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2016.10.12

BEYOND世界最遅レビュー【ネタバレほぼなし】

大規模一般試写会(東京エリア:有楽町よみうりホール)を明日(2016/10/13)夕方に控え、またユナイテッドシネマでは初日の時間割も発表されて、いよいよ公開ムードが高まってきた今日この頃。

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リブート3作目『スター・トレック BEYOND』の世界最遅公開を寿ぎ、世界最遅レビューを認めた。

―― ネタバレはほぼないが、どんな些細なこともネタバレと感じてしまう方は、本編をご覧になるまで決して読まないようご注意いただきたい。ネタバレを気にしない方でも何が引き金になって後悔するかわからないのであくまで自己責任でご判断願いたい。なお、本編をご覧になったあとではたいして意味のない内容なので、まるで読まなくて大丈夫 ――


------------ 以下ネタバレほぼなし(当社比)

STファンを公言してはばからないサイモン・ペッグが脚本に参加したことで、無駄にウフーラ推しだったST2009やSTIDと一線を画し、マッコイがメインキャラに返り咲いた。これによりTOSでおなじみだった三バカ――もといトリオ・ザ・漫才が復活。マッコイは全編通してほぼスポックと一緒に行動するため、緑色の血の悪魔に対する毒舌も冴えわたる。

既存のシリーズ6本と映画12作からこれでもかと採り入れた小ネタを振りまきつつも、そんなことをまるで知らない新規のお客さまにも素直に楽しんでいただけるコメディSFアクションに仕上がっている。

スタトレ映画は奇数が駄作」とこれまで流布されてきた。しかし、ようやくこの定説を打ち破ったのがこの作品ではないかと思うただし筆者はST5が大好きなのでその点をお含みおきいただきたい)
リブートシリーズの中では唯一このBEYONDが、これまでのスタトレ映画最高峰『ギャラクシー・クエスト』に迫る作品だと断言する。

映画が始まって10分もすればいきなりクライマックスで、「それやっちゃうの!?」という展開に、とりわけ古いファンは魂を抜かれたような気持ちになるだろう。一方で、ああいうタイプの艦対艦戦闘はSTでは新鮮でなるほどと思わせる。

ホワイトベースでさえ古くから伝わる錐の戦法には弱かったわけで、惑星連邦宇宙艦隊最新鋭艦といえどもあれにはお手上げだ。スポックはもうどうしょうもないタイミングで「交戦する準備ができていません」と進言していた。彼の言う“準備”が整っていたら、どんな展開になったのかには興味がある。

主要なブリッジクルーをコンビにして動かしたことで、それぞれに見せ場もありつつ個性も表現できた。各キャラを深く掘り下げてない、という批判を耳にしたが、フィルムの長さと扱う人数の多さから、それを望むのは酷だろう。内面を深く掘り下げるような作品により価値を見出すタイプの観客は、ほかのもっと登場人物が少なくてひとりに時間を割ける映画を観たほうがいい。

とはいえ、こいつの内面はもうちょっと掘り下げて表現してくれないと話の見えないところがあるんですけど――というのが今回の敵、クラールだ。

もちろんそこかしこの台詞でちらほらと背景が語られてはいるので、落ち着いて繋ぎ合わせればひととおりのことはわかるようにできている。

だが、わかりづらい。

STIDのカーンみたいに突然饒舌になってピーチクパーチク恨み辛みを涙目で語りまくられてもドン引きだが、もう少しやりようはなかったのか、と惜しまれる。

さて、今回監督として指揮を執ったジャスティン・リンはどうやらJJエイブラムスより仕事が細やかだ。

JJによる前2作にしばしば見られた雑な編集の繋ぎがない。
まだ落ちてないロミュランブラスターが落ちている映像を落ちる前に繋いだ――パッケージ発売時に修正/ぶら下がっていた片手が、アップと引きで逆/キャプテンの後ろにいるクルーが、スクリーンにカメラを振って戻ってきたら制服の色から人種まで違う別のクルーに変わってる――いずれも修正なし などなど枚挙に暇なし

