三度、quarkさんのblog "quark's"に戦慄の情報が掲載された。
「恐るべきメルマガ(Second Skin)」と題されたそのエントリにはこうある。
先月、スタートレック ヴォイジャーのシーズン7のDVDボックスが発売され、残るはスタートレック エンタープライズだけになりました。
違う。(笑)
DaHjaj gheD の yaIba_chaDQI さんも6/30 のエントリで「違う」とおっしゃっている(ENT のエピソード感想と同じエントリ内に書かれているので、ネタバレ覚悟でお読みください)。
まったくもって、
違う(笑)。
ビク夕ーファミリークラブ星人の情報操作か。
そこまでするのであれば仕方がない。ファミリークラブにとっては不利になるかもしれないが、過去を暴くのみだ。
〈ファミリークラブ星人シリーズバックナンバー〉
ホらデッキ「戦闘種族ファミリークラブ星人」
blog "quark's" 「謎のファミリークラブ星人(Duet)」
ホらデッキ「まんがのメッセージ(The Chase)」
blog "quark's" 「恐るべきメルマガ(Second Skin)」
……
………
…………
気が付くとわたいは、ディープ・スペース・ナイソのレプリマットで、ファミリークラブ星人と一緒に茶を飲んでいた。
ガラッケというそのファミリークラブ星人は不思議な男で、同胞たちが撤収したあとのDSナイソに留まり、なぜかレンタルビデオ屋を営んで暮らしている。
そこにエアロックからベイヅョーの老人が、ファミリークラブ星人のロゴが入った手提げ袋を下げて現われた。
ガラッケは微笑みながら近づいて話し掛けたが、ベイヅョー人からは無視され、覗き込んだ手提げ袋の中身からは両目の周りに墨で落書きをされた。
手提げ袋の中身は、ファミリークラブ星人に好感を持っていないようだった。
ツスコ司令官に亜空間通信が入った。
相手はファミリークラブのガル・ヂュカット。どこで聞きつけたのか、ヂュカットはファミリークラブ星人印の袋の中身がガラッケにいたずらをしたことを知り、詳細の調査を求めてきたのだ。ファミリークラブがレーザーディスク規格から撤退する際、ベイヅョーに残してきた映像孤児の問題だという。
ツスコは袋を下げてきたベイヅョーの老人から事情を聞いた。
パイオ・ニアールと名乗るその男は、映像を置き去りに撤退したファミリークラブに対する怒りを隠さなかった。
「ファミリークラブを憎むのがそんなにいけないことですかね。ファミリークラブ星人が土曜の朝のまんがに何をしたか。それを教えることがいけないとはわたしは考えていません」
わたいはガラッケの両目の周りに付いた墨を落としながら、彼に話しかけた。
「今回のことで、ガル・ヂュカットは映像孤児問題を一気に解決したい意向らしいよ。ベイヅョーから引き揚げさせるそうだ」
ガラッケは笑いながら答えた。
「本当かなぁ。第一、LDからの撤退を指揮したファミリークラブの武官は誰だかご存知で?」
わたいがツスコ司令官のところに報告へ行ったとき、そのヂュカットがスクリーン越しにツスコと話をしていた。
「もし袋の中身がファミリークラブへ戻ることになったとして、誰が引き取るんですか」
『DVD-Rにサンプルを焼いて送ってもらえれば、直ちにこちらのデータバンクにかけて引き取り手を調べることができる』
わたいは話に割って入った。
「あの失礼ですが……質問があるんです」
『ドクター……バシーア、だったかな? いや、バシール? ベシア? ハヤカワの小説ではベイシア?』
「アシベです。LD規格からの撤退を指揮したのはあなただったんですか?」
『ああ、わたしだった』
「では映像孤児を生み出したのはあなたじゃないですか。かよわいまんがを置き去りにして逃げるなんて……なぜです」
『わたしは自分の意志でまんがを置いてきたのではない。LD規格からの撤退は文民指導者が決めたことだ。わたしは最後まで反対した。そのうえ、まんがは見捨てろというのが彼らの命令だったのだ。わたしは断腸の思いで、それに従った。……納得いただけたかな?』
その夜、ガル・ヂュカットから司令官に緊急通信が入った。
ツスコが送ったDVD-Rを鑑定したら、袋の中身は“まんが宇宙大作戦”で、ファミリークラブでも最も高名な政治家、ルー・チャイマーの私有物だったというのだ。
「ルー・チャイマーがベイヅョーに?」
『もう8年も前だ。ファミリークラブ星人のスタジオにプロデューサーとして赴任中、そのLDはベイヅョーのテロリストに鍋敷きに使われたと思われていたんだ』
