« 2004年4月 | トップページ | 2004年7月 »

2004.05.26

第7話「綺亞羅」

テレビ東京の「ウルトラQ dark fantasy」。今回はシリーズ構成が上原正三、脚本は小中千昭、監督は金子修介。

はじめに断っておく。ジャズのことはなにひとつ、わからん。

地下と思しきジャズバーで、これはなんだろう、コントラバスだろうか、おそらく今回の主人公と思われる男がピアノとドラムを従え、大きめの弦楽器で静かな曲を奏でている。なんという曲なのかは知らない。

店のカウンターの前に、この場所には似つかわしくない女の子が立っている。黒く長い髪の前髪を切り揃え、白いドレスには同じく白いベールのようなものを重ねている。視線の先には、多分主人公のチョビ髭。

演奏が終わると客席からまばらな拍手。そのときチョビ髭は初めて女の子に気がつく。

店の人が自分を紹介しているのに、まったくに耳に入らない様子で女の子を凝視するチョビ髭。彼は坂口という名で、今日この店には急遽ゲストとして呼ばれたらしい。演目はすべてバスター・カークランドという人物の曲だそうだ。その人物が実在するのかしないのかも知らん。

紹介が終わっても女の子に気を取られている坂口に、しょーがねぇな、という表情で声をかけるピアノ男。ピアノ男に視線を移した一瞬に、女の子の姿はなくなっていた。気になりつつも、2曲めの演奏に入る坂口。

SONYのポータブルMDプレーヤーで、さっきの店で録音した自分の演奏を聴きながら車を走らせる坂口。演奏に入るきっかけが遅れていると舌打ち。

ジャズバーで演奏が終わったあと、「また呼んでくれよ」とピアノ男に声をかけたが、ピアノ男の反応が芳しくなかったのは、坂口の演奏がへたれだったからだ。

自分のしょぼさを棚に上げてすっかり気分を悪くした坂口は、乱暴にMDの電源を切る。

と、ヘッドライトに照らされた車道に、白い人影がまろび出てきた。さっきの女の子だ。しっかりした表情で坂口を見据えている。

慌ててハンドルを右に切り、車を停める坂口。横になって停車している車が、センターラインの上にあるのもおかしな話だが、車より軽く5メートル以上先に女の子が倒れているのもまったく理に叶わない。どうなってんだ。

大丈夫かと声をかける坂口。「ぶつかってないよな?」 そうだな。わたいもそう思う。勝手に倒れているのだ。貧血か? 持病のシャクか?

まったく起きる気配のない女の子を抱き上げると、さっきのきりっとした表情からは想像もつかないもうダメな様子。蚊の鳴くような声で「連れてって……」と囁く。張り手を喰らったような表情の坂口。そのひと言だけ言って気絶した風を装う女の子。明らかに演技だ。何者?

女の子の上半身を支える坂口の手に痛みが走った。思わず手のひらを見ると、鱗粉のようなきらきらした粉が付いている。ますます何者なんだ。虫の一種か?

ここでオープニングテーマ。佐野史郎はなにも語らない。

気絶したままの女の子を自室に連れ帰る坂口。病院に行かず、自室に戻るあたりが下心満点のチョビ髭だ。

ソファに横たえ、自分のベッドから毛布を持ってくると、既に女の子の姿はなかった。狐につままれたような顔の坂口。洋酒を取り出して眺めるが、口は付けずに元の場所に戻す。

ふと床を見ると、金粉入りの青いジェルのような液体が目に入った。それが女の子とどのような関係があるのか、説明のないまま、とりあえず次のシーンへ進む。

監視カメラで見張られたどこぞの受付で、人待ち顔の坂口。そこにアナログレコードを手に現れたスーツ姿の男は、坂口とため口をきく程度に仲のよい知り合いらしい。

いいものを見つけたぞ」と得意気にスーツ男が見せるレコードに、坂口はビビッドに反応。

坂口「バスター・カークランド……こんなのあったっけ?」
スーツ男「にぶい奴だなあ。何番って書いてある」
坂口「1553番」
スーツ男「そう、栄光のブルーモード・レーベル。欠番の1553番だ」
坂口「あはっ……あり得ないだろ、これ」
スーツ男「ジャズ黄金時代を築いたブルーモードの、1500番代には、2枚の欠番がある。1553と1592。1592はクラークの未発表盤としてのちにリリースされた。だが、1553は、最初っから存在しなかったはずだったよな?」

ジャケットの右下には「BLUE MODE 1553」の文字。BLUE NOTEとは違うのか。それすらわからん。ジャケットに使われている写真や、得々としゃべるスーツ男に合わせてカットインするバスター・カークランドの古い映像は、多分、この作品のために撮影したんだろう

欠番の1553は、わずかなサンプル盤がプレスされたものの、マスターテープごと没になったのだが、スーツ男が勤める会社に所属するアーティストがニューヨークでレコーディングしたとき、倉庫で発見され、オークションにかけられそうなところを買い取ってきたのだと言う。

そんな裏話なぞ上の空で聞いている坂口はジャケットをためつすがめつ眺めながら「聞きてぇなあ。どうだった、バスターのプレイ」とスーツ男に詰め寄る。

プレイは今一だったとスーツ男は言った。

スーツ男「なんかぶつぶつぶつぶつしゃべってんの入ってたりしてさ。没になるのもわかるかな。あ、お前学生のときからバスター好きだったよな? 酒に溺れて、天使が憑いたとか言い回りぃの、終いには病院でのたれ死に。今度CD、焼いといてやるよ」

ちょっと嫌味なところもあるが、親切な奴だ、スーツ男。

アルバムを片づけるスーツ男の左手首には、「M.T」とイニシャルが入った皮バンドが巻かれている。一方坂口の左手首にも、同じ黒い革で「O.S」と入った革バンドが。学生時代からのジャズバンド仲間ということか。

仲間ついでに仕事の紹介を頼む坂口だが、田中から「お前な、会社辞めてまでベース弾いてるの、どうかと思うぜ」とたしなめられる。

坂口「俺は、ちゃんと食えてるよ」
田中「食えてないからこうやって頼んでんだろ」

それはそうだ。
田中「国民年金ちゃんと払ってんのか?」

それは余計なお世話だ。反論できない坂口。おい、払ってないのか。
田中「いいか。俺たち必死に生きてきたじゃないかよ。なあ。オサム! ちゃんとやろうぜ」

語りっぷりが、アンタッチャブルの山崎弘也そっくりだな。顔も似てる。
田中「……はぁ。俺たちもう若くないんだぜ。お前も俺も」

突然田中の後ろに白い女の子が近づき、右手で田中の左肩を掴むと、後ろに引き倒した。
受け身を取る間もなく後頭部を床に打ち付ける田中。さぞ痛かろう。それはともかく、机の近くに座っていたわりには、倒れる際に上がる足で机を蹴飛ばす様子なかったな。かなり足を広げてがに股で転倒したと見える。店にとってはありがたい気配りだ。

驚いて女の子に声をかける坂口に、「知り合いか」と尋ねる田中。女の子は挑戦的な眼で田中を下から睨んでいる。坂口が責められているのが気に入らないらしいが、なぜ坂口の肩を持つのかは不明だ。

田中「たいがいにしとけよ。お前こういうの、犯罪になるんだからな。仕事はなんとかするよ」

いい奴じゃないか、田中。この男は大事にしろよ、坂口。

なんでこんなことしたんだ」と坂口は女の子に尋ねるが、彼女は無言。

席に戻った田中は、「BUSTER KARKLAND」と印刷されたアルバムを無造作に机の後ろの台に置くと、会議に呼ばれて離席。

並んで外を歩きながら、学生時代の田中について女の子に語って聞かせる坂口。「あいつはあれでも、学生時代はスティーブ・ガットのコピーをやらせたら、日本一のドラマーだったんだ」 あれでもって、どういう意味だ。「あれでも俺のこと心配してくれてんだ」 わかってるじゃないか、坂口。すると、女の子が初めて長台詞をかました。

女の子「あの人があんたのこと、どんなにバカにしても、あんたは心配してくれてるって、ありがたがってんだ」

わかってないな、お前。
女の子「自分で鼻っ面殴ってやればいいんだ」

なに言ってんだ、お前、一生鱗粉振り撒いてろ。

ところがそう言われて、まんざらでもない表情の坂口。なんだ、お前も実はそう思ってるのか、そんなんやから社会生活営めんのや。坂口の深層心理を言い当てた鱗粉女はにっこりと得意顔だ。似た者同士でよかったな。

いないところでえらい言われようの田中が会議を終えて席に戻ると、アルバムを置いていた場所にアルバムはなく、代わりに金粉ジェルが垂れ落ちていた。見ているこっちはあのクソ女か、と思うが、田中にはわからない。そもそも、盗るなら証拠を残さずうまく盗れんのか、鱗粉。

コンビニに入り楽しげに買い物をする坂口と鱗粉。自分の財布も持ってなさそうなのに、商品をじゃんじゃんカゴに入れる鱗粉。その様子を、珍しいものでも見るような表情でぼーっと見ているコンビニ店員。

当然のように鱗粉を連れて部屋に戻った坂口は、鱗粉を座らせてコントラバスを演奏する。すっかりご機嫌だ。黒人バスター・カートランドのモノクロ映像がカットイン。

一方、アルバムを盗られた田中はビルの警備室に行って、監視カメラの映像を再生していた。カメラは鱗粉の姿を捉えていた。が、その姿は点滅しているかのようで、ところどころで消えている。不思議がる警備員。田中は鱗粉がからんでいることは間違いないと踏んだのだろう、警察を呼ぶよう警備員に指示する。

演奏を終えた坂口は、窓際のキッチンで食事の支度を始める。すると、部屋に音楽が響き渡った。振り返った坂口は、なにかのレコードをプレーヤーにかけた鱗粉がジャケットを手にしている姿を見る。そのレコードこそ、田中の席に金粉ジェルを残して消えた1553番だ。

坂口「どうしてこれがここにある」
鱗粉「あんたはこれが聞きたかったんでしょ。あんな奴なんかにこの音楽の美しさはわからない」

わからんかもしらんが、お前はただの泥棒だ。CDに焼いてくれるまで待てんのか。
坂口「なんで勝手になんか持ってきた。こんなことしていいわけないだろ」
鱗粉「意気地がないのね」

言い聞かせるつもりが罵倒されて、ぎょっとする坂口。
坂口「なんだと」
鱗粉「思いどおりに生きてるつもりで、結局他人の顔色ばかり気にして逃げ場所ばっかり探してるんだわ」

どうやら倫理観が人類とは異なる生命体らしい。

またも反論できない坂口は、つかつかとキッチンのそばに歩み寄ってなにをするかと思えば、先日鱗粉が目の前から消えたときには口を付けなかった洋酒の瓶を取り出すと、注ぎ口に何重にも巻いてあった赤いビニールテープをほどき、ラッパ飲み。アル中が酒を封印していたと見える。鱗粉に言われたことのどこが堪えたのか、飲まずにはいられなくなったようだ。なんだか妙に弱い男だな、坂口。じとっとした視線を坂口に送る鱗粉。あ、逆噴射してむせてる。もったいないことするなよ、坂口。飲むならちゃんと飲め。ああああ、挙げ句に瓶ごと床に落としやがった。半分以上残ってたぞ。なにやってんだか。

冒頭でもう呼んでもらえないような演奏ぶりを披露したバーにて、コントラバスを弾く坂口。いつの映像だ

警察を前に坂口の過去を語る田中。

田中「坂口は7年前、心臓で一回倒れたんだ。大切だったかもしれないけどあいつの場合は、酒が毒だったかなあ……。手術のあと、あいつは会社を辞めて、好きな道で生きていくとかなんとか言ってねぇ……」

時を同じくして、監視カメラの映像をチェックしていた警備員は、不思議なものを見る。鱗粉が歩き去る背後を、白いぼろぼろの布きれを頭からすっぽり被ったような人影が5体、ふらふら歩きながらついていっているのだ。どれも半透明で、そこに実在していたのかどうかさえ定かではない。そのなかのかぶりものをしていない1体が立ち止まってカメラ目線を送る。そして一気にズームアップ。というか、自らカメラに向かって近寄ってきた感じ。大写しになったハゲの男は人間の顔をしているが、あんまり気持ちのいい表情ではない。にやっと笑うハゲ男。


坂口「バスター・カークランドは奇矯な行動のほうが有名だけど、俺はなにより、彼の弾くベースの音が好きだった」

モノクロ映像のなかでグラスを持ったカークランドがコントラバスを離れ、坂口の座るテーブルに就いた。乾杯して酒を飲み交わすふたり。それは一気飲みで酔い潰れた坂口の見ている夢だ。床に倒れて眠る坂口を介抱するでもなく、ただ眺めている鱗粉。外は明るくなってきているようだ。

鱗粉はドレスの上に羽織っていた半透明のベールを脱ぎ、ドレスの背中のファスナーを下ろした。両手を胸の前で交差させると、背中から銀色の突起が音を立てて突き出した。それは蓋だったのか、今度はその下から蝶のように葉脈のある羽根が広がった。羽根の先には左右それぞれ5つずつ赤く光る球が付いている。落ちる寸前の線香花火か、アンコウの提灯のようだ。