むしろ、最後のほうでウフーラがクラールの正体に気づくきっかけとなった映像の重要な一部分が物語序盤で観客の目に触れないよう、カークの身体でさりげなく隠して撮ったり、ジェイラ用の転送シグナルトランスポンダーの置き位置が終始矛盾のないよう映像表現されていたり、細かいところをおざなりにしないその精緻な画面作りが心地よい。ジャスティン・リンが監督をしてくれてよかった。本当によかった。

唯一の矛盾は、クラールの正体がわかった直後に彼の情報が映し出されるモニタ画面の右下に記されていた船籍番号が、台湾で見た世界最速同時公開時のフィルムではまるで明後日の聞いたこともない番号(NCC-7317)だったこと。自分で直接手を下さない部分で足下を掬われたジャスティン・リンの心中いかばかりか。

しかし日本公開時のフィルムでは問題の映像のその部分をピンポイントで抜け目なくきちんと直しているあたり、本国制作スタッフのプロ根性を見た思いだ。世界最遅ならではの“完全版映像”が提供されることとなった日本の観客のみなさんは幸運であろう。

その点、明らかに間違っていたり事実誤認したりしている少なくとも3ヵ所が公開版まで頑として修正されなかった日本語字幕には、若干の失望を禁じ得ない。もっとも吹替版ではおそらく是正されているうえに、ますますおもしろく楽しめる翻訳がなされていることは間違いない。STIDでもそうだったからだ。

今はただ、吹替版を観たくて観たくてしょうがない。
とりわけSTIDで超絶開花した“モンゴメリー・スコッティ”の吹替に、今回も期待大!

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新キャラとスコットとの掛け合いを日本語で味わえる日が待ち遠しい

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コメント

なんというか…TVCM見てもぴくりともしなかったんですが、こちらを拝見してすげー見たくなってきましたよ!どうしてくれるんですか!

投稿: LAY | 2016.10.13 10:28

>LAYさん
お読みくださいましてどうもありがとうございます。
そうですか、観たくなられましたか。
騙されたと思って一度ご覧ください!

ご覧いただいて騙されたと思ったらこちらに「騙された!」とコメントください!
その節はわたくしが平身低頭誠心誠意謝らせていただきます。

ちなみに字幕は少ない文字数制限のなかでとても苦労してつけてらっしゃると思いますが(前回、前々回と同じ訳者の方ですし作品世界はよくわかってらっしゃるはず)、いかんせん敵のおっさん(クラール)の動機やら事情やらがわかりづらいです。

これはあながち字幕の字数だけの問題ではなく、そもそもネイティブの方でも1回観ただけではクラールの状況を飲み込めない人もいらっしゃるようで、InstagramのSTファンアカウントのコメント欄で「クラール、いろいろわからん」と書き込んだ人が別のネイティブの人からあそこの台詞でこう言ってたとかああ言ってたとか説明受けて「そうなんだ! 初めて知った!」と納得されているやり取りをみかけたこともあります。

リブート版の仇役に関しては、「アレだなァ、惑星連邦ってのはしょっちゅうヘンなおっさんたち(ネロ、カーン、クラール)から恨み買ってんだなァ」と思って流しておくのがいちばん楽かもしれません(笑)。

投稿: ANCHOR | 2016.10.13 11:39

ビヨンド今週行ってきます!
世界最遅の事実にヒビが入り、吹替版なしと聞いて真っ二つに折れた心に添え木をし、「君の名は。」に最大スクリーンを奪われてる映画館へゴーです(笑)
吹き替え版はBDの発売まで我慢です。

投稿: 青影ぶいち | 2016.10.23 21:32

>青影ぶいちさん

祝ビヨンド週間突入!

