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2005.01.23

D・C・フォンタナが語る「TAS」制作

www.startrekanimated.com にある記事の翻訳を、ウェブマスターの Kail Tescar 氏の許可を得て紹介する。
ジーン・ロッデンベリーが語る「TAS」に引き続き、1973年出版のファンクラブ会報(FAN CLUB NEWSLETTER)に掲載されたドロシー・キャサリン・フォンタナのインタヴュー記事。こちらも「STAR TREK ANIMATED SERIES」放映前のインタヴューで、TASを語るというよりは、主にアニメの制作行程を啓蒙する記事になっているところが時代を感じさせる。


ドロシー・キャサリン・フォンタナ
アソシエイト・プロデューサー兼ストーリー・エディターが語る……
『興味津々、劇作の複合体 ―― アニメーション!』

 アニメーションは頭から終わりまで、映画制作と同じ方法で作られます。まずはじめに映画台本と同じ形で書かれた台本があります。スタートレックは今回30分番組になりますので、台本は3つの演出パートに分けられています。

 台本の平均した分量は36ページですが、込み入った記述がたくさん含まれていると42ページに近くなります。

 台本が決定稿に達すると、ふたつのことが同時に進行します。声のレコーディングと“ストーリーボード(絵コンテ)を起こす”ことです。セリフの録音を先にするのは必須です。というのも、声優の正確なセリフや間、そして感情表現を知らずにキャラクターの表情や適切な口の動きを描くのは、アニメーターにとって不可能だからです。絵コンテはまんがのようなもので、文字で書かれた台本を視覚的な表現に翻訳したものです。絵コンテは完成した絵ではないことをお忘れなく。それは画家とアニメーターのための設計図で、画面の作りや、キャラクターの出入り、背景、効果などがどのようなものかを指し示すものなのです。

 絵コンテが済むと、制作は原画部門に移ります。ここには3人の重要なアーティスト、ボブ・クライン、ジョージ・ジェンソン、ハーブ・ヘイゼルトンがいます。この3人は基本的なアートワークである背景のデザイン、レギュラーの登場人物、異星人たち、艦船類をすべて担当しています。それらは実写版の写真やスライドに準じており、それ以外の点については彼らがすばらしい想像力を働かせています。

 原画の次はアニメーターによる動画です。アニメーターは“動画の間の細かい動きすべて”を作るアーティストです。ご存じのとおり、手を挙げてボタンを押させるアニメーションには、たくさんのコマが使われます。ひとつのシーンだけでなく、フィルム1本にわたり、すべての動きについて何コマもです。アニメーターたちはこれらすべてを原画を元に描き起こすのです。

 アニメーターからたくさんの動画が戻ってくると、それらに手塗りで色をのせるために、アセテートセルにゼロックスコピーを取ります。背景は直接カードボードに描かれます。個々の人物と前景に置かれるものだけがアセテートセルに描かれ、背景の上に“重ねて”合成した絵を作成するのです。

 彩色部門は正確さを期してすべての要素を確認し、撮影に回します。そこでは35mmフィルム上に、それぞれのシーンとそのシーンのそれぞれの構成要素(だいたい7枚くらい重ねられています)を、フレーム単位で撮影していきます。これは忍耐のいる作業です。アニメーションのそれぞれどこの段階であっても、ひとつでも見落としたまま進めてしまうと、シーン全体を台無しにしてしまうからです。

 その後のプロセスは実写と同じです。現像済みのフィルムは編集(やり直しあるいは取捨選択)され、雰囲気と状況が際立たつように音楽が割り付けられます。効果音もここで加えられます。最終的には、数多くのフィルム片に、セリフのトラック、音楽のトラック、効果音のトラックを重ねて録音するという、1本のフィルムが完成に至る工程を経て、でき上がった“最終版”が放映されることになるのです。

 アニメのフィルムは実写版と同じ手順で作られますが、実写フィルム30分が完成するのに約6週間かかるのに対し、30分のアニメフィルムは4週間ないし半月で完成する点が異なっています。


Original article on D.C. FONTANA INTERVIEW FROM 1973
Star Trek(TM) is a registered trademark of Paramount Pictures in the United States.
Special Thanks to Mr. Kail Tescar
E to J Translated by ANCHOR


最後に整理しておこう。

TASの台本は3つの演出パートに分けられている。
TASの台本は平均36ページ(場合により42ページ近く)。
TASはまずセリフを録音し、それに合わせて作画する。
TASのデザインは、TOSにあったものはTOSのまま描く。
TASは動画をトレースせず、ゼロックスでセルにコピーする。
TASの1シーンには、背景やセルが、およそ7枚重ねられている。
・実写であるTOSを30分間分作るには6週間かかる。
TAS1話(30分間分)を作るには4週間ないし半月かかる。