ゆっくりと羽ばたきながら坂口の横にひざまづいた鱗粉の羽根が、坂口を包み込む。

意識を失ったままの坂口は悟ったような口調で言う。

坂口「そうか。お前はバスターのところに現れたっていう、天使なんだ。はっ、俺みたいな三流のところに来るなんて、ちょっと間抜けじゃないのか?」

ベッドの上で仰向けになって眼を覚ました坂口は、右横に靴を脱いだ鱗粉が、自分の胸に頭をもたれかけさせて添い寝しているのを発見。視線を交わし、また眠ろうとしたところに、扉を叩く音とともに坂口を呼ぶ男の声。港署の者だと言う。

扉を開けた坂口を、15分前から標準速で回っていたビデオカメラが正面から捉える。カメラを構えたまま踏み込んできた警察の人間は、部屋中にカメラを振ってなにかを探しているらしい。ベッドに腰かけたまま靴を履いている鱗粉を見つけ、「いました!」と報告。

署まで同行をという刑事に、「なんで?」と素で答える坂口。盗難と未成年者の諸々な届けが出ているそうだ。諸々な届けって、はっきり言え。

同行に同意した坂口は、鱗粉に「じゃあな」と声をかけビルを出る。おや、鱗粉は連れて行かないのか、刑事さん。

部屋に残って撮影を続けていたビデオ係が、鱗粉にカメラを向けながら「キミも一緒に来なさい」と話しかけた途端、鱗粉の背後に白い異形の者たちが一斉にぶわっと現れる。だからなんなの、この連中

パトカーに乗り込もうとする坂口らの背後に、ビデオ係の汚らしい悲鳴が響いた。様子を見に行った刑事と警官も、悲鳴を上げてその場に尻餅をつくほどの大変な騒ぎ。

腰の抜けた刑事らを尻目に、階段を下りて外に出る鱗粉。駆け寄って「なにをしたんだ」と尋ねる坂口に「なにもしてない」と鱗粉は答えた。なにもしてないだろうが、なにかを見せたのは確かだ。

一度は警察へ行くつもりだった坂口だったが、状況の変化で気も変わり、鱗粉を連れてその場を逃げ出した。もう後戻りできないぞ。

「横浜54 や52-33」のトヨタ車で走り出す坂口。

1553番のメロディが流れるなか、坂口と鱗粉は言葉を交わす。

鱗粉「どこに行くの?」
坂口「どこに行くか、考える時間はたっぷりあるからな」
鱗粉「随分窮屈になっちゃったんだねぇ、ここも」

国道17号線、大豆戸まで13分の地点で、交通違反監視カメラにナンバープレートと運転席、助手席を写される。

いつ取り戻したのか、バスター・カークランドの欠番アルバムを手にする田中。

サイドボードに置かれた坂口の左手を、握ろうかどうしようか、迷う鱗粉。

鱗粉「どうしてなにも聞かないの?」
坂口「え?」
鱗粉「わたしが誰かとか、どこから来たかとか」
坂口「そうだなぁ。なんで聞かなかったんだろ」

聞かなかった、と答えた坂口の台詞からはこの先も聞くつもりがないということがわかる。鱗粉もそう察したのか、自ら名乗った。
鱗粉「わたしは、綺亞羅」
坂口「……そっか」

やはりそれ以上聞く気はないらしい。綺亞羅もとりあえず名前を告げたことで満足したらしく、黙っている。

仕事場のデスクで直立して電話を取り、なにやら驚いている田中。

田中「えっ。坂口が。ベースと一緒に。はい。わかりました」

なにがわかったのかわからないが、椅子に倒れ込んで天を仰ぐ田中。ふと1553番に目をやり、身体を起こすと、手にとってなにかを思案する様子。さっき手にしてプレーヤーにかけていたはずだが、時間と空間が連続していないのか、この編集は。

どこかの公園らしい場所でコントラバスをつま弾く坂口。それ、いつ持ち出したんだ

獄中で拘束衣を着せられたバスター・カークランドのモノクロ映像。牢屋の隅に綺亞羅が立っている。

坂口「天使が見えていたバスター・カークランドは、ほんとに不遇なジャズメンだったのだろうか」

1533番をかけながら、窓を背に立ち、逆光でむせび泣く田中。左腕に巻いた革バンドを撫でさする。綺亞羅がなんと言おうが、田中は坂口のことを心配してるぞ。

どこぞの誰かに通報されたらしく、楽器を奏でる坂口のほうへ警察が向かってきた。いち早く気づいた綺亞羅に促され、でかい楽器を抱えて逃げる坂口。

床にしゃがみこんで号泣する田中。なにをそんなに泣いている。さっきの電話でなにを聞いた。

逃げる途中で立ち止まって手を差し伸べる綺亞羅に、不思議そうな顔を向けた坂口だが、結局楽器を置いてその手を握りしめる。

すると綺亞羅は羽根を広げて宙に浮き始めた。片手をつないでいる坂口も、物理法則を無視した形で、つないだ手が斜めになったままでまっすぐ上に浮き始める。

叫ぶ警察。

綺亞羅に手を引かれて空中散歩の坂口。

誰が手を下したのか、火にくべられて燃えるカートランドのアルバム。

石畳の地面に落ちて粉々になるコントラバス。コントラバスは置いて飛んだんじゃないのか。

下を覗き込む警察とタレコミ屋一同。

落ちてきたものに驚く学生風のカップル。

嬉しそうに走ってきて、笑顔で携帯電話のカメラを構える白いパーカーの男子学生風。

砕け散ったコントラバスの横には、夥しい血を流した坂口が倒れている。その目は開いたまま、ぼんやりと遠くを見ているようだ。

燃え尽きんとするジャケットとレコード盤。

音楽も終わった。

シーンが前後しているが、田中は電話で坂口がコントラバスと共に落下して死んだと聞かされたのだろうな。そういう編集なんだろう。効果のほどはわからんが。

夜の街を歩きながら坂口の思い出を語る田中。以前警察を呼んだときに坂口のことを話していた相手と同じ、髪を後ろでまとめた女性にだ。警察関係者じゃなかったのか、この人は。

田中「俺は、坂口の奴がうらやましかったのか、嫉妬してたんだよ」
女「そんなに自分を責めないでください」
田中「そう言われたくて、言ったんだよ」

紫色のディパックに白い小動物のマスコットをぶらさげた髪の長い女の子とぶつかりそうになりながらすれ違う田中。

もちろんその女の子は、綺亞羅と同じ顔をしているのがお約束だ。振り向いて田中の後ろ姿を見送る私服の綺亞羅。お前、田中になんかするつもりじゃないだろうな。それは逆ギレだ。


佐野N「ブルーモード、1500番代の欠番、ナンバー1553は、今も、そしてこれからもずっと、欠番となっているのです」

今回、佐野のナレーションはこれだけ。別に入れる必要もないナレーションだ。エピソードに一回はしゃべらさないといけない契約なのか。無理して意味もないことを言わせてどうする。

今回はとうとう狂言回しのゴウちゃん、エンクミが出てこなかった。別に出てこなくても「ウルトラQ dark fantasy」は成立するということだ。

成立はしたが、エピソードとしていい出来かどうかはまた別問題だ。どんな人生でどんな死に様でも、本人がよければそれでいいという終わり方だが、それではオナニーに過ぎない。24分にも亘ってアル中ロリコンの脳内妄想を電波に乗せ、なにを伝えたいのかさっぱりわからん。ロリコン向けには可愛い女の子が一緒にいてくれたらウハウハでOKなんだろうか。付き合えないのでそっちでやってくれ。綺亞羅の背後に潜むハゲ男らが何者なのか、綺亞羅が金粉ジェルを排出するのはどんなとき、どんな理由によるものなのか、ストーリーの要で複数回使ったわりには直接的間接的に説明するシーンがついになかった。なんだありゃ。脚本家も演出家もオナニーだ。勘弁して。
最後に、悪者扱いされた田中の名誉回復を訴えたい。唯一、田中だけがまともだった。

冒頭でジャズは知らん宣言をしたけれど、ジャズの知識は不要だった。むしろ『ダーククリスタル』がちょっとパクってないか? よく言えばオマージュか。まあ、それなら『ダーククリスタル』を見たほうがマシなので以下割愛。

次回は「ウニトローダの恩返し」。異星人と怪獣が登場する、重たい作りではなさそうなエピソード。狂言回しも戻ってくるようだ。

※この稿は、2004.9.21に書き起こし、エントリーしたものです。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2004.05.19

第6話「楽園行き」

テレビ東京の「ウルトラQ dark fantasy」。今回はシリーズ構成が上原正三、脚本は村井さだゆき、監督は服部光則。

父親の失踪を相談するため、自宅の和室にマド改めゴウちゃんを上げ、父の2004年度業務ノートを手渡す娘。娘はゴウちゃんを坂本さんと呼ぶ。そうか、ゴウちゃんは坂本さんという名字なのか。初めて劇中で呼ばれた。どうやら娘と坂本ゴウちゃんは知り合いらしい。

営業畑一筋だったという父親は、下請工場へ転属になったあとしばらくして失踪した。工場勤務中の日誌には業務のことは書かれておらず、「特になし」という文字だけが並んでいる。

しかし、失踪3週間ほど前からは、意味ありげな短い文章が書いてあった。


04年2月16日
退職した後藤には、彼からあの噂を聞かされる。

04年2月21日(土曜日)
7時出社  17時退社
後藤から楽園の事を詳しく聞く。彼は本気で信じているらしい。

04年2月28日(土曜日)
配達人と取引きしているコンビニを探し当てる。
同日、後藤が行く。
(意味不明の図形が書き添えてある)


娘は雑誌「Mind」の記者であるゴウちゃんなら失踪事件に詳しいのではないかと思い、相談しているらしい。
父親の失踪にはなんの興味もなさそうだったゴウちゃんだが、失踪する直前の日誌の記述がとても気になったらしく、「あのさ、しばらくこれ(ノート)借りていいかな」と言う。メディアの力で父を探してもらえると理解したのか、娘は嬉しそうに頷き、頭を下げる。ゴウちゃんが個人の興味本位でノートを受け取ったとは微塵も思っていないようだ。ゴウちゃんの使命は重い。

ノートを受け取ったゴウちゃんは失踪男の足跡を追い、下請工場へ聞き込みに。

いじめがあったのではと尋ねるゴウちゃんに対し下請工場は、本社からの大事なお客様をいじめるわけがない、丁重におもてなししていた、と説明。
仕事が生き甲斐だった人になにもさせないっていうのは、本人には相当辛いことだったんじゃないですか?」と尋ねるゴウちゃん。丁重にもてなす余り、どうやらろくに仕事を与えずお客さん状態だったようだ。業務日誌に「特になし」と書かれているのは、失踪男のやる気がなかったわけではなく、実際に仕事がなかったからだった。

日誌に出てきた後藤というのは失踪男より前にリストラされて下請工場に回された部長のことで、そこも既に辞めて警備会社に転職しているという。ゴウちゃんは続いて警備会社を訪ねてみた。

警備会社のとあるフロアの応接スペースに座り、アポを取った相手を待つゴウちゃん。

待っている間、事務所内では社員が忙しそうに走り回っている。

気の弱そうな女性の事務員に、朝のうちに取っておいてくれと頼んでいたコピーができていないと怒っている山井という名の営業マン。コピーは諦めてタイプを依頼し席に戻ると、営業に出かける上司に、準備が遅いと怒られる。慌てて上着を羽織って出かける間際、女子事務員に念押し。

山井「ちゃんとやっといてくれよな。俺が怒られるんだから」

頷く事務員。小林という名の上司から「山井!」と怒鳴られ、またまた慌ててホワイトボードに行き先を書くと、出かけていった。

ボードによれば今日は3月10日水曜日。同部署に8人いる男性社員のうち、ナンバー1の佐々木はニューヨークへ出張中。山井はナンバー2の小林に次ぐナンバー3らしいが、この扱いだ。山井の下には、城本、芦田、湯本、安中、岸の名が並ぶ。女子社員は画面に見えるだけで5名。表は外出して直帰。田中(恵)は産休中、読み取れない1名も外出して直帰。社内に残るのは内田と田中(美)だが、山井に怒られていたさっきの事務員がそのいずれかなのかどうかは確定できない。

ようやく現れた年配社員からゴウちゃんは、後藤はここももう辞めていることを知る。
辞める際、後藤はただ電話をかけてきて一言言っただけだという。

年配社員「それが妙なんですが、電話で一言ただ“楽園に行く”と言ったきり……」
ゴウちゃん「楽園……?」

業務ノートの一節を思い出すゴウちゃん。

04年2月24日(火曜日)
そこに至る道は『配達人』だけが知っているそう。
配達人を探す手がかりは目印の並べ方にある。

朗読するゴウちゃん、「そこに至る道は、『配達人』だけが知っているという」 ん? 読んでるわけじゃないのか? まあいいや。

夜の町を歩くゴウちゃんの姿に、業務ノートの一部がカットイン。


配達人=男? 女?
黒のカバン(カバンが丸囲み)
おもちゃ

「おもちゃ」の「ゃ」の字が小さくて「ち」にくっつき過ぎなので、ぱっと見は「おもち。」に見える。

駅前、東口 コンビニ
(画面から切れていて読めず)ン商店街のななめ前

たったこれだけの記述を頼りに、「フレンドマート」というコンビニにたどり着くゴウちゃん。店の外の隅に、王様のアイディアで売ってそうなオブジェが置いてある。強力な磁石を組み込んだ黒い台に、型抜きされた薄く小さな金属板や、金属のリングなどをたくさん載せ、いろいろなシルエットを作って楽しむ一種の置物だ。