世界公開をBEYONDした日本公開でしたが、落ち着いて思い直してみると、例えば映画『ジェネレーションズ』は本国公開が1994年11月18日、日本での公開はこれに遅れること1年と5日の1995年12月23日でした。

1年と5日。

1年と5日ですよ、1年と5日!(何度も言うな)

まだインターネットの充実していない時代でよかった。本当によかった。

それを思えば7月21日に対する3ヵ月遅れなんて、はは、はは、あははは。

投稿: ANCHOR | 2016.10.25 12:36

ANCHORさま、お久しぶりです。
恐らくある年代以上の日本の視聴者が同じことを思ったのではと思いますが、敵さんの正体ってつまりジャミラですよね?

投稿: X^2 | 2016.10.28 19:50

>X^2さん

お元気そうでなによりです!

>>敵さんの正体ってつまり

おっしゃるとおりですなあ(笑)。
「ジャミラが来たりて佳境はマクロス」との評を耳にしています。

ヤマトも発進しますし、いろいろと懐かしく思い出されますね(笑)。

投稿: ANCHOR | 2016.10.29 10:48

本日拝見してきました。
いや~ リブート作品では傑出してますね。
ただ「散りばめられた小ネタ」がですね… 濃すぎるんですよ、実際。自分の様なぬるいファンにはちょっと敷居高いですかね。
とはいえ、自分の好きなドクターの見せ場たくさんで(反面、スポックはいまいちな気が)、大満足でした。
見に行ってよかったです。吹き替えが楽しみですね。

投稿: LAY | 2016.11.03 21:18

忘れてました。ジャミラ、言い得て妙過ぎでしょう。年がばれますなあ…

投稿: LAY | 2016.11.03 21:22

 最遅?で読みました〜。Jリン監督も凄いけど、初見で、NCC-7317を見逃さなかった、ANCHORさん、トレッキーの鏡!

投稿: ゆうふぉ | 2016.11.06 19:20

>LAYさん

ご鑑賞おめでとうございます!

>>いや~ リブート作品では傑出してますね。

前2作と比べTOSっぽいところの増したところがいいなあ、と思います。

>>ただ「散りばめられた小ネタ」がですね… 濃すぎるんですよ、実際。

小ネタを拾わなくてもお話しとしては特に問題ない、という仕上がりにはなっていると思いますが、確かにおっしゃるとおり小ネタが細かくて多いなあ、という印象は受けますね。きっとまだわたしの気づいていない小ネタがあるに違いないと確信しています。

>>とはいえ、自分の好きなドクターの見せ場たくさんで(反面、スポックはいまいちな気が)、大満足でした。

ドクター大活躍で一気に株を上げましたね!
スポックは、「感情を極端に抑えた論理優先の知性派」という基本姿勢があんまりはっきりと打ち出されないうちに感情的な部分をがんがん露出している姿が、なんとなくイマイチに見える原因じゃないのかなあ、と感じました。

>>見に行ってよかったです。吹き替えが楽しみですね。

今回、劇場に吹替版がかからないのは残念ですが、そのぶんBlu-ray/DVDの楽しみが増えたと思って心待ちにしています!

>>忘れてました。ジャミラ、言い得て妙過ぎでしょう。年がばれますなあ…

とかく“動機がようわからん”と苦情を受けてらっしゃるクラールさんが、「こんにちは、ジャミラです」と自己紹介してくれたら、細かい説明などなくても一発でわかるような気がします(笑)。

投稿: ANCHOR | 2016.11.08 11:55

>ゆうふぉさん

痛み入ります!

ちなみにここしばらく鑑賞していてわかったのは、どうやら

3D版(IMAX、MX4D)ではNCC-7317
2D版ではNX-326

になっているということです。

台北では2Dを観なかったので、もとからそうなのか今となっては検証できません。
目下合衆国からえっちらおっちら日本に向かって運ばれてきているBlu-ray/DVDの映像ではどちらになっているのか、気になるところです。

投稿: ANCHOR | 2016.11.08 11:59

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