今やアニメはPC上で作られてしまうので、“セル”という響きも懐かしくなってしまった。

フォンタナのインタヴューからは、TASの制作過程と当時のフィルメーションでの制作過程との間に違いがあるかどうかはわからないが、現在の作り方と最も異なっているのは、“まず台詞を録音し、それに合わせて作画する”という点だ。

アフレコ(画に合わせて声優が台詞をしゃべり、録音する)ではなく、いわば“ビフォレコ”(なんやそれ)である。

声優を引き受けたシャトナーらオリジナルの役者たちは、それぞれに忙しく一堂に会することができなかったという。そのため各自が自分の都合のいい場所でバラバラに台詞を録音したと聞くが、画をあとから描くやり方だったからこそできた芸当だといえよう。

参考までに、これは「まんが宇宙大作戦」の台本。

DSCF0014.JPG

映画『ネメシス』公開時にお台場で催されていたST展に出品されていた品々のなかで、わたい個人がもっとも惹かれたものだ。

中を読ませてくれ……

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コメント

おお、ビックリした。
本物の台本を、ANCHORさん自身が
こんな綺麗な形で保存されているのかと思いました。

海外のアニメ作りの方法は知らないのですが、
TASは"ビフォレコ"なんですねえ。
興味深いです。

投稿: quark | 2005.01.24 00:39

日本と違って海外だとストーリー+
撮影台本がシナリオだと聞いたことが
あります。
TASってこうやって作られたんですね。
実は僕は何話か見逃しがあるんです。

投稿: kiyumoto | 2005.01.24 01:32

ANCHORさん、こんにちは。

インタビュー記事の訳、興味深く読みました。別々に録音したという話は、録音したご本人からも聞いたことがあります。全体がこんな順で作られてたんですね。
まんが宇宙大作戦に関するANCHORさんの記事は、NIFTYフォーラム時代から楽しみにしてました。これからもどんな切り口できはるか楽しみにしてます。

投稿: Joちゃん | 2005.01.24 20:56

>quarkさん

>>おお、ビックリした。

あ、すみません。驚かす意図はありませんでしたが、上から順番に見ていくと確かにそんなふうに見えますなあ。

>>TASは"ビフォレコ"なんですねえ。

当時のほかの海外アニメもそうだったのかどうかはわからないですが、TASはそうだったんですなあ。

関係ありませんが、『トムとジェリー』はできあがったフィルムに合わせて演奏をしていました。フィルムを作るときに演奏に合わせていたかどうか未確認ですが、多分そうしていないと、あれだけ動く絵と音は合わないですよね。


>kiyumotoさん

>>日本と違って海外だとストーリー+
>>撮影台本がシナリオだと聞いたことが
>>あります。

やはり作り方が違うんですなあ。ところ変われば品変わる……。

>>実は僕は何話か見逃しがあるんです。

それは無念です。せっかくですから、ぜひ全話見ていただきたい。

スーパーチャンネルで今年も放送してもらえるといいのですが。
今年は本国でDVDが出るそうですから、日本でも出てくれるとわたし個人としては大変にうれしいです。


>Joちゃんさん、ようこそいらっしゃいませ。

読んでいただけてありがとうございます。
そうですか、ご本人(って武井さんですよね)もそうおっしゃってましたか。
彼にとって好意的な記憶なのでしょうか、TAS。そうであってほしいですが。

>>全体がこんな順で作られてたんですね。

わたしも、なぜ台詞をみんな別々に録っているのに合うのだろうと思っていたのです。
録ってから絵を作っていたのですから、そら合うはずですよね。

>>NIFTYフォーラム時代から楽しみにしてました。これからもどんな切り口できはるか楽しみにしてます。

恐縮です。FSTREKはいよいよサービスを終えるそうですから、まんが宇宙大作戦についておおっぴら(笑)に書ける場所はここしかなくなりました。
またぼちぼちと書いて参りますので、よろしくお願いします。

投稿: ANCHOR | 2005.01.25 03:15

TAS私は実は見たこと無いのですが、作品の製作過程を知ると観たくなりますね。

投稿: odo | 2005.01.25 22:00

>odoさん

ぜひ機会があれば、見てやってください。

制作のさまざまな背景を知ると、わたしはなんとなく好意的に観るようになるのですが、特にTASはその傾向が強いです。
なんかこう、勝手に身内になった気分になるんですかなあ。

投稿: ANCHOR | 2005.01.26 01:59

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