コンビニの外にこんなものを置いていては、地面直座り小僧らに弄ばれて散逸するか持ち去られるか、いずれにせよ初期の姿のまま存在し続けることは叶わないだろうと思うが、「ン商店街のななめ前」に集う小僧は躾がいいらしい。

ここで佐野史郎のナレーションとともにオープニングテーマ。失踪男は大手企業の第一線を走ってきた営業部長だったそうだ。営業部長が失踪した日は3月5日金曜日。業務ノートには

楽園行き

と書かれていた。
佐野N「楽園行(ゆ)き、楽園行き、楽園行き。その言葉を初めて耳にしたとき、彼は既に禁断の時空に足を踏み入れていたのかもしれません」

初めて聞いたときにはもう踏み入れているんだったら、防ぎようがないな。あんたのナレーションはいつもそうだ

フレンドマートに近づく人影を、物陰からこっそり見張るゴウちゃん。黒い帽子、黒いコート、黒いズボン。黒いヒールを履いているな。女か。

細面で眼鏡をかけているその人物は、コンビニの建物の横手に回ると、カバンからなにやら外付けハードディスクくらいの大きさの“箱”ふたつを取り出す。ダンボール箱を手に現れた店員がその“箱”を受け取り、代わりに黒ずくめの女はダンボールに入っている品々を、黒手袋をはめた手で黒いカバンに詰め込んだ。

品々は、「S・O・S」と書かれた保存パックと缶詰の乾パン。そして薬かサプリメントが入っているらしい瓶。どれもこれも、わたしが普段行くコンビニではあまりお目にかからないものばかりだ。

見るからに怪しい姿の女を尾行するゴウちゃん。

3月初旬だからそんな格好でもいいが、夏になったらどうしてるんだ、黒ずくめ。

そんな先の季節はおかまいなしに、地下商店街へと潜っていく黒ちゃん。地下街では標的からわずか5メートルくらい後ろを飄々と追うゴウちゃん。

磁石と金属板のオブジェが店先に置かれた雑貨屋で、店員からなにやら封筒のようなものを受け取る黒ちゃん。伏し目がちに封筒を渡した女店員は黒ちゃんについていき、店の横で箱を3つ受け取っていた。あ、なんだ、ホントに王様のアイディアやん。商品提供の代償でタイアップの店名露出か。ファンタジーを銘打っといて、生々しい実世界見せるなよ。

さらに歩き続ける黒ちゃんは、地下商店街を外れて鉄の扉の向こうへと入っていく。慌てて追うゴウちゃん。そこは地下駐車場だ。10数メートル先に黒ちゃんの姿。走って追うゴウちゃんの靴音が響く。いいのか、それが尾行と言えるのか

さらにさらに追うゴウちゃんは、明かりのない階段を懐中電灯で照らしながら下っていく。いつも懐中電灯を持っているのだろうか。用意のいい人だ。

明かりを点けて尾行するのもどうかと思うし、何度も言うようだが、靴音が大きいぞ。絶対気付かれないはずがない。いや、むしろ気付いて欲しいとしか思えない。

ずんずん進んでいくゴウちゃん。いっさい後ろを振り向かないが、帰り道はわかっているのか?

いつの間にやら地下鉄の軌道に出たらしく、線路上を歩いているゴウちゃん。横をあまり人の乗っていない車両が通り過ぎていく。そこ歩いていて大丈夫なのか?

黒ちゃんの姿は完全に見失っているようで、きょろきょろしながら無造作に進んでいくゴウちゃんだが、どこでなにを目印に線路から逸れたのか、なにやら人間が通るために作られた風のトンネルに入り込んだ。

カンカンと鉄製の足場を踏む音を響かせながらどんどんと潜っていくゴウちゃんの十数メートル前で、黒ちゃんが右に曲がっていく姿がよぎる。あんたそんな近くまで寄ってその靴音立ててたら、ほんま、絶対バレてるって。

黒ちゃんの後ろ姿を見つけ、カンカン音を立てながら走って追いかけたゴウちゃんだが、すぐにまた姿を見失う。遊ばれてるんじゃないのか。だだっ広い一本道で、黒ちゃんが隠れられそうな場所はない。

その先では、巨大なダクトがうねり、大きな排気音が聞こえていた。明かりも点いている。今行った先からまた戻ってきたゴウちゃん。迷ったらしい。

ダクトの隙間を抜け、ひたすら進んでいくゴウちゃん。思いついたように携帯電話を出してかざして見るが、「」と悪態をついてジャケットにしまい込んだ。電波が飛んでいないらしい。そらそうやろ。

そのまま進むと、巨大な柱が林立する、やたらタッパの高い空間に出た。

下を覗くと、少なくとも十数名の人影があった。一列に並び、黒ちゃんから配給を受けているように見える。

黒ちゃんはコンビニでもらってきた「S・O・S」を配っていた。その代わり、列に並んだ人たちから、コンビニなどに置いてきた“箱”と同じものを受け取っている。黒ちゃんの横には腰の曲がった長髪の男がいて、受け取った“箱”をきれいにカバンに詰めている。

黒ちゃん、髪の毛を帽子に隠しているが、ばりばり女だな。

下まで降りてきたゴウちゃんは、どこからともなくデジカメを取り出し、その様子を収めようとする。しかし、アングルを決めるのにぐずぐすしている間に、青いスキー帽を被った男に見咎められ、とっさに逃げ出した。

人のいないほうに逃げればいいものを、左右に人がいて、正面は大きな柱という明らかに逃げ道のないところへ一直線に走るゴウちゃん。

無表情な男たちに囲まれて取り押さえられ、暴れるゴウちゃん。暴れながら取り囲む男たちを見回すうちに、なにかに気づいて動きをぴたりと止める。

佐野史郎失踪営業部長が立っていた。タツミという名字らしい。ゴウちゃんから呼びかけられても返事をせず、あんた誰?という表情で黙って視線だけを返すタツミ部長。

解放されてタツミの住まいで話しをするゴウちゃん。住まいと言っても、白い布やダンボールでだだっ広い場所を仕切った程度のプライベート空間だ。ホームレスと倍も変わらない。いや、ホームレスだろ、これは。

娘さんが心配していますよ、と伝えるゴウちゃんに、「ああ」とだけ答えるタツミ部長。こざっぱりした服装で、ヒゲも生えていない。こじゃれた椅子や机もあり、電灯も点いている。

彼らがいる場所は、作りかけで中止になった地下街の跡だと言う。それにしては深いし、柱多過ぎ

タツミ部長「いつの頃からかここに人が住み着き、横に穴を掘って広げ、今じゃ迷路のような地下都市が広がっているんだ」

住み着いたのはわかるが、穴掘って広げたというのはどうだ。とても個人が掘って広がったような景色には見えないぞ。
ゴウちゃん「もしかして業務日誌に書いていた楽園って……」

おいおい、ちょっと待てゴウちゃん。まさか、あんた今の今まで気づかなかったのか? なにを追ってるつもりだったんだ……。
タツミ部長「そう。ここだよ。安楽の園。だから楽園だ」

“だから”ってなんだ。説明になってないぞ。接続詞の使い方を一から学び直せ。「安楽の園、ですか……」納得したのかしてないのか、ぼんやりと口にするゴウちゃんは、タツミ部長が淹れてくれたインスタントコーヒーを受け取りながら、今日一番の笑顔を見せる。そんなに嬉しいのか、インスタントコーヒー。

電灯を見上げつつ、電気がどこから供給されるのか不思議がるゴウちゃんに、「開発途中で捨てられた大容量バッテリーだそうだ。誰かが改良して使えるようにしたらしい。電気は適当に、そのへんの共同溝から拝借してね」と答えるタツミ部長。

年配者数名が、バッテリーパックを製作している映像がカットイン。

黒ちゃんこと“配達人”は、住人がバッテリーパックに貯めた電気と交換に食料などを届ける役目を担っているという。地上で見た黒ちゃんの様子を思い出し、合点がいった様子のゴウちゃん。

タツミ部長「取引したい店は取引額に応じた目印を置いておく。すると配達人が現れて、契約を取り交わすという仕組みだ」

え? あのオブジェが目印であるのはわかるとして、それを契約したいという意思表示のために置くというのはどういう意味だ? 契約していますよという目印ではないのか。契約前に置くとしたら、いつどうやって“取引額に応じた目印”がどんなものかを知ることができるのだ。黒ちゃんが事前に営業して回っているのか?
タツミ部長「大きい店舗では月に数十万は経費が浮く」
ゴウちゃん「一体、何者なんです?」
タツミ部長「さあなあ。配達人は男か女か」

女やったで、黒ちゃん、どっからどう見ても女。
タツミ部長「一体何人いるのか。だが都市にはそういう輩が生息しているもんなんだよ。いつの時代にもな」

あ、そう。

ゴウちゃんはトイレを希望。コーヒーが早くも効いたらしい。即効だな。

もちろんトイレは完備されているようだ。タツミ部長は、水と食べ物とトイレがあれば人間はなんとかなると豪語。人々はコンクリートの床に椅子や畳を置き、思いおもいに本を読んだり車座になってしゃべったりしている。生きるために働きさえしてしない。ホームレスの風上にも置けないと言っていいだろう。

仕事が生き甲斐だった人になにもさせないっていうのは、本人には相当辛いことだったんじゃないですか?」とゴウちゃんは失踪したタツミ部長の気持ちを推し量っていたが、まったく的外れだったことがわかる。タツミ部長は仕事もなんにもない、みんなで歌おうゲゲゲのゲな世界を求めてここへ来たのだ。

100人かそれ以上が住むというこの場所には、“楽園”を信じる者だけが集まるのだそうだ。

タツミ部長「わたしや後藤みたいにね」
ゴウちゃん「後藤さんて人も、ここに?」
タツミ部長「彼は……」

なぜ顔をそむけて言葉を濁す。
ゴウちゃん「ここになにがあるっていうんです? 地上にない幸せがここにあるんですか」
タツミ部長「なにもないよ。我々はただ待っているのさ」
ゴウちゃん「待ってるって、なにを」

突然、チーンという金属音が鳴り響く。トライアングル、あるいは仏壇のリンのような音だ。

その音を聞いたタツミ部長は「また誰か逝ったようだ」と言う。彼らがただ待っているのは最期の時なのだそうだ。

タツミ部長「後藤は幸せそうな顔をしていたよ」

あらま。そういうことか。

ゴウちゃんの処遇についてタツミ部長は、「帰してやりたくても道がわからんのだよ。我々は配達人に連れてきてもらっただけで道を知らない」と語る。帰り道はゴウちゃん本人がわかってるんじゃないのか?

キミはあの迷路をひとりで戻れるかな?」 ぶるぶると顔を横に振るゴウちゃん。おいおい、だからたまには後ろを確認して帰り道を覚えておけとあれほど……。待てよ、帰してやってもいいなら、なぜ配達人には頼めないのだ。黒ちゃんに頼めば簡単だろう。

いっそここに住めと言われ激しく拒否するゴウちゃんだが、そのとき“楽園”に異変が起きた。遠くのほうからでエンジン音らしきものが響いている。

戻ろう、あいつらに見つかったら大変だ」と立ち上がるタツミ部長。追いかけるゴウちゃんは、娘さんのためにもなんとかして一緒に地上に戻りましょうよと、本来の目的を突然思い出して説得を試みた。

タツミ部長「キミ、あれはもう立派な大人だよ。ひとりでも充分やっていけるさ」

やっていけるかいけないかの問題じゃないだろ。
ゴウちゃん「でも」
タツミ部長「わたしはね、残された人生をここで静かに暮らしたいんだよ。誰にも煩わされることなく、安楽にね」

娘さえ煩わしいちうことなんか? 下請工場でも“誰にも煩わされることなく、安楽に”過ごしてたんちゃうんかいな。地上でなにが不満やったんか、今一ようわからんな、タツミ部長。しかもあんたに残された人生はまだ相当長そうだが。何十年も日の当たらない地下でぼんやりするのが楽園か?

わたい同様納得しかねる様子のゴウちゃんが「そんな……」と絶句したその瞬間、遠くで男の断末魔の叫び。

赤いレーザー光を照射しながら、キャタピラで動く大きな乗り物が迫ってきた。その周りを、頭のてっぺんからつま先まで白い衣装で包んだ人々が囲んで歩いている。戦車+歩兵のようだ。

タツミ部長「いかん。あいつらだ」
ゴウちゃん「あいつらって、誰?」

当然の質問だ。誰なんだ、あの白ちゃん軍団は。しかし質問には答えず、ゴウちゃんの腕を取って逃げたタツミ部長は物陰に隠れて様子を伺う。再度尋ねるゴウちゃんに、ようやく答えるタツミ部長。
タツミ部長「ネズミ取りだよ」

自分たちのことを“ネズミ”と自覚してるのか。なのにネズミなら駆除されても致し方ないとは思わないのか。地に墜ちた赤い彗星でさえ、グラスを片手に言い放つだろう。「ネズミだからさ」と。

白ちゃんらは、楽園の住人を発見すると、手にした噴霧器で、白い除草剤か殺虫剤のような毒ガスを吹き付けて“ネズミの駆除”を実行。白ちゃん自身は白いガスマスクを装着している。

ハンカチを口に当てて逃げるタツミ部長とゴウちゃん。しかし、トンネルに入ったところで、向こうから来た6人の白ちゃんに見つかり、囲まれてしまった。レーザーサイトから発せられる赤い光が、二人の額にばっちり照準を合わせていることを示す。ガス噴霧器にレーザーサイトが必要とは思えないが、無駄な装備を付けるのが白ちゃんの趣味なんだろう。

絶体絶命と思われたそのとき、白ちゃんの後ろから、住民が忍び寄って一撃を加えた。ヘルメットの後頭部を鉄パイプで打たれ、昏倒する白ちゃん。ヘルメット被ってる意味ないやん。スネル規格通ってないんちゃうか。レーザーサイト買う金あったら、もっとええヘルメット買えるやろ。金の使い方知らんなあ、白ちゃん。

助けに来たのは、ゴウちゃんを最初に見つけて押さえつけたスキー帽だった。今日もスキー帽を被っていたところを見ると、あの帽子が相当気に入っているらしい。

「どうして放っておいてくれないんだ。あいつらはっ!」

憎々しげに吐き捨てるタツミ部長。どうやら白ちゃんらが来訪したのはこれが初めてではないようだ。“ネズミ取り”が来るのをあらかじめわかってる場所が、なぜ“静かに暮らせる楽園”なのか、理解に苦しむ。

自分たちのねぐらに戻ってきたタツミ部長らが見たのは、壊滅した住居と、累々と横たわる住人たちだった。

殺したまま放っとくんかい。地上に連れて戻る気ぃないんかい。失踪してるもんも行方不明者も区別なく撲滅かい。ネズミ取りといえ、乱暴やなあ、都知事(都知事と決めつけたらあかん)

逆上したスキー帽らは、迫り来る白ちゃん軍団に肉弾戦を挑むが返り討ち。その様子を間近に見ているタツミ部長は言う。「ここは危ない
いや、言われんでもわかってるよ。あんたこそ、今わかったんかい。

タツミ部長「キミは逃げろ」
ゴウちゃん「タツミさんは?」
タツミ部長「なあ、キミ。もし地上に戻ることができたとしてもここでのことは秘密にしておいてくれ」
ゴウちゃん「……でも!」
タツミ部長「我々をそっとしておいてくれ、頼む」

我々って、もう“我”しか残ってませんけど
ゴウちゃん「娘さんにはなんて」

使命を忘れていないゴウちゃん、このまま帰ったのでは立場がない。
タツミ部長「幸せになるように」

そない言うたら、ここでのことを秘密にはしとかれへんやん。「直接会うといて、なんで連れて帰ってくれへんねん」て泣かれるやろ、普通。困った楽園オヤジやなあ、タツミ部長。

安楽マニアのタツミ部長はそれだけ言い残すと白ちゃん軍団に特攻を仕掛けた。鉄パイプを拾い、戦車風の巨大な乗り物の前に仁王立ち。しかし横にいた歩兵白ちゃんにどつかれ、あっさり鉄パイプを落として万事休す。

それを見て思わず助けに飛び出そうとしたゴウちゃんを、突然現れた黒ちゃんが遮った。

それでも助けに行こうとするゴウちゃんを、引きずるようにその場から連れ出す黒ちゃん。明らかに女性でゴウちゃんより体格が劣るのに、力は圧倒的にゴウちゃんを上回るようだ。鍛えてるな、黒ちゃん

逃走径路に立ちふさがる二人の白ちゃんをあっと言う間に投げ飛ばして気絶させた黒ちゃんに導かれ、わりとあっさり外へ出られたゴウちゃん。シャッターの閉まっている地下街を荒い息で走り、ここを登れば地上に出られるという階段の下でへたり込む。

そこへ後ろから黒ずくめの女性が顔を晒して近づき、ゴウちゃんにデジカメを手渡した。楽園で捕まったときに使っていたFUJIのデジカメだ。

黒女「落とし物ですよ」

ゴウちゃんの脳裏に、警備会社で山井に怒られていた女子事務員の顔がフラッシュバック。さすが雑誌記者。よく覚えているものだ。

戻ってきたデジカメからは、記録メディアが抜かれていた。がっかりするゴウちゃん。と、突然今の黒女を追いかけなければと思い立ち、階段を駆け上がるも、時既に遅し。黒女の影はどこにも見あたらなかった。途方に暮れた表情のゴウちゃん。

でも、あの警備会社に行けば、いるんじゃないの?

シーンはその警備会社。案の定、黒女は事務員姿でPCに向かっている。

机の上になにも広げず、背広を着たままぼんやりと座っている山井。シャツの一番上のボタンは留まっているが、ネクタイは曲がっている。

そこへ後ろから近づいた黒女が、無言で山井の肩に手を置いた。目を合わせるがなにも言わず、そのまま席に戻る黒女。

立ち上がった山井は、黒女を一瞥してからふらふらとホワイトボードに向かうと、思い詰めた表情で、行き先に「楽園」と書き記した。にやりと笑う黒女。ちなみに佐々木上司はまだニューヨーク出張中。

それにしてもタツミ部長は「連絡員が誰かわからない」言うとったで。社内で勧誘してたらバレバレやん。

タツミ部長佐野史郎のナレーションがかぶる。

佐野N「あの地下都市を楽園と感じるかどうか、それはあなたの日常が、どれだけ魅力的なのかに懸かっているのかもしれません。この彼の場合は……」

都市ちうより、村程度の規模やったけどな。それに彼=山井の日常が上司に怒られ三昧やったんは、黒女が頼まれた営業事務をきっちりせぇへんかったからちゃうん? 少なくとも映像ではそういう様子しか映されてなかったけどなあ。しかも随分黒女を小バカにしてたで、山井くん。そんな相手に誘われて楽園行き決定? どうも納得いかんな。行ったところでなんもせんと、座して安楽死を待つだけのことやろ。上司に怒られたくらいで行きたなるんか、そんなとこ。まず先に転職してみたらどやねん、山井くん。

今日はエンクミと渡来教授の出番なし。

黒ちゃんこと連絡員は、地下に“気力に欠くる”ホームレスを飼いつつ、地上に電気を売っていたようだ。同時にOLをやっているところを見ると、連絡員だけでは食えないらしい。食べるためではないとすれば、精神的、宗教的な理由で連絡員をやっているのか。都庁(だから決めつけるなと)が駆除に来るのを知っていてもなおあの場所を譲らないとすると、よほど得があるのだろうが、なんのためにヤバイ橋を渡っているのかわからない。
山井を勧誘した黒ちゃんは、楽園行きとボードに書く姿を見て喜んでいた。ひとり勧誘するとポイントでもつくのか。ダメ社員の肩叩きをしてネズミ取りに駆除させるために、地下へ送り込んでるようにも見える。
全体を通してざっくり言うと、都庁とホームレスの闘いであった。
ゴウちゃんはタツミ部長の娘になんと伝えたのだろう。

エンディングテーマは「どこか遠くに行きたくなるとき それでもわたしはここで花を咲かそう いつかはあなたが見つけられるように」とタツミ部長らとは相容れない気持ちを朗々と歌い上げていた。

次回は「綺亞羅」。予告を見る限りでは、ジャズにからめてちょっと高級感を出した、しかし所詮はロリコンネタっぽいが、さてどんなエピソードなのだろう。

※この稿は、2004.9.20に書き起こし、エントリーしたものです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.05.15

ばばあとじじい

ふりかけばばあ」はよいとして、「ふりかけじじい」はいかがなものか。

PICT0939.jpg

いっそ、うどんか蕎麦にキャラクター付けて「夜啼きじじい」。

おあとがよろしいようで……。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

やけに親切な男

赤坂2丁目のコンビニで弁当を買った。

小洒落た白い袋に入った弁当だ。袋は、ちょっと高級なおにぎりが入っているそれと同じ素材でできている。

不透明な袋なので中の様子はわからない。開けるのがちょっと楽しみだ。

レジに持って行ったら男性アルバイト(敢えて名を秘す)が、バーコードをぴっと読み取って値段を告げ、ビニール袋を広げた。

あれ。温めますかって訊ねへんな。中が見えてないからわからんかったけど、ひょっとしてチンしたらまずいもんでも入ってんのんかな。

弁当を袋に半分入れかけて、思い出したように彼が言う。

温めますか?

なんや。温めてええ弁当なんや。ほな、温めてもらおか。

お願いします

破っていいですか?

はい?

問うが早いか、彼はもう白い袋の端に手をかけ、思い切りよくびりりっと破っていた。

その袋は電子レンジ未対応なのか。そうかそうか、レンジのなかで袋が燃え出したり怪しいガスを吹き出したりしたらよろしくないからなあ。ありがとう、気の利く店員さん!

せやけど、中がどんなんなんかは、自分で開けて見たかったなあ。

ぼんやりしながら待っていたら、店長の奥さんがレジに戻ってきた。レジカウンターの上に無造作に置かれている破られた袋の残骸を、ぎょっとした目で見る。

どうしたの?
今、温めてます
出さなくていいのよ、このままで

やっぱりそうなんかい。

あまりにも堂々と破るもんだから!

それが正しいサービスだとばかり!

ごめんなさいね、破っちゃって(ぷっ)

最後に口の先から抜けた、音にならない短い空気が気にならないわけではないが、ま、味には変わりないし、ええか。

今日の知恵:セブン-イレブンの「炭火焼き豚肉ロース弁当」は、そのまま温めても大丈夫。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2004.05.12

第5話「ヒエロニムスの下僕(しもべ)」

テレビ東京の「ウルトラQ dark fantasy」。今回はシリーズ構成が上原正三、脚本は高橋洋、監督は第4話に続いて八木毅。

テレビ局の玄関に殺到する報道陣。マドとエンクミもちゃっかり混ざっている。今日は冒頭からゴウちゃんと呼ばれるマド。どうやらこれからはゴウちゃんで貫き通すようだ。

報道の腕章を着けた二人はスタジオ入口に立つ警備員にパスを見せ、中に入る。そこは報道番組の撮影スタジオ。

番組名はニュースシンフォニー。第2話「らくがき」でミステリーサークルについてのニュースを流していた番組だ。

ニュースシンフォニーの女性キャスター桑原真奈美を、この日の番組開始と同時に消す」という誰かの宣言がネットを介して広まっており、野次馬根性あふれる報道陣のみなさまが集まってきていたのだった。

当の桑原真奈美は、落ち着いた様子で控え室で資料に眼を通しながら、「出演を控えたほうが」と進言する旦那をたしなめていた。不安な様子を隠せない桑原旦那は相当汗をかいているらしく、桑原真奈美はソファから立ち上がると自分の鞄から出したハンカチで桑原旦那の汗を拭いてやる。

こんなばかばかしい騒ぎは終わりにしましょ」と言い残し、桑原真奈美はスタジオに向かう。スタジオ入りする彼女に浴びせられるフラッシュ。呆れ顔の桑原真奈美は、無言で席に就いた。

本番十(とお)秒前。九つ、八、七、六、五秒前、四、三

カウントダウンを最後まで聞かず、桑原旦那がスタジオを離れる。何か悩みでもある風情だ。よろめいて廊下の壁に手を突き、背中をもたれかけさせ、ポケットからハンカチを出して額の汗を拭く。そのハンカチ、さっきのだな。返せよ

そこに何かの気配が画面右側から左側に向かって走り抜ける。ハンカチを持った右手がなにやら閃光を放ち、叫び声を上げてハンカチを落とす旦那。

床に落ちた桑原真奈美のハンカチは、青白い光を発して、消えた。
同時にスタジオ内から複数の女性の甲高い悲鳴。

桑原真奈美は、着席したままジーパン刑事の“なんじゃこりゃあっ!”のポーズを取り、周りから浸食されるように消えていく自分の身体を怯えながら見つめている。

スタートレック:ザ:モーション・ピクチャー(ST:TMP)で、ヴィージャーからブリッジに送り込まれたプローブ(探査機)により、稲妻と共に消えたアイリーアと同じような感じで、叫び声を上げることなく、桑原真奈美は消えた。

噂どおりの出来事に唖然とし、シーンと静まり返るスタジオ。その静寂を破り、マナーモードにさえ設定されていないエンクミの携帯が、場違いな感じで呼び出し音を発する。本番中のスタジオに入るときは配慮しろ、エンクミ

それはメール着信を知らせる音だった。

桑原真奈美は消えた
ヒエロニムスの下僕
     - END -

知ってるってば。

しかし、そのメールを見て、初めて事態を把握したかのように、崩れ落ちるエンクミ。支えるマド改めゴウちゃん。カメラがぐーっと引きながら、呆然と突っ立っているスタッフ一同を映し出しながら、ようやくここでオープニングテーマが流れる。

佐野史郎のナレーションによれば、ヒエロニムスとは20世紀のアメリカ合衆国に実在した研究者だそうだ。

佐野N「ヒエロニムス。この名前をみなさんはご存じないでしょうか」

知らん。

知らんがGoogleったらこんな解説があったのでご参考までに。

さて、動揺するエンクミをスタジオの外に連れ出したゴウちゃん。ようやく周囲もばたばたし始めた。ゴウちゃんの視線の先には、桑原よろめき旦那。よろめきつつ建物の外へまろび出て行く。エンクミと目配せをしてよろめき旦那を追うゴウちゃん。腰の抜けたエンクミは動けず

駐車場へたどり着いたよろめき旦那は、愛車ベンツのドアを右手で開けようとして悲鳴を上げる。さっき閃光を発したハンカチによるものだろう、人差し指から小指までの四指の付け根の皮膚がただれたような怪我になっている。指先はなんともないようだ。そんなところにしかあのハンカチは触れていなかったのか?

動揺するよろめき旦那の耳に、どこからともなく桑原真奈美の声が。

桑原真奈美「助けて」

きょろきょろ辺りを見回すよろめきに、ゴウちゃんが追いついた。
ゴウちゃん「ちょっとあんた! なんで逃げるんだ。あんたなにか知ってんな!?」

そういうお前はよろめきが消えた女の旦那だと知っているのか? 最初からよろしくない人物と決めつけたかのように、「あんた」扱いしているのもどうか。

よろめきは黙ってベンツに乗り込む、自分のマンションに戻る。ロビーに入ると、ラフな服装をした小太り眼鏡の中年男性が待っていた。右手に紙袋をぶらさげている。

紙袋の男「あの、米田さんですよね?」

え、このよろめき、旦那じゃないの? 米田さん?

太田と名乗る紙袋の男は「ボクも下僕(しもべ)のひとりなんですよ。米田さんと同じです」と話しかけ、米田の関心を買うことに成功。手にした紙袋は米田へ届けるよう頼まれた物だそうだ。

ちゃっかりと米田の部屋に上がり込んだ太田は、テーブルの上にある、20年前のビデオデッキくらいの大きさの箱を撫でながら、テレビを見ていたが今だに信じられないとこぼす。その箱が桑原真奈美を消した装置らしい。

太田をあまり歓迎していない風の米田に、桑原真奈美の波動を持つ品が残っていないかどうか確認してこいと言われていると言う。誰に言われているのか言わない。

写真となにを渡したのか、と問われた米田は、写真は渡していないと答える。合点がいった太田は笑い出した。「そうでしたねぇ、いつも奥さんテレビ出てますもんね

なんだ、やっぱり旦那じゃないか、よろめき。夫婦別姓か。なるほど職場ではよくあることだ。

改めて問われたよろめきは、「髪の毛だ」と答えた。

一方、どこかの大学の物理学部研究棟D館。出た。渡来教授の研究室がある建物だ。

ヒエロニムスについて尋ねるゴウちゃんに、渡来は説明する。

渡来「一種の害虫駆除装置だ」

1948年にアメリカ合衆国の特許2482773を取っている由緒正しい装置らしい。500キロ離れた農場の桜の木から毛虫を駆除した実績を持つ。駆除に使用したのは、装置と、桜の木の写真と、毛虫の死骸。着手から数日で、毛虫は一匹残らず消えたという。

消えた、と過去形で言われたにもかかわらず、「そんなことが可能なんですか?」と、まるでそのようなことはまだ起きていないかのような口ぶりで尋ねるゴウちゃん。ひっそりと横に侍るエンクミは黙ったまま。「わからない」と答える渡来。いや、あんたが今そういうことがあった、と言うたんちゃうんか。

渡来「写真と、その有機体の一部から、有機体固有の波動を読み取る。どうもそういうことらしい」

ならば、死んだ毛虫の波動は読み取れても、ほかの毛虫の波動は読み取れないのではないのか。そこにいる同種の生物の波動も共通なのか? スタジオにいた人間が全部消えずに桑原真奈美だけが消え、桜についた毛虫は種族ごと消えたのはなぜだ。
エンクミ「波動?」

ようやく口きいたと思ったらツッコミもせずにそれかい。

渡来は、人間の一部、つまり髪の毛や爪などと、写真が揃えば、毛虫同様のことが起こせるのではないかと、ヒエロニムス本人が一番恐れていたと言う。

まるで呪いね」とつぶやくエンクミ。

波動を読み取るのは機械の役目ではなく、オペレータの能力に左右されるのだと渡来は言う。発明者のヒエロニムスにはそれができた。ならば、ほかにもできる奴がいるのだろうとゴウちゃんが指摘する。

渡来「ここが重要なんだが、オペレータの能力を決めるのは、この機械を信じられるかどうかなんだ。これからは、信じる連中が、大勢現れる」

デモンストレーションの場だったわけだ、ニュースシンフォニーは。

マンションの自室で黄昏れるよろめき旦那。
脳裏にこだまする太田の台詞「彼は米田さんにもできるはずだって言うんですよ。ほかにも消したい奴がいれば、試してみればいいって」に反応して、机の上の機械を叩き壊そうとするが、「ボクも米田さんも写真となにか身体の一部を送っちゃってるわけでしょ、彼に。言うこと聞くしかないんですよ」という台詞を思い出して、意気消沈。振り上げた機械を下ろして遠い目。
“彼”が誰だか知らないが、弱味を握られているのは間違いないようだ。

突然、何かの気配を感じたのか、「真奈美! 真奈美! どこにいるんだ!」と叫びながら部屋を走り回るよろめき。
ちょっとお尋ねするが、あなた自らが“彼”とやらに桑原真奈美の試料を渡して消去を依頼したのではないのか? 自分で頼んでおいてなぜ探す。逆に、真奈美にいて欲しいならなぜ頼む。おかしな人だな、よろめきは

画面右から左へ、しっかりと地に足をつけて静かに横切る桑原真奈美。実像か。よろめきの見た幻想か。

真奈美が入った先は寝室。ツインルームのようになっていて、入口に近いほうのベッドに真奈美のものと思われる服が置いてある。あれ? こないだの太田は、桑原真奈美の波動を持つ品が残っていないことを確認しに来たのではないのか。残っていてもただ「残ってるなあ」と確認しただけで帰ったのか? なにしに来たんだ太田。

ハンカチは消えたのにベッドの枕やシーツが残っているのも解せない。普段使っていたからといって、必ずしも波動が移るわけではないのか。はっ。まさかその女物のスーツ、実はよろめきの服なんじゃないだろうな。そういう趣味か、よろめき。

寝室に真奈美の姿はない。

鏡の前に置かれた写真立てが倒れている。拾い上げるよろめき。それは澄ましたよろめきと真奈美のツーショット写真だった。

すると、突然、写真の中の真奈美が金切り声で叫び出した。大いにびびるよろめき。

一方ニュースシンフォニーのスタジオではスタッフが米田を探していた。そのスタジオには、なぜか小太り眼鏡の太田がデジタルビデオを手に堂々と入り込んでいた。誰かの姿を収めているのだろうか。

テレビ局の駐車場に滑り込んできたよろめき米田のベンツを待っていたかのように、ゴウちゃん、エンクミ、そして渡来教授が詰め寄る。

ゴウちゃん「米田さん! あんたが頼んだんだろ、ヒエロニムスの下僕(しもべ)に。教えてくれ、そいつ今どこにいるんだ!」

その様子を木の陰からビデオで狙う太田。

ゴウちゃんの質問には答えず、よろめきはなにかに憑かれたように「真奈美を取り戻すんだ……真奈美のビデオがあれば、真奈美の波動がわかれば」とつぶやくと、三人とは一度も視線を合わせないまま足早に立ち去る。

混乱の続くニュースシンフォニーの現場によろめきがよろめきつつ登場。真っ直ぐディレクターらしき男に突進すると、真奈美のビデオをなんでもいいから出せと激しく懇願。すると、女性スタッフのひとりが、モニタ画像を見ながら叫び声を上げる。

モニタには真奈美が叫んでいる顔のアップが映っている。それは今よろめきの懇願に応じて出したビデオではないようだ。突然映し出されたのでスタッフが叫んだのだろう。ちょっとわかりにくいが。

真奈美の叫び声が聞こえているのか、両耳を押さえながら「許してくれ……」と謝るよろめき。この時点で身柄拘束だろう。

モニタに映った不思議な映像よりも、目の前でへたり込んだよろめきのほうがもっと不思議なのか、特にびびる様子もなくぽかーんとよろめきを眺めるスタッフ一同。

そこにゴウちゃん一同が挨拶もせず入ってくる。最後尾の渡来も、きっちり首から通行許可証を下げているあたり用意がいい。

モニタに目をやった渡来教授は、ひと目で「彼女は生きてるんだ。映像だけが向こうの世界とつながっている」と看破。“向こうの世界”ってなんだ。初めて出てきたぞ、その話。渡来の台詞を素直に受けて「向こうの世界で、ずっと叫び続けて……」と同調するエンクミ。

「助けて……あなた、助けて……た、す、け、て……」

叫んでませんけど。囁いてますけど。

モニタの中の真奈美は再び消えた。局内に貼ってあるニュースシンフォニーのポスターに刷り込まれた真奈美も消えた。元々そこに刷られていなかったかのような消えっぷり。

一連の様子から、明らかによろめきがヨメさん消失に一役買ってるに違いないという空気がスタッフ内に流れている。

ゴウちゃんに近づいたよろめきは、自分の名刺をゴウちゃんに握らせると「俺の家に来てくれ。見せるものがある。それから警察を呼んでくれ」と頼み、部屋を出て行った。その名刺には「INB 報道局 ニュースシンフォニー プロデューサー 米田なんとか」と書かれているから、仕事の名刺なんじゃないのか。自宅住所を仕事の名刺に刷り込むのか、テレビマンは。それに、なぜ一緒に連れて帰らないのか。ゴウちゃんも、待ってとか一緒に行きますとかなぜ言わぬ。

駐車場に停めたJEEPに向かう三人の前に、“彼”からの伝言を持って太田が現れる。

太田「この件に関しては深く立ち入らないほうがいいって、“彼”が言うんです。一応、映像はもう“彼”に送ったんです。“彼”なら、ビデオだけでも、できるんですよ(ちょっと自慢気)」
ゴウちゃん「俺たち撮ったのか!?」
太田「すいません。ほんとに、ご、ごめんなさい……渡来博士ですよね? そ、尊敬してます! うひゃはああああっ」

言いたいだけ言って走り去る太田。呆然と見送る一同。自分が消されるかもと、ショックを隠せないエンクミ。

刑事らしき人を二人連れてよろめきの部屋を訪れるゴウちゃん。
よろめきは機械の前で、真奈美の姿が消えたツーショット写真に自分の血液を垂らしつつなにやら儀式の真っ最中。

ゴウちゃんらが見守るなか、よろめきは機械のスイッチを入れる。意外と大きな作動音。なにかモーターが回るような音がしている。ヒエロニムスの装置を実演して見せるよろめきは、「真奈美、もうすぐそばに行くよぉ」と言い残し、消えた。

結構大声でぎゃーぎゃー叫びながら消えたが、消えるのは痛いのか。苦しいのか。桑原真奈美は黙って消えたぞ。性格の問題か?

残されたツーショット写真からは、よろめきの姿が消えていた。真奈美のときよりも消えるのが早いな。なぜだ。どういう違いがあるのだ。

謎の機械をしげしげと眺める刑事を尻目に、ゴウちゃんは起動しっぱなしのノートパソコンを見つけ、勝手に触り始める。それはヒエロニムスの下僕を扱うウェブサイトだった。
警察はウェブサイトの主催者を突き止めて出頭させ、どこぞの警察署の殺風景な一室で取り調べを開始。

取り調べられているのは太田。太田はいつも同じ服を着ている。あんたオバQか

太田の部屋から名簿が見つかり、そこには桑原真奈美以外の名前も複数書かれていたらしい。彼らは全員行方不明になっているという。

取り調べ室。無表情な若い刑事と同じく無表情な年配の刑事。

太田「もう、調書は、取り終わったんですよね?」
年配刑事「これはさ。刑事の経験から言えることなんだけどさ。やっぱり、人を殺しちゃいけない理由ってあると思うんだよねぇ」

机を指の関節でこつこつと叩く年配刑事。ゆっくりとしたリズムで途切れることなく叩き続ける。
太田「だから! ボクは殺しちゃいませんっ! 彼女は生きています」
年配刑事「へっ。そうじゃなくて。なんで殺しちゃいけないかって言うと、一度殺すと歯止めが効かなくなるんだよねぇ。やってはいけないことがなくなるっていう……」
太田「……ああ……なるほどね……ボクは違いますからっ!」

刑事は二人とも無表情なまま黙って答えない。

突然若い刑事がブラインドを上げ、窓を開けた。異様な気配を感じて立ち上がった太田は、ちょっと、ちょっと、と叫びながら逃げようとする。後ろから羽交い締めにする若い刑事。席を立った年配刑事も手伝って、太田を開いた窓から外へ押しだそうとする。

どうやら3~4階の高さがあるようだ。

落とされたら大変とばかり、口を割ります割りますと叫ぶ太田。

「俺も、ほんとは、下僕(しもべ)のひとりなんだよっ、ああっ、言われたとおりやらないと、俺が、消されるっ、ああっ、助けてっ、助けけてくれぇ~っ」

聞く耳持たぬ刑事らは、そのまま太田を押し出した。

ああ、歯止めが効かなくなってたのは自分たちや、ちうことか。それで何人目なん?

ちょうど警察署から帰ろうと車の横まで来たゴウちゃんとエンクミは、遠くで「どすっ」と響いた鈍い音を聞く。

音のしたほうへ駆け寄ると、地面に倒れた太田の姿が。彼らの目の前で、太田は閃光を発し、消えた。

ゴウちゃんとエンクミが建物を見上げた先には、窓から顔を出す年配刑事と若い刑事の姿があった。しかしその人相だけがなぜかぼんやりとしてはっきりしない。ここで佐野史郎がナレーションを入れる。

「彼らもまた、なにかの下僕(しもべ)だったのかもしれません」

はい? なんですか? 誰がそんなほうへ話を持ってけ言うてんねん。22分も流してきて、残り時間ないところで新しい団体さん紹介してどうするねん。話しまとまらんやないか。
「わたしたちも明日、なんの前触れもなくこの世から消されるかもしれないのです」

いやだから、それは“彼”の団体さんやろ。それと対立するらしい顔なし年配刑事が属するライバル団体は関係ないやろ?
「そして生きながら送り込まれた世界では、人々は無限の闇の中で、永遠に悲鳴を上げ続けているのです」

佐野、聞け! 人の話!
大体なんで向こうの世界の詳細を知っとんねん。ここまで“無限の闇”なんて一度も出てきてないぞ?

そして明かされる“向こうの世界”のイメージ映像。桑原真奈美をはじめ行方知れずになったみなさんが、特になにもない空間を漂っている。雲のようなガスが見えるので、空気のある無重力空間なのか。狭い画角の中で割と混んでいるので、一度ある方向に動き出したら永遠にそのまま行ってしまう宇宙空間とは違い、比較的近いところに見えない壁があり、跳ね返って戻ってくるのだろう。

人間と一緒に、細かいなにかが浮いている。ヒエロニムスがかつて請け負って退治した毛虫様ご一行だ。長生きだな。それとも死骸が腐敗していないだけか。いずれにせよ、そんなものが周りにうようよと浮いていたら、“永遠に悲鳴を上げ続け”たくもなるというものだ

望んで“向こうの世界”に行ったよろめきだったが、浮きながら叫んでいるだけで、ちっとも真奈美の役には立っていないし、助けにもなっていない。ゴウちゃん相手につぶやいていたように、真奈美の波動を調べて連れ戻す方策を考えたほうがよかったのではないか。そもそも真奈美を消す依頼をした初めから、自ら消えることを選んだ最後まで、よろめきの行動は意味不明だ。ただのおかしな人にしか見えず、同情も感情移入もできない。

あれ? 愚痴ってる間にエピソードが終わってしまった。

今回は渡来教授がそれほど出しゃばらなかったにもかかわらず、駄作だった。

次回、「楽園行き」。ナレーションだけで我慢できなくなった佐野史郎がゲストとして登場する。

※この稿は、2004.9.18に書き起こし、エントリーしたものです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.05.11

いいかげんにして!

ちょっと必要に迫られて、無料翻訳ウェブのお世話になっていたら、こんなん出ました。

いいかげんにして!

Make it random!


……いいかげんにして。

タダやのに文句言いないな>わたい

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.05.09

日本全国絵はがきの旅 第三夜(最終話)

TVKの「水曜どうでしょうリターンズ」。間に1本別の企画を挟んだが、今日(えーと、この今日というのは4月のいつだっけ、3週間ほど前ですが)は連続モノに復帰。復帰するなり、絵はがきの旅は最終話。

まずは藤村Dのナレーションで、これまでのおさらい。企画の主旨とこれまでの経緯、そして現状を説明し、「ここ金沢で、意外な展開を迎えることになる」と結ばれる。

金沢市長町の武家屋敷前で、次の“美しい風景”を選ぶミスター。

■第4の選択

今度こそ有名どころを。幕の内の鮭を掴んでくださいっ」と願う大泉さんの期待もむなしく、「ここ!」とミスターが差し出した絵はがきに、ディレクター陣は沈黙で答える。

50枚弱の厳選された絵はがきの中から、ダメ人間を自称するミスターが引き当てたのは、今いる武家屋敷とよく似た、どこかの古い町並み。

どこだい……
戻ることに……なります

絵はがきの正体を知っている藤村Dは冷たく言う。

愛媛でしょこれ

苦笑しながらも、すっかり意気消沈するミスターと大泉さん。

いやいやいやいやだから、見たよこういうトコはオレ。なんでそういう、すっごい似たようなとこまた行くの? あんたそんっなに武家屋敷好きか

反論もできず、ただただ笑ってこの場を凌ぐしかないミスター。

愛媛~? めんどくせぇなぁ

思わず声を荒らげる藤村D。問題の“美しい風景”は愛媛県の内子、かなり内陸部だ。もともと四国は、外縁部はもとより内陸部はなおさら交通の便が悪く、公共交通機関での移動に向かない土地だ。バスなんて10年待ったって来やしない(たまに来るけど)。当然車で移動しなければならない。

早速四国への移動を、自ら時刻表を開いてチェックするミスター。多少責任を感じているようだ。15時小松発、16時高松着の便があるという。

四国って、呼ぶ

水曜どうでしょうが始まって以来、確かに四国という土地は番組によく出てくる。ミスターの漏らしたひと言を合図に、藤村Dが番組と四国との因縁を列挙。

・「サイコロの旅第一弾(1996年10月)」で最初に出た目が愛媛県松山
・「サイコロの旅2(1996年12月)」では四国と九州を行ったり来たりする“魔の蟻地獄”にハマったが、きっかけとなる深夜バスのスタート地点が高知
・「オーストラリア大陸縦断(1997年1月)」では、オーストラリア大陸と四国では、形は似ているが四国は小っちぇえ、小っちぇえと小バカにした
・今朝訪れたのは、四国八十八箇所巡りの第一番札所「霊山寺」

大泉さんがぽつりと言う。

でもやっぱある意味で、その笠捨てないでよかったな

笠とは、お遍路さん用の白装束一式のことだ。

これじゃないの? これが呼んだんじゃないの?

自分が絵はがきを引いたことを棚に上げて、さりげなく装束のせいにしようと目論むミスター。それにすっかり乗ってしまった藤村Dと大泉さんは、「88個あるんだよ、お寺は……行けってことだよ」「オレたちはとりあえず始めちゃったんだよ、危険なゲームを」「そぉだよ大泉くん!」と盛り上がる。そして藤村Dのナレーション。

ここへきて、我々どうでしょう班全員が事態の深刻さに気付いた。我々は、冗談半分でうっかり四国の聖域に足を踏み入れ、霊場八十八箇所第一番札所の絵はがきを引いた。そして、恐ろしいことに巡礼の衣装まで購入し、本格的に巡礼の旅を、始めていたのである。知らぬ間に運命の歯車は、回り出していたのだ。

そうなのか? 始めていたのか? しかしもはやどうでしょう班は始めちゃった感を拭えない様子で、すっかりこの説を信じ切っている。

こりゃ霊山寺は危険なものやっちゃったなぁ

ご丁寧にも2万円弱する装束一式まで買い込んで、えらいことを始めてしまったと大泉さんと藤村Dが嘆いていると、時刻表を熱心に読んでいたミスターが顔を上げ、さっきの飛行機だが日曜日は運休で、今日は飛んでいないと言いだした。飛行機で一気に飛ぶことはできない。また陸伝いに四国へ向かうしかないのだ。遠いぞ、金沢から四国は。

いやあやっぱ、我々の試練ってものは始まっているわけですよ。楽して来るんじゃない……と。空飛ぶな、と

落ち着いて内子までの行程を確かめると、おそよ夜10時頃に愛媛着という計算だ。

夜10時だから、いずれにしてもまた、明日の朝(撮影)っていうことになるんであれば

なにか言いだしたぞ、という警戒の目で藤村Dを見やる大泉さん。

札所を多少……

藤村Dが濁した語尾を読み取って、かろうじて笑いで答える大泉さんとミスター。

車があれば札所を潰して行けるから、内子に行くまでにちゃんと回ってお遍路を済ませておけば、もう二度と四国に呼ばれることもないのではないかと藤村Dは提案する。それを聞きながら静かに苦笑するミスター、大笑いしている大泉さん。

全然、企画の意図違ってきてるだろ。四国、回ってどうすんだよぉ
いやいや。またお前、行くことになるぞ。どこになにやっても。サイコロやっても。もしかしたら212市町村でも出る可能性あるぞ。一晩あれば回れるよ、随分

藤村D、よほど四国にはもう行きたくないのか、必死の説得。時刻表を見ながらも、だんだんその気になってきたらしいミスターはふんふんと頷いている。

なに頷いてんのあんた。ねぇ、あんた。あんたなに頷き出してんの?
それしかないでしょ
なにがそれしかないでしょ……
ボクにはもう、みんなのこの四国四国四四国っていう言葉が地獄に聞こえるもん
あ、なるほど。福岡の不幸に続いて、四国は地獄と

意気投合するミスターと藤村Dに切れた大泉さん、ミスターに食ってかかる。

あんたひとりで行きなさいよ、あんたが出したんだから。あんただよ憑いてんのはっ
そうだ、2枚ともミスターだよ、2枚とも。そうだよ

急に大泉派に回った藤村D。ちょっと気を強く持った大泉さん、はっきりと宣言する。

いっこもやりたくないね、そんなこと

しかし藤村Dは大泉さんの味方に付いたわけではなかった。

いいのかお前。……お前住民票もしかしたら四国に移ってるかもしれないぞ

大泉さん、藤村D相手にボヤキモードへ突入。

いろいろ見えるっつったろぉ? なんで四国とか出しちゃうの。バカみたいに取り憑かれたってんで霊場回るってか。あんたひとりで行きなさいよそんなもの。なぁにが『うんうん』だよ。『それしかないでしょう』って
知らないよほんとに
(鼻で笑う)
彼は四国行くからいいけど、キミは地獄行くぞ
絶対、地獄にキミが行くよ。どこ回ろうが。いいよあんた、八十八箇所回って地獄行きなよ……あんたなんか。いいじゃない。『八十八箇所回ってきました』『はい、地獄に行ってください』って、閻魔さんあたりに言われてさ。『なんでだよぉお』って喧嘩でもしなさいよ

結局大泉さんはボヤくだけボヤいたものの番組方針を覆すことはできず、一行は四国愛媛県、内子の家並みを目指して移動を開始。

金沢13時50分発スーパー雷鳥26号で新大阪16時31分着。同駅16時43分発の新幹線ひかり385号で岡山に17時37分岡山着。岡山でレンタカーを借りて瀬戸大橋から四国へ入り、霊場八十八箇所をぐるりと回って内子を目指すという行程だ。

場面は車中、瀬戸大橋手前の瀬戸中央道早島I.C.あたりに移る。四国に入ってからの目標は、徳島県にある第二番札所、極楽寺。

回っていいんですね?
回っていいもなにも……
大丈夫ですね?
なにが大丈夫なの
ああ、あのーなんか、朦朧として、そういうことを言ってるんじゃないですね?
違う、誰が朦朧としてるの?

大泉さんの額に左手の平を当てるミスター。実は大泉さん、38度の熱を出しているらしい。

ただもうあの、言っても始まらないチームだってことはわかってるから。もうね、ボクはあの、四国で死んでやろうと思って
あははははは
驚くぞぉキミたち
あははっ
『すっかり寝たねぇ』なんて……何番目かでボクはそのまま、起き上がんないで死んでやるからなぁっ
あはははっ
痛ぁいVにしてやんだ
あははっ、それは置きみやげ
そうだよっ、ボクにできる唯一の抵抗だよ。死んでやんだよっ、キミたちの前でっ
あっはははははっ
見たいなぁ……死んで!
……ひどいことを言うよぉ、キミたちはぁ。ゲラッゲラッゲラッゲラッ笑ってぇ。終いには『死んで』か
キミらだってボクが甘いものでどれほど苦労してるか
そぉそぉ

そうそうって、あんただけどっちの「キミら」にも入ってるんだよ、藤村D。

ここでミスターが移動中に水上温泉の生大福を7つ平らげさせられたうえに、大泉さんから「誰がひとりで食べろっつったのぉ?」と怒られてムッとしている映像が挿入される。

ボクはね、あれ(甘いもの責め)だと思うよ。あれがぁ、あの天罰だと思うよ、四国は
あはははははっ
なんでぇ!?
だって、あれを食べたあとだもん! あれでボクを苛めるから!
あなたはなんだ、うらみ魔太郎
ミスター苛めるとなんだい、四国に連れてかれるのかい
そうそう
で、八十八箇所回らされるのかい
そうそうそう
すげぇ怖ぇなあ!

今日のミスターは饒舌だ。得意のダジャレにも熱が入っている。

四国四国地獄。四国、死の国と書いて死国。内子なんてとこ行ったら内子ろされちゃうよ

大泉さんも呆れるほどの勢いでダジャレを連発し、車内はなんとなくなごやかな雰囲気に。

みんな笑ってるけど、ほんとは行きたくないんだよね

勢いに乗って本音を吐露するミスター。核心を突かれてどうでしょう班爆笑。

Vではずっとこうしてトークをしているかのように編集しているが、実際のところ、ずいぶんとみんなふさぎ込みながら移動してきていたらしい。

ボクなんか途中からあれだもん、列車から見える、あのー、果物の柿の、木が何本あるか数えてたもん。京都まで50本あったら今日は幸せ!とか心のなかでつぶやきながら

大ウケに受ける大泉さんと藤村D。声は聞こえないが、きっとうれしーにもウケているのだろう。何本くらいまで数えたのか尋ねる藤村Dに、74本と答えるミスター。「めちゃめちゃ幸せだぁ」と大泉さんにうらやましがられる。

だからきっといいことあるんだろうなあって
あなた自体、とっても幸せな男だよ。そんなことしてんだから。幸せな人だよあなたは

列車の車窓から木を数えているミスターの証拠映像が挟まれる。

そんなに柿数えてるとは思わなかったな。言ってくれたら殴ってでも止めたのに。ふぁーっ、ミスターッ、戻っといでこっちにぃって

そうこうしている間に瀬戸大橋に突入。え、まだ瀬戸大橋渡ってなかったのか。今日が最終話なのに、もう番組開始から15分回ってるぞ。

瀬戸大橋の全景をカメラに収めて視聴者にもご覧いただこうと、橋の途中にあるSAに入る一行。暗いので、映るかどうかを心配する一行だが、「うちの嬉野カメラマンで大丈夫かな」と言う大泉さんに対して嬉野D「オレの、オレのせいじゃないからな。機械自体が映んないんだよ。なに言ってんの」と珍しく発声。

SAに着いて撮影開始。

撮ってるけど、映ってんの?
あー……こらなんだかわかんないよぉ……おお大泉くん、覗きながら説明しなさいよっ

振られた大泉さん、カメラを渡されて撮影。

あのね、こう、この(ファインダーの)中で見る限りね、こらあれだね、町の祭りだね……(歌う)ちゃーんこちゃんこちゃんこ……かなり祭りの
それ、うちの近所でやってる、盆踊りじゃない。うるさいんだよ、あれ
(歌う)手拍子 揃えて ちゃちゃーんこちゃん

SAの画は以上。タレントは一度も映らず、ただしんみりした夜景のみ。
車は高松西I.C.から四国に入る。この時点で既に22時を回っている。

ミスターと大泉さんは車中でお遍路さんの衣装に着替えてスタンバイ。ミスターから、「霊場を巡ってお参りしていこうというのに変わりましたんで」と宣言がある。これを受けて、藤村Dが巡礼についてナレーションで説明。

ここで説明しておこう。四国八十八箇所巡りとは、大いなる悲願を抱いたものが、大願成就のため、巡礼に身をやつし、四国全土の札所を巡る仏道修行のことである。回るべき、八十八の札所は、徳島県の鳴門から高知県、愛媛県を経て香川県の長尾まで、四国を時計回りに一周する。若者の健脚で40日以上を費やす、全行程1450キロの、堂々たる道のりである。

回っていくよ
回っていきます
そらぁ確かに、四国のカードは全部ボクが引いた
そぉだよ
絵はがきは。だからほんとのことを言えば、みんなの心の中には、呪われてんのはミスターだけだろうと、思ってるかもしれないが
あははははっ
それは口に出すのはやめようよ
やめようやめよう。だけどちょっと、付き合ってもらうよ
そうですね、内心はおまえだけ行け思ってるかもしれないけども、そういうことは言わないで、みんなで行きましょうよぉ。あーこれはもう、言うなよ藤村くん!
わかりました
あとはもう言うんじゃないよ
ひとつだけ言わしてもらうとすれば、今ボクらが向かっているのは徳島なんです。愛媛は逆なんです。これから70キロ逆方向に徳島まで行かなきゃいけないんです
今、夜の10時です
10時だよぉ、もう。具合が悪いって言ってるでしょぉボクはぁ
大泉くんが今、薬を飲んだのも見てます
そうでしょ、解熱剤をボクぁ飲んだでしょ。解熱剤を飲んだやつのする格好かいこれが
だから本音でものを言わないっ
ごめんごめん、ごめんごめん、ともすればすぐ言いたくなっちゃうよ、うん
回るんですもんね!
回りますよぉ
回らせないとヤバイ奴がひとりいるから
そうだね
……回ってきなさいよっ

結局は本音を言ってしまう大泉さん。自分の白装束も気になるらしく、だんご屋みたいに見えないかいと不安顔。四国では普通だからとなだめる藤村D。やがて、嬉野Dから聞いたという巡礼の“逆打ち”について説明を始める。一度八十八箇所回りきったお遍路さんが、八十八番札所から八十七番へと逆戻りし、また一番札所を目指して巡礼するという。かなり強い願いを持つ人が行なうらしい。映画「死国」」では、死んだ娘の歳の数だけ逆打ちして生き返えらせていたあれだ。感心するミスター。

じゃあ、ボクたちも3回転くらいしよう!
なんでそんなスケートみたいなことしなきゃいけないの
スケート
なんでこんなとこ3回転もしなきゃいけないの。冗談じゃないよ。1回だ、1回。……1回だってびっくりするくらいだよ。夜中10時から八十八箇所回ろうなんて、そんな固い決意したくらいでしょぉ。それでもびっくりするくらいだよ
難しいかもしれないねぇ。時間との戦いだから
戦いだ。どこに3回転する時間があるのミスター。バカなことを言ってるんじゃないよ。許してくれるよ、1回回れば

ミスターを諫めた大泉さんだが、本音を抑えることはできず、またも車中でボヤキモード。

なんでこんなことになってんだ。こんな服着せられて……おっかねぇとか言いながら、霊場巡りしなきゃいけねぇんだ……

ボヤく大泉さんを乗せたレンタカーは、23時45分、徳島県にある第二番札所、極楽寺に到着。続いて第三番札所、金泉寺。第四番札所、大日寺。粛々と拝む。

そして犬に吠えられながらついに辿り着いた先は、第八十八番札所、大窪寺。ちょうど夜の1時。八十八箇所をおよそ3時間で回り終えたと豪語する藤村Dとミスターは、寺ひとつあたり、2分ぐらいだったねぇと振り返る。4つめから要領を得て早くなったと、淡々と語る大泉さん。

近いですもんね……これ(ひとさし指とおや指で2センチくらいの幅を示して見せる)くらいですもんね、四番霊場からは……こらねぇ、盲点……
これでもう、なんの気兼ねもなく、内子……
内子だ。今から愛媛行くんだ……
また戻ることになります
あっ、1回行ったけどね

そして翌朝6時48分。愛媛県内子町に到着。
徹夜で運転して“いつもよりひとまわり小さくなって、アラスカで大泉さんが描いたトランプみたいになった”という藤村Dに対し、睡眠充分のタレント陣は元気いっぱい、早速絵はがきの場所を特定しに歩き始めた。

やっとなんの企画で旅をしていたのかを、視聴者の我々も思い出す瞬間だ。

あっと言う間に発見。

愛媛県
内子町の町並

カメラのレンズに息を吹き付けて曇らせ、走り去っていく大泉さん。靄の向こうからぼんやりと歩いてきているミスターはほとんど見えなくなった。

この映像を最後に、時間切れ、終了。

さて次回予告は「東北ツアー」が流れるが、テロップには「クイズ! 試験に出るどうでしょう」を放映と出た。「本日のどうでしょうリターンズ(TVK)は絵はがきの旅の第3夜です。(blog「水曜どうでしょう を東京でみる」)によれば、放映済みなのだそうだ。「試験に出る~」はわたいの好きな企画だ。楽しみである。

| | コメント (4) | トラックバック (1)

2004.05.08

大泉さんのうたばん

2004年2月13日に放映された「大泉さんのミュージックステーション」に続き、TBS「うたばん」に大泉さんが登場。

さて大泉さん、これを機会にほかの歌番組からもお座敷がかかるだろうか。いい歌だ。ぜひ、かかってほしい。

と書いたが、ほんとにお座敷がかかったのは喜ばしい限りだ。

「突然ですがこの人をご存じですか? 北海道の大スター、大泉洋」のナレーションで、番組開始前の予告が流れる。機動戦士ガンダム(ファースト)の戦闘場面に用いられるBGMにのせて「やっぱりうたばん出なきゃよかったよ」「やっぱり髪のこと言われた」とボヤく大泉さん。今回は録画放送なので、かなりテンパっていた前回よりも余裕のあるトークが期待される。大泉母の「あんまりいじめられないうちに、さっさと帰っといで」という声で番宣終了。

前座を勤めさせられたのは杉田かおる。別撮りなので大泉さんとからむ場面はない。
番組後半が、大泉 洋 with STARDUST REVUEの持ち時間だ。

中居「さあそれではですね、えー、トークの本編に入る前にこちらのVTRをご覧ください、どうぞ」

ナレーション(以下N)「すべては一曲のラブソングから始まった……」
《テロップ》
すべては一曲のラブソングから始まった…

N「あるラジオ番組の企画から生まれたこの曲、『本日のスープ』。北海道限定、インディーズ発売されたシングルが、たちまち話題となり、この春、全国リリース。オリコンシングルチャート10位にランクインするなど、その勢いは、とどまることを知らない」
《テロップ》
北海道限定インディーズシングルとして発売
オリコンチャート10位ランクインの快挙!!

N「しかし、素朴な疑問。この(ブロマイド風の写真が大写し)大泉洋って一体誰なんだ?」
《テロップ》
大泉洋って一体誰なんだ?

画面右上にP in Pで映った大泉さん、自分の写真を見て早くも爆笑。四国八十八箇所巡礼でよく見せていたマルコメ風に右手人差し指で鼻の下をこすっている。あれは演技ではなく本人の癖だったのか。それとも巡礼し過ぎてこの仕草が癖になってしまったのか。

N「実はこの男、北海道では知らない人がいないほどの、とても有名なタレント」
《テロップ》
北海道で知らない人がいない程 有名タレント

札幌大通り公園での撮影風景、ラジオの収録風景(大泉「サンサンサンデー、行ってみよう!」)、「大泉洋はこれからどこへ行くのですか?」の質問に答えて「どこ行くんでしょうかねぇ?」といった映像が流れ、P in Pの大泉さんが目を丸くしながら自分の姿に見入ったり、要所要所でウケてみたりしている。

N「週9本のレギュラー番組をこなし、テレビで彼の姿を見ない日がない、と言われるほどの人気ぶりである」
《テロップ》
週9本のレギュラー番組をこなし 「テレビで彼の姿を見ない日はない」と言われる程

派手なシャツでDVDビデオカメラの宣伝を撮影している大泉さん、じゃらんのCFで「新撰組であーる! 毎月新鮮じゃらん!」と演技を見せる大泉さんの映像。

N「その活躍ぶりは多方面にわたり、ローカルCM界では、“CM王”の名を恣に」
《テロップ》
ローカルCM界では「CM王」の名を欲しいままに…

『千と千尋の神隠し』で番台蛙の声をアテる大泉さんの映像。

N「宮崎駿アニメ、『千と千尋の神隠し』では、番台蛙として声優デビュー」
番台蛙「こら、待て、おい! ……いえ、なんでもありません」
《テロップ》
「番台蛙」として声優デビュー

チームナックスの役者として舞台に立つ大泉さん。

N「映画や舞台など、役者としても活躍」
《テロップ》
映画や舞台など役者としても活躍

『水曜どうでしょう』のオープニングタイトル。

N「そんな大泉洋の人気を不動のものにしたのは、この番組。『水曜どうでしょう』」
《テロップ》
人気を不動のものにしたのはこの番組…

ナレーターの読む『水曜どうでしょう』は発音が異なる。正しく『水曜ロードショー』と同じイントネーションで「どうでしょう」を発音したいところだ。
続けてDVD「原付ベトナム縦断1800キロ」用の撮り下ろし前枠後枠映像より、カブに乗って画面右下に突っ込む“カブ”ちゃん(鈴井さん)。

N「深夜番組としては異例の、最高視聴率18.6%をマーク」
《テロップ》
深夜番組としては異例の視聴率18.6%

水無海浜温泉で、水無どころか海の一部と化して水没している露天風呂に浸かり、寄せ来る波の洗礼を受ける大泉さんの映像(「闘痔の旅」DVD第2弾に収録)。

N「この番組には、北海道の美しい景色、感動などは、一切ない」
《テロップ》
「美しい景色」「感動」など一切無い

薬師温泉の露天風呂に浸かるミスターと大泉さんの映像。続いて薬師温泉の内湯に浸かるミスターと大泉さんの映像。さらに二股ラヂウム温泉の、まだ湯が張られていない露天の湯船に座り込むミスターと大泉さんの映像。藤村D「ケツ漬けとけ!」(同じく「闘痔の旅」)

N「24時間中に、温泉で痔を治す。題して、闘痔の旅」
《テロップ》
24時間中に温泉で痔を治す「闘痔の旅」
(温泉に)ケツつけとけよ

「原付ベトナム縦断1800キロ」のオープニングで、背後の看板をミスターが叩き破ると中からカブが出てきてびっくりする大泉さんの映像。そしてベトナムを走り出すミスターと大泉さん、豪雨のなかの走行シーン、ゴール間近のミスターと大泉さんの映像が続けて流れる。(「原付ベトナム縦断1800キロ」DVD第1弾に収録)

N「原付バイクで、ベトナム1800キロ縦断など、無謀極まりないものばかり。しかしそれが、いつしか北海道で話題となり、DVDリリースとともに、全国で大ブレイク」
《テロップ》
原付ベトナム縦断1800キロ
いつしか北海道で話題となりDVDリリースとともに全国で大ブレイク

2003年12月31日のカウントダウンライブで、完全防寒姿で歌う大泉さんと、集まったファンのみなさんの映像。

N「生まれ故郷、北海道をこよなく愛す。北の大地が生んだスター、大泉洋。北海道の人たちが見守るなか、うたばんで、どんなトークを繰り広げるのだろうか」
《テロップ》
生まれ故郷の北海道をこよなく愛す
北の大地が生んだスター 大泉洋

VTR終わり。

Vの途中、映像が流れるたびに苦笑したり照れ笑いを繰り返す大泉さんに対し、左右に陣取る石橋貴明と中居正広のVを見つめる目は真剣そのもの。闘痔ネタでわずかに石橋の口もとが緩んだ程度。にこりともしないその反応を見て、大泉さんの目がちょっと泳ぐ場面もある。カウントダウンライブの様子が流れたときに映った根本要さんは、濃いオレンジ色のかわいらしいマグカップでなにやら飲んでいるマイペースぶり。なにもたまに映ってるときにわざわざ飲まなくても。

“この人が大泉洋です”というテロップとともに、大泉さん大写し。人間が大変情けない姿を見られたときに見せる苦渋の表情で、思わず下を向く大泉さん。

中居「さあ、では改めてご紹介しましょう。大泉 洋 with STARDUST REVUEのみなさんでぇーす」

紹介されても大泉さんの苦渋の表情は変わらず、下を向きっぱなし。

石橋「既になんか、悲しげな……」
中居「方(かた)ですね、も、やられちゃった顔してますね」
大泉「ウソばっかりですわあのVは」
石橋「え、なんで」
中居「どういうことですか」
大泉「いや、そんなに人気あるわけでもないんですけど」

スタレビの要さんのほうをちらりと見やって苦笑する大泉さん。要さんはギターを抱えたまま斜に構えつつ何も言わずただ笑っている。うしろに座るのは左から柿沼清史さん、寺田正美さん、林“VOH”紀勝さん。ボーさんだけが、なぜか笑っていない

中居「これ、北海道のなかでは」
大泉「あーーーーー……。ま、ぼくがああやって言ってるんでね」
「自分で言ってんのか」
大泉「ええ、ですからぁ」
中居「北海道のなかでは自分が有名だと」
大泉「まあ、でもね、ああやってよくしてもらってはいるんですけど、決してそういうなんてんでしょうね、スターとか、そういうことじゃないですね」

テロップ “皆さん よ~く見て下さいね この人ホンマおもろいで…”

大泉さんがしゃべっている途中で入ったテロップの内容は、他局のほぼ専属タレントを強く推す内容。うたばん制作者にファンでもいるのか。

中居「じゃ、な、なぁんすか」
大泉「な、なぁん、テ、テレビには、出てるんですよ」

テロップ “北海道では… 大泉洋をTVで見ない日が無いとか”

全国区ではない大泉さんをなんとか視聴者に受け入れてもらおうと、制作スタッフ必死の工作に目頭が熱くなる。

なーに言ってんだろうな、という表情の要さん。うしろに座るスタレビの3人も、どうからんでいいのかわからない様子で、ただ微笑むのみ。

大泉「テレビには出てるんですけども、で、微妙だと思うんですね、テレビに」
中居「確かにあの、全国区……の顔立ち、ではないですよね」

テロップ “全国区の顔立ちではない”

大泉「顔立ちね、顔立ちは違う、それはボクもわかっちゃいる」
中居「顔立ちは、失礼ですけども」
大泉顔立ちのことはボクだってわかってる、それはそうです、ね」
中居「天然、パーマですか?」
大泉「いやあ、よく、見抜かれたなあ」

テロップ “よく見抜かれたな~”

大泉さん、破顔一笑して答えるが、そんな破顔一笑するところなのか。

大泉「すごぉい早さで見抜かれましたねぇ」

えらいまた感心しているが、そんなに感心するところなのか。
ここまで話題に入ってこなかった石橋が、満を持してカットイン。

石橋「こういう感じの髪型を見たのは、ライオネル・リッチ以来ですよ」

テロップ “ライオネル・リッチ以来ですよ”

BGMに「Say You, Say Me」が流れる。

大泉「あはははっ。そぉんなことはないですよっ。そぉれはないよ」

否定する大泉さんの顔にライオネル・リッチの写真が重ね合わされる。似てるっちゃ似てるが、似てないっちゃ似てない。

大泉「そぉれはないない。すごく、誉められましたよメイク、あのメイクさんに」

自分の髪を触りながら誉められた誉められたと言い募る大泉さん、笑顔のスタレビのなかで、やっぱりボーさんにだけ笑顔なし

テロップ “さぁパーティーはこれからだぜ うたばんは大泉洋を歓迎します”

石橋「どこの」
柿沼「どこの!(笑)」

後列左端の柿沼さんが入ってきた。マイクに拾われる声は前列よりやや小さめ。

大泉「東京のですよ」
中居「(笑)」
大泉「どぉして? ちょっと、待って?」

出演者側から見えるモニタを鏡代わりに、自分の頭を映して髪型の確認をする大泉さん。

中居「ただ、メイクさんだって、こうして、なんかこうやってるときに、『あなた、ひどいですねぇ』って、そりゃ言わないですよ」
大泉「あっは、いや、そんなことない」

大泉さんはまだモニタから目を離さず、自分の髪型チェックに余念がない。そしてなにか結論を得たようだ。

大泉「いや、違う、いや、東京はちょっと湿気が多いですよ」

なんやその結論。不満気な顔でそっくり返る大泉さん。

石橋「(何を言い出したんだという顔で)うん」
大泉「(石橋に視線を向け)湿気があると天然パーマはこうなるんですよ」
石橋「くるくるっと」
大泉「やっぱりうたばん出なきゃよかったよ

テロップ “やっぱりうたばん出なきゃよかった”

うしろを振り返って、おそらくボーさんと目を合わしている大泉さん。さっきまで笑いのなかったボーさんも思わず笑顔で「ままままま」と大泉さんをなだめにかかる。

石橋「ええ、なーに、なーに?」
大泉「ああん……やっぱりだ。こうなるもん

テロップ “こうなるもん”

石橋「ええ、なーに、なーに? うたばん、ダメ?
大泉「うたばん、出るとだいたいいじめられるって聞いてたけど、やっぱり、やっぱり髪のこと言われた」

テロップ “やっぱり髪のこと言われた”

拗ねる大泉さん。場内は爆笑。

大泉「やっぱりだよ」
石橋「なに、じゃあ、あくまで北海道のなかでの人気者でいたいわけ。それとも全国制覇って夢はあるわけ?」

大泉さんのアップ。ちょっと口を尖らせ、頬をふくらませて、しばし無言……。

中居かわいくないよっ!

テロップ “かわいくないよ!”

大泉かわいいとかじゃないよ別にっ!

腕組みをして椅子にもたれかかり、ご機嫌斜めの中居くん。

大泉「かわいいとかじゃ」

突然激高し、大泉さんを指さして叫ぶ石橋。

石橋「○×△(聞き取れず)はどーゆーことだそれぁーっ」
大泉「いやいや違」
中居「かわいくねぇよっ」
大泉「かわいいつもりはボクはないですよ、ただボクは真剣に今考えてたわけですよ」
石橋「うん」
大泉「お、おれってどうなりたいんだろうな、って今考えたわけですよ」

しきりに頷きながら、下を向いて考えをまとめる風の大泉さん。

大泉「どうなりたいのかって言われれば、ボクはこのまんま、これぐらいの収入が続けば……」

テロップ “これぐらいの収入が続けば…”

要さん、爆笑。このくらいってどのくらいだか知らないが、妙に小市民的な物言いだ。

石橋「絶対このあと売れても東京へ住むなよ
大泉「(意表を突かれて)いや、そらぁ」
石橋「約束できるかぁ?」
中居「そうだよ、東京住むなよぉ!」

石橋の攻撃に息を合わせ、尻馬に乗る中居くん。
突然の大泉包囲網に戸惑う大泉さんは、別に住むとも住まないとも言っていないのに、住むな住むなと言われるので、むしろだんだん住みたくなってきた様子。

大泉「どぉしてぇ」
石橋「北海道にいろよ、ずっとぉ」
中居「北海道からずっと通い続けろよ」

中居くん、舌回ってない

大泉「いや、東京、なんで住んじゃいけねぇんだよ、こっちはぁ」
石橋「あぁぁぁあぁ(反論しやがったという感じ)」

住みたいわけでもないのに、ついつい反論する大泉さん。

大泉「いや、みなさんに住むところまでボクは指示される必要はないわけじゃないですか、これはいいところがあったらボクだって住みたいですよ」
石橋「ダメダメェー!」
中居「ダメー!」

都知事から全権委任を受けてでもいるかのように、ダメ出しするふたり。うれしそうな要さん。

石橋「もし! 東京に住んでるとか聞いたら、取ってもいない天丼、10個届くぞ!」

テロップ “(天丼10個の写真)届くぞ!”

柿沼「いやがらせだ!(笑)」

大泉「(なにを小学生みたいなこと言ってんだという顔で)それぐらい……それぐらいだったらいいですよぉ」
柿沼「(嬉しそうにツッコむ)いいんだ、それぐらいだったらいいんだ」

結構しゃべってんな、柿沼さん。

石橋「毎日だよ!」

テロップ “毎日だよ”

大泉「毎日だよって」

中居「じゃあ今もう北海道に住んでらっしゃるわけですね?」
大泉「ボクは北海道もなにも、実家ですボクは」
中居「実家から通ってるわけですか、さあ、そんな北海道、お母さんと電話がつながっています

テロップ “お母さんと電話がつながっています”

意外な展開に、大泉さん、大ウケ。知らされていなかったのか。

大泉「なんの意味があって、おふくろと電話をつなげてるんですか(笑)」
中居「もしもし!」
大泉母「もしもしぃ」

テロップ “電話:大泉洋の母”

中学生くらいの大泉さん(詰襟学生服姿)と母親の2ショット写真が左下に。
手を叩いて喜ぶ大泉さん。……喜んではいないかも。

中居「お母さん、聞こえますかぁ?」
大泉母「あーぃ。もしもしぃ。中居さんですか?」
中居「中居です、どうもー!」

手で膝を叩き、足を踏みならして、ただ一人ウケ続ける大泉さん。

大泉母「まぁまぁ~、中居さんってあれ? 『砂の器』のあの、ピアニストの和賀さんですか?」
大泉「砂の器、好きだったんです、うちのおふくろは。そうだよぉ、母さん! 砂の器の……」
苦笑する中居。
石橋「砂の器で、ピアニカァ吹いてた子供ですよ」
大泉母「はーい」
中居「子供じゃないよ」
大泉母「まぁーあはは」
中居「今日息子さんとね」
大泉母「はーい」
中居「お会いされて(噛んだ)、お会いさせてもらいまして」
大泉母「いやいやいやお世話になってます。でもなんかずいぶんいじめてるみたいですね」
中居「いやいや」
大泉「母さん、いじめられてるよ!」

ゴングが鳴って石橋立ち上がる。大泉さんに対して殴る蹴る。

大泉「あーがっ、あーっ、やめて! 母さん! 母さん! 暴力です!」
中居「息子さん、喜んでますぅ!」

再度ゴングが鳴り、石橋の攻撃。

大泉「母さん、母さん、輝いてます」

なに言ってんだ、大泉さん。

中居「お母さん! なんか北海道を捨てるっておっしゃってますよ?」
大泉母「ウソでしょう(笑)」
中居「東京に住みたいとおっしゃってます」
大泉母「いやいやいや、ローカルの星だっていつも言ってますよ」

テロップ “ローカルの星だっていつも言ってます”

母さんの天然トークに、場内ほがらかな笑いに包まれる。

大泉「母さん、あのー、明日朝一で帰るから
大泉母「あっそう?」
石橋「個人的なこと話し……」

と、言い終わらないうちに立ち上がってパンチ一閃。
そんなスタジオの様子がわからない大泉母、なにごともないかのように話を続ける。

大泉母「明日、何時頃?」
中居「息子さん、喜んでます」
大泉母何時頃明日帰ってくんの?」

テロップ “何時ごろ明日帰って来る?”

大泉母の天然ぶりに、さすがのボーさんもメロメロ。笑いが止まらない。

大泉「7時。飛行機7時だから昼くらい」
大泉母晩ご飯は明日、明日晩ご飯?」

テロップ “晩ご飯は?”

石橋「お母さん、公共の電波であまりですねぇ、あの」
大泉とにかくそれが気になるんですよ」

息子が家で夕飯を食べるのかどうか、それなににも増して関心事だという母。

石橋「お母さん、あの」
大泉母「はい」
石橋「すぐですねぇ、あの息子さんにギャラ振り込みますんでぇ」
大泉母「はい」
石橋「あの、口座番号教えてください」

テロップ “口座番号教えてください”

大泉母「あのね、ダメですよ、なんぼ稼