一方わたいはガラッケに連れられ、宇宙ボートで惑星ベイヅョーに降りていた。トザット地方放送局を訪れ、件の映像孤児がここに預けられた8年間の経緯を調べるつもりだった。
応対に出てきたベイヅョー人は、占領時代のことは今ではもうわからないと答え、コンピュータにも求めるファイルはなかった。代わりにファミリークラブ星人かかつて捨てて行った映像孤児『大魔王シャザーン』が見つかったが、ガラッケは連れ帰ろうとはしなかった。
基地に帰還する宇宙ボートのなかで、なぜ見つかった映像孤児を連れ帰らないのか。そもそも何をしようとしているのか、わたいはガラッケに問い質した。
するとガラッケは、LD規格からの撤退を決めた文民指導者の代表的な制作物が映像孤児としてベイヅョーに残されていたのは偶然だろうか、と言った。
まんが宇宙大作戦の生みの親であるルー・チャイマーが、LD規格からの撤退の決定に関わっていた!? だとすれば撤退に反対していたというガル・ヂュカットからすれば政敵ということになる。しかし、なぜ今……。
チーフ・ヘブライエンはツスコの命令を受け、手提げ袋の中身をベイヅョー老人から預かっていた。
その彼の元をファミリークラブ星人のルー・チャイマーが訪れた。ヘブライエンは彼を部屋に招き入れた。
「わたしの作品はどこだ?」
「妻が観ています。1本22分なのですぐ終わります。……会われる前にお話しをしておこうと思いまして……まんが宇宙大作戦のことについて」
「名前だけはそのままだったか」
「別れたのは……」
「ベイヅョーでだ。まだ第2シーズンが打ち切られたばかりで、わたしのことも覚えていないかもしれん……どうかな」
「覚えてないっていうより、忘れようとしてますよね?」
「それはどういう意味だ」
「まんが宇宙大作戦は自分を呪っています。ファミリークラブ星人に創られた自分を許せないんですよ」
「ああ、それはよく聞く話だ。ベイヅョーで放映されたんだから仕方がないが、これからはわたしがいるんだ」
「まんが宇宙大作戦は、あなたのところへは帰りたがらないかも」
「わたしは生みの親だぞ! ……ミスター・ヘブライエン、わたしは地球の文化に疎いので地球人の土曜の朝とはどういうものか知らないんだが」
「いや、土曜の朝はかけがえのないものです。うちの娘は今4歳で、TASに夢中です」
「では今のわたしの気持ちもわかってもらえるだろう。ファミリークラブでは土曜の朝は何より大事なのだ。ファミリークラブでは土曜を大事にし朝をかわいがるのが美徳とされる。カレンダーを毎日土曜に書き換えている家もあるほどなんだ。土曜の朝こそ、すべてなのだ。なのにわたしはまんが宇宙大作戦を守ることすらできなかった」
「でも、残ってるってご存知なかったんですから」
「知らなかったでは許されん! あきらめずに探せばよかった。……まんが宇宙大作戦を置き去りにし、映像孤児としてベイヅョー人に放映させるなど、これ以上不名誉なことはない。ファミリークラブ星人として失格だ」
クイコがふたりを呼んだ。
テレビの画面を見つめるチャイマーは感無量だ。
「……お前か、まんが宇宙大作戦」
再生を中止して隠れようとするまんが宇宙大作戦を、クイコが止めた。
「わたしを覚えてるか……ほんの少しでも」
「いいえ」
「……放映当時の新聞のテレビ欄を持ってきたんだ」
「いやだ」
「……これだけはわかって欲しい。ベイヅョーのテロリストに襲われて……番組制作は途中で打ち切られた。……混乱のなか、わたしはお前を捜したが見つけられなかった。だからわたしはすぐにベイヅョーを離れた。お前のことを思い出すとたまらなかったんだ」
「自業自得だよっ。ファミリークラブ星人なんか、あっちこっちでネタにされて当たり前なんだ!」
捨てぜりふを残し、まんが宇宙大作戦は再生を中止した。
場所を司令官室に移したチャイマーは、パイオ・ニアールとまんが宇宙大作戦の所有権を巡って対立し、ツスコ司令官の調停で決着をつけることになった。そこに予告もなくファミリークラブからガル・ヂュカットが現われて合流した。
ヂュカットは、政敵とのかつての対立はこの件に関係がなく、ただLD規格撤退時に置き去りにされた映像孤児、まんがたちの未来が大切なのだと演説をぶった。
その頃、ガラッケはついに新しい糸口を見つけた。
どれだけ探してもまんが宇宙大作戦のファイルがないということは、削除されているということではないか。つまり自分がしたことの証拠になるようなファイルを残したくない者が消したのだと。
ガラッケはオリジナルのファイルを“書き込んだ”人物が答えを知っているはずだと言う。
「女です。もう名前を見つけたんですよ。ドロツー・フォンタメです」
早速連絡を取ると、モニタに現われたベイヅョー人の女性はそのときのことを覚えていると明言した。
