豚バラ納豆ニラ炒め
「ども。艦長。こんな時間にどうしたんすか。眠れないんですね。悩みっすか。いえ、みなまで言わなくてもわかってます。ドクターでしょ。さっきもここに来てひとしきり艦の指揮権について語っていきましたよ。モバイルエミッター付けてからこっち、妙にはりきって……え、違う。
あ、じゃアレだ、副長だ。影薄いですもんねー、最近。もっと積極的に意見言ってもらわないとただの動物占い師……はい、あ、違うんすか。じゃパリス中尉かな。いくら娯楽が少ないからってモノトーンのSFはないですよね。
違う。おれの勘はたいてい当たるんですけどね。あ、もしかしてお腹空いてません? いいメニューがあるんすよ。試してみませんか。
ミトっていう、いえ、宇宙海賊じゃなくて、イバラキ星系の惑星なんすけどね、土地全体がねばねばしたところから生えてる植物があるんですよ。ナトゥって。いえ、踊らないですし、歌いません。金持ちでもないっす、植物ですから。
そのナトゥをね、ブタの肉とニラって葉っぱを刻んだので炒める料理なんですよ。いけてるでしょ。
わからない? 食べたらわかりますって。いいすか。簡単なんですよ。5分かかりません。
ちょっと待っててください。今作りますから。
ブタの肉はバラがおすすめですね。ブタコマだと油が足んないんすよ。やっぱり男はバラですよね。いえ、艦長は女性ですけど、女性もバラだと思いますよ、だってなんでしたっけ、コラーゲンでしたっけ、不飽和脂肪酸でしたっけ、多いんすよね、多分。
ところでおれの故郷の家の裏にカンコク料理やってる店があったんすけどね。カンコク知らないですか。艦長、意外と知らないことあるんですね。なんでもチャレンジャーがたくさん住んでる星だって話ですよ。その店は焼き肉がおもなメニューで、中に“豚三段バラ”ってのがあったんですよ。なつかしーなー。でもどうすか、三段バラですよ。おれは豚バラって豚の三枚肉だと思ってから、それ見たときはショックでね。なんだか自分のこと言われてるみたいで……
あ、すみません、しんみりしちゃいました?
バラ肉はこうして食べやすい大きさに切りましてね、あとニラ。ニラは1.5センチ程度に切り揃えて。
まだまだ。まだ焼きません。先に合わせ調味料を用意しとかないと。料理は段取りっすよ艦長。上陸調査もそうでしょ。ベラナが言ってましたよ。
酒と醤油を大さじ2杯、みりんを大さじ1杯、あと砂糖を小さじに2杯……ま、適当ですけどね。目分量で。だーいじょうぶ、大丈夫。毎日料理してるんです、身体が覚えてます。こんなの見てなくたって、あ、入れすぎた? 今醤油多かったすか? んじゃほかのも多めに入れて薄めときますよ。いーんです、いいんです、料理は臨機応変に。
はいはい、フライパンを熱して油引きますから離れてください。危ないですよ。なんせうちのコンロは特別製だから、天井まで火が上がりますよ。
最初に肉をね、こうして放り込んで。いい音するでしょ。じゅじゅーって。これっすよ、肉は。ほら、色が変わってきた。そしたらニラの根っこのほうのちょっと太いとこ。これ、火が通りにくそうなんで先に入れるんすよ。
はい、入れた。
でもってちょっと煽って。残ってるニラ全部ざーっと入れますよ。ざーっ。ニラってのが憎く思える瞬間っすね。まな板にひっついて落ちてこないやつがいるんすよ。もうね、なんか気持ちがいじいじしちゃって。いいやもうまな板洗っちゃえ。
バラ肉からいい感じで油が出てきてますから、こうやってフライパン振ってかき混ぜながら、ニラによくなじませます。なじんだらいよいよナトゥの出番っすよ艦長。
待ってました? 待ってない。待っててくださいよ。いいとこなんだから。
軽くかき混ぜると、ね、粘るでしょ。糸がね、なんかもうこの世のものとは思えないようなね。
だいたいおかしいですよね、豆から糸なんて。ま、イバラキ星系ですからね、レンコンとか中にいくつも空洞のある変な植物とか、そういうの得意なんですよ、あの星系。
糸引いたナトゥをフライパンに投げ込んだら、よく混ざるように菜箸でかき混ぜつつ炒めます。ぼんやりしてると底にナトゥがくっついちゃうんで手早く。こう! さらにこう! 加えてこう!
ニラもしんなりしたし、ナトゥにもなんとなく火が通ったところで、さっき合わせた調味料、これをこうして鍋肌に沿わせてくるくるーっ、じゃじゃじゃーっと。
いい香り。
たまんないでしょ。ね。
艦長、ノリ悪いっすね。悩みごとですか。あれでしょ、ドクターでしょ。違う。そうすか。
ほら、汁がある程度からまったらできあがりっすよ。早いでしょ。
しゃべってなければもっと早い? 重要なのは太字んとこだけ? 厳しいなぁ、艦長。それじゃ退屈じゃないすか、お互いに。
はい、器によそって、熱々を召し上がれ。
……米?
んー、えーと、米はないです。ほら、前に降りた惑星でレオラの根っこと替えっこしちゃったじゃないですか。あれが最後だったんすよね。すんません……。
あ、ナンに挟んでもきっとうまいっすよ!
いえ、ナンもないす。
あの、おれ、奥にいますんで、なんかあったら呼んでください。じゃ。ごゆっくり、艦長」
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