。しかし、電話をかけられたほうはどうだろう。

“気の利く”読者が多ければ多いほど、降って湧いた災難のような間違い電話も多くかかってくる。そして、実際の話、日に何本もかかってくるほど“気の利く”人が多いのだった。

現地の電話番号であることが、そんなに気付かれにくいのだろうか。外国の旅行を案内する本である以上、掲載されている番号は、“とくに断りのない限り、現地の番号である”ことは、暗黙の了解ではなかったのだろうか。だからこそ、日本にある会社の番号には「日本での予約先」と付記されているのだ。

しかしそんな不文律は通用しない時代になった。先週かかってきた、違う国の番号について問い合わせはこうだった。

「クライストチャーチのインフォメーションセンターに電話をかけてもつながらないので、移転しているのではないか。新しい番号を教えていただきたい」

丁寧な口調の紳士であった。

「○○ページに掲載の、海外への電話のかけ方に沿ってお電話いただいてもかからないでしょうか。どのようなメッセージが流れていましたか?」
「“この電話は現在使われておりません”と」
「では、まだ海外まで回線が繋がっていないようですね」
これは海外なのですか?

ニュージーランドのクライストチャーチは、市外局番が「03」だった。東京のつもりでかけていらっしゃったのだ。
ただ救いだったのは、3桁の局番の頭に「3」を付加して「03-3xxx-xxxx」を試みていなかったことだ。二次災害は免れた。

わたし個人としては、よほどわかりにくい表示がされているならいざ知らず、現状のガイドブックを読んで現地と日本の電話番号の区別が付かないのはいかがなものかと思う。
しかし思い込みというものはこわいものだ。勝手な思い込みを誘発しないような記述を心がけるよう、作り手としてまだできることがあるのではないか。また、そのような記述が編み出されなければ、第二、第三の“気の利く人”が現れることだろう。

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2003.12.19

電話を切る人

ナンバーディスプレイというものがある。電話番号の通知サービスだ。
仕事場には様々な問い合わせがあるのだが、しばしばかかってくるのが書籍に書かれていない情報を尋ねてくる電話である。

「イタリアの祭りに詳しい人に代わってもらえませんか」
「隣接国からタイに入るルートを全部教えてほしいんですけど」

こういう内容はだいたいテレビの制作事務所からで、番組のネタ探しやネタの補強のための問い合わせの場合が多い。
もちろん、わかる範囲で、かつお答えできるものについては対応させていただいている。
が、それもまずきちんと名乗ってかけてこられるというのが大前提だ。
なかには名前を言わず、あるいはテレビ局関係者という身分を偽って、いかにも個人のようなふりをしてかけてくる人がいる。そういう人に限って尊大で、答えて当然だろ、え? ってな態度で厳しい要求を突きつけてこられる。
そこでナンバーディスプレイ。
以前、業を煮やしたうちの若いもんが、名前を告げずにかけてきた電話の番号を、即座に机上のPCからインターネットで検索したことがある。

「○○(地名)について詳しく知りたいのだが」
「はい。いつもお世話になっております。×××(社名)さんですね」

ガチャンッ!

電話は突然切れた。それっきりかかってこなかった。数ヵ月語、×××制作による○○の番組が放映された。

教訓「番号がバレたらいやな人は、相手先の番号の前に“184”をつけてかけるべし」

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2003.12.17

買ってから言え

お前んとこの本に載っているやり方、おかしいんじゃないのか
 突然のお叱りのお電話である。
 該当する本をすぐに手元に用意できなかったので、すぐに探して1分後に折り返し電話を差し上げた。
「どちらのページをご覧いただいていますでしょうか」
「え、どちらとかじゃなくておかしいだろう」
「恐れ入りますが、どのページをご覧いただいているかお教え願えませんか。同じページを開きますので」
「友達に見せてもらったので今はない」
「(読者じゃねーよ、そんなやつ)左様でございますか。ではどのような件でお問い合わせですか」
「インターネットのサイトでヨーロッパの列車の切符を取ろうとしてるんだけど、できないんだよ」
「どこのサイトですか」
外国
「(広いよ、外国)どちらの」
ヨーロッパ
「(それは聞いたよ)各国のサイトにおける手順につきましては、書籍に順を追って書かせていただいていますが、どの点が不備でございましょう」
とにかくおかしいんじゃないの、できないんだから」
「(おかしいのは、まず最初にあんただろ)該当するページと、どの手順が誤っているのかをご指摘いただければ、お調べして回答を差し上げますが、具体的なご指摘をいただかないとお答え致しかねるのですが……」
じゃあいいよ(ガチャン)」

教訓「簡単なことがきちんとできない人は、難しいことなど逆立ちしてもできない」

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1998.03.19

馴れ馴れしい電話

いやに馴れ馴れしい電話があった。友人かと思った同僚が回してきた電話は、「ワダツですけど」で始まった。MR(医薬情報担当者:製薬メーカーの学術宣伝兼営業職)の資格試験にはどんなものなのか。医薬品業界6団体とは何か。資格を取るためにはどうしたらよいか。中途採用情報はないか。なんだ、つまり職を探しているのか。回りくどい人だ。しかしその学歴と専攻では、募集がないと思うぞ。新薬メーカーでは可能性ゼロだからゾロ新をあたってみればどうか? 可能性が1%くらいはあるかも知れないから。なに、ゾロ新とは何か、だって? 書類がパスしても面接通らないんじゃ……。どうやらうちで出した新卒向就職媒体誌を見て電話をしてきたようだ。そのバイタリティは認めよう。あなたの武器はそれだけだ。当たって砕けろ! いや、必ず砕けると思うが、万が一ということもある。いや、この場合はないのだが。と、とにかく、押しの一手で頑張って欲しい。そして是非成功して欲しい。そうすればただでさえ急ぎで残業してるところに友人を装ってかけてくることは、もうないだろう。いや、ないと信じたい。33分も話したのに結局ワダツがどんな字なのかすら明かされなかったぞ。だから奥付けに個人名いれるのヤダって言ったのに……。

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