「名前は“まんが宇宙大作戦”で間違いない?」
『ええ、そう言われました。だからこそはっきり覚えているんです。ファミリークラブ星人が置き去りにしたほかの映像孤児はみんな、路頭に迷っているところをベイヅョー人に保護されて来るのに、まんが宇宙大作戦はファミリークラブ星人が連れて来ましたので』
「それはファミリークラブの軍人じゃなかったですか」
『ええ……確かテロッケ・ノールの司令官付きの武官だったと思います』
それだけ聞けば充分だ。
わたいとガラッケは、すぐに司令室へ向かい、ツスコから会議の進行役を譲り受けた。
「まんが宇宙大作戦が見つかったことは、ファミリークラブ国民に公表されたんですか?」
「いや政府はまだ発表を控えているんだ」
「でももし発表されたら」
「まんが宇宙大作戦を置き去りだぞ! わたしの政治家生命はおしまいだ」
「残念だな、こんな時期に失脚だなんて」
「こんな時期にとは?」
「もうすぐ先だっての『エンタープライズ』打ち切り騒ぎに裏で関与していたと思しきファミリークラブ星人への尋問が始まるそうじゃないですか。こちらのガル・ヂュカットも、証言を求められると聞いています」
わたいはガラッケから仕入れたネタを披露して、ファミリークラブ星人のガルにゆさぶりをかけた。
「関係のないことを持ち出してわたしを侮辱するのか。司令官、どういう気だ!」
案の定、ヂュカットが食いついてきた。
「結構です、話を映像孤児に戻しましょう。ガル・ヂュカット、まんが宇宙大作戦がいたトザット地方放送局を訪ねたことはおありで? 8年前にチャイマーが赴任していた所です」
「それは知ってる」
「まんが宇宙大作戦が置いていかれた記録はありませんでしたが、当時放送局で働いていた職員と連絡が取れました。ドロツー・フォンタメというプロデューサーをご存知ですか?」
ヂュカットの眼が、何かを探るように細くなる。
「いいや」
「フォンタメは、まんが宇宙大作戦がファミリークラブの武官によって連れて来られたのを覚えていました。その武官が“まんが宇宙大作戦”という名前も、教えてくれたと」
「だからどうだと言うんだ」
ヂュカットが焦りを隠せなくなっている。
「要するにです。その武官は、まんが宇宙大作戦がルー・チャイマーの作品で映像孤児なんかじゃないってことを知りながら、わざと放送局に置き去りにしたんじゃないかということなんです。いつの日か政敵のチャイマーを失脚させることを目的としてね」
大きくのど仏を上下させ、ヂュカット唾を飲み飲んだ。
「……わたしにはわからんね」
まだしらを切るとは大した精神力だ。
「ではファミリークラブの占領時代の基地、テロッケ・ノールはどこにあったかご存知ですか?」
「テロッケ・ノール? それはここだ、DSナイソのことだ」
「フォンタメが言うには、まんが宇宙大作戦を連れてきた武官はテロッケ・ノールの司令官付きの士官だったそうです」
ヂュカットは立ち上がるとガラッケを睨みつけ、出口に向かう。その背中に質問を投げかけ、とどめを刺す。
「ガル・ヂュカット。8年前のテロッケ・ノールの司令官はどなたです?」
質問には答えず、彼は無言で立ち去った。
「言うまでもなく、8年前のテロッケ・ノールの司令官は、ミスター・ガル・ヂュカットです」
ツスコ司令官は、ベイヅョー人がまんが宇宙大作戦を慈しんで育て上げたことを評価しながらも、生みの親チャイマーが引き取ることを認めた。まんが宇宙大作戦は謀略の犠牲者である、と彼は言った。
ドッキングリングのそばで待つチャイマーの元へ、チーフ・オブライエンがまんが宇宙大作戦を連れてきた。
「いいかい、まん宇~。DSナイソを訪ねたくなったら、連絡してくれれば迎えに出るから」
「おはよう、まんが宇宙大作戦。じゃあ行こうか」
まんが宇宙大作戦は返事をせず、終始無言だった。
「焦らないでやりますよ」
チャイマーとまんが宇宙大作戦は、エアロックの向こうに消えた。
こうしてまんが宇宙大作戦はファミリークラブに帰ったはずだった。
しかし今もなおファミリークラブはその事実を国民に知らせようとしない。国民向けメーリングリストでも黙殺を続けているのだ。
なぜだ。
まんが宇宙大作戦を愛するルー・チャイマーがファミリークラブに戻ってからいったい何があったというのだろう。彼は無事なのか。あるいは別の謀略によって消されてしまったのだろうか。
いいかみんな、情報操作に惑わされるな。
まんが宇宙大作戦は生きている。
そして今は、ファミリークラブに帰っているのだ。
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