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2006.02.06

支払う男

赤坂の24時間スーパー吉池、土曜朝、9時50分、レジ。

わたいの前に並んでいた初老の男が精算の態勢に入った。

カップ麺×2、別のカップ麺×2、また別のカップ麺×2、そのほかのカップ麺×2、そして塩辛×2。

しっかりした身なりのわりに、ずいぶん偏った食生活を送っておられる。いや、土曜出勤させている従業員への差し入れなのか。

男はレジのお金を置く皿に、1000円札を1枚置いた。そして財布の小銭入れを開き、コインを見繕う様子。

なるほど、自分では合計の目算が立っているらしい。正確な端数が出次第、適切な小銭を出してすばやく会計を済まそうという腹積もりなのだろう。身なり相応に、きちんとした男のようだ。

1047円になります

レジのおねーさんは機械的に言った。

男は結構たくさん小銭の入った財布をじゃらじゃらをゆすった。

残念ながらきっちり47円はないようだ。

ここは50円玉があれば3円の釣りをもらうのが最も早い。1円玉が複数あれば52円出して5円玉1枚をもらい、小銭の数を差し引き2枚減したいところ。57円出して10円バックでもいいだろう。

男はしばし逡巡したのち、財布の中の小銭をざらっと左の掌に移した。必要なコインを拾いやすくしたとみえる。

そして財布をまだ右手で持ちながら、人差し指と親指だけでコインを探ると、100円玉を1枚つまもうとした。

そうか。50円玉はなかったか。しかしその掌の上で鈍く輝く数多くのコインのなかには、10枚を超えそうな100円玉と同じくらいの10円玉があるように見えるが?

100円をつまもうとしていた男は、財布が邪魔でつまめなかったのか、別のことを思い付いてつまむ気持ちが薄くなったのか、指先でコインをつつき始めた。

まだ50円玉の捜索に未練があるのだろうか……わたいがそう思った刹那、男は左手をぐいと伸ばすと、先に出していた1000円札の上で掌をひっくり返した。

全部置くのん?

1000円札を出した意味がないのではないか。

男はレジのおねーさんに小声で言った。

いいね?

なにが?

1100円お預かりします

レジのおねーさんはまるで表情を変えず、札の上にてんこ盛りになっているコインを一瞥してすべてを看て取り、下に敷かれた1000円札を抜き取ったあと100円玉1枚を手に取った。

10円玉5枚を拾い、小銭の数を減らして、男の財布への物理的な負担を軽くしてやる筋合いはないのであった。

男はじゃらじゃらと音をたて、ゆっくり時間をかけて皿から小銭を拾って財布に戻すと、すっかり品物を詰め終わったレジ袋の持ち手の部分をくるっと回して持ちやすいようにしながら待っていたおねーさんから、無言で品物と53円のお釣りを受け取って、いずこともなく去った。

そういうプレイか。

番が回ってきたわたいの精算額は、1054円。

財布のなかにある小銭を全部、あの皿の上でひっくり返してみようか。

後ろに並ぶおっちゃんも空気読んでや。わたいに続け!


しかし財布の中には200円くらいしかなかった。それでは企画が成立しない。


わたいはつまらないことに、1000円1枚、50円玉1枚、5円玉1枚を出し、1円のお釣りをもらって吉池をあとにしたのだった。


まだまだぬるいぞ、わたい!


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コメント

...あれ?、なぜか涙が出てきましたよ?(^^;; もう少し、こう人間味のある対応をしてあげても良かったんじゃないのか!、レジのお姉さん!!。そんなお姉さんにひと言

「貴様の血は何色だぁ!!」←ソコマデイウカ

投稿: 佐藤@スケーター | 2006.02.06 22:30

>佐藤@スケーターさん

>>「貴様の血は何色だぁ!!」←ソコマデイウカ

……冷たくあしらわれた初老の男はしかし、店の外に出て天を仰いで言い放った。

「我が一生に一片の悔いなし!!」

ていうか、今度はそういうプレイなんですか!?(笑)

投稿: ANCHOR | 2006.02.08 00:54

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