ミッシングリンクの促進
ここしばらくはいろいろと50周年だ。50年前には画期的な作品が東西で続出しそれぞれに息が長いなと思う反面、それを食い潰していくのは小原庄助さんみたいだなとも思う。
スタートレックもチーム50周年の一員で、今回もまたくるみを変えて食い潰していくスタイルの商品が続々と発売されている。
そのうちの目玉のひとつが『宇宙大作戦(TOS)』TV全話と映画全6本プラスおまけ映像をBlu-rayでまとめてお届けしますという『Star Trek 50th Anniversary TV and Movie Collection』だ。
本国アメリカ合衆国では2016年9月6日の発売予定。本国放映からちょうど50周年にあたる9月8日より2日早く設定している理由はよくわからないが、記念日当日には全国津々浦々のお客様のお手元に満遍なく届いていてみなさんで一斉にご覧になれる状況作りを考えたのかもしれない。
日本では、これに遅れること22日、同年9月28日に発売される模様。ローカライズに時間がかかるのか、別に日本の初放映日とは関係ないから気にしてないのか、いずれにせよ映画『STAR TREK BEYOND』の劇場公開3ヵ月遅れよりはマシだ。
この手の過去発売作品のおまとめ系は、まだ持っていない人に「全部入りでお安いですから」と猫なで声で売りつけるのはもちろん、くるみを改めて目先を変え、ちょっと今まで入ってなかったおまけを添えることで既に持っている人にも「あんたまた買いなさいよ。少しでも違えば欲しいんでしょ」とプレッシャーをかけて毟り取るという戦略で成り立っている。
したがって、いかに「お得」で「今までとは違う」のアピールで心を打てるかどうかが、たかが数の知れている小さな小さな市場から何度も刈り取り何度も収穫を達せられるかの分かれ目になる。
それぞれの仕様は次のとおり。
【本国版】
形式:AC-3, Box set, Dolby, DTS Surround Sound, Dubbed, Subtitled, Widescreen
言語:English
吹替:French, German, Italian, Spanish
字幕:Dutch, English, French, German, Italian, Portuguese, Spanish
リージョンコード:Region A/1
ディスク枚数:30
予価:US$208.99 ※1 ※2
amazon.com:商品ページ
【日本版】
形式:Color, Limited Edition, Widescreen
言語:英語
吹替:日本語
字幕:日本語、 英語
リージョンコード:リージョンA
ディスク枚数:27
予価:24,095円 ※1
amazon.co.jp:商品ページ
※1 いずれの予価も2016/07/29現在
※2 US$160を切る販売店も存在する
日本版では音声の仕様に触れられておらず、Blu-rayのくせに収録言語が著しく少ないようだが、それはおくとして――ディスク枚数の差はなんなのか。
本国版「30」に対し日本版「27」。
既存のBlu-rayは『宇宙大作戦(TOS)』全3シーズンを20枚に収めている。この素材をそのまま使うとして、映画6作で6枚、特典映像で1枚加算して計27枚となる。
ちなみに本国版では初Blu-ray化となる
・Star Trek: The Animated Series
と日本版にも入っているというポスター6枚のほかに
・Collectible 50th Anniversary Starfleet Insignia Pin
がおまけに付く。
さらに以下の映像が入っているという。
・The New Frontier: Resurrecting Star Trek
・Maiden Voyage: Making Star Trek: The Motion Picture
・The Genesis Effect: Engineering The Wrath of Khan
・The Dream is Alive: The Continuing Mission
・End of an Era: Charting the Undiscovered Country
・Plus over 20 hours of bonus content!
少なくとも、日本版からは『まんが宇宙大作戦/Star Trek: The Animated Series(MUD/TAS)』が省かれているのは間違いない。
前述したように「あんたまた買いなさいよ」と二期作を試みるには、LDやDVDを惜しくも買い逃した人に新機軸を訴えなければならない。『まんが宇宙大作戦』のBlu-rayはうってつけではないか。
逆に、LDやDVDを買ってしまったような頭のおかし、いや熱心な人は、その熱心さのあまりこれでしかBlu-rayフォーマットの『まんが宇宙大作戦』が手に入らないとなれば、またまたうっかり買ってしまうかもしれないではないか。
ここで改めてそれぞれの商品宣伝写真をよくご覧いただきたい。
TAS第1シーズン『タイム・トラベルの驚異/YESTERYEAR』に登場する少年スポック(ST2009の少年スポックの元ネタでもある)が描かれたラベルが差し替えられている。
写っているディスクの総枚数は30枚のままという雑なコラージュだ。
わざわざ3枚省いたうえにTOS第3シーズンの怪作『盗まれたスポックの脳/Spock's Brain』のモチーフでコラまで作って『まんが宇宙大作戦』を日本市場から消し去ろうとしている意図を知りたい。
あるいは、来たる2017年の『まんが宇宙大作戦(MUD)』日本放映40周年、または2023年の『Star Trek: The Animated Series(/TAS)』本国放映50周年を華々しく記念するにあたって、単独パッケージでBlu-rayを日本で初売りするために、敢えて今回は見送って、小さな小さなごく小さな市場に飢餓感を植え付けるつもりなのか。
それならそれでいいや(いいのか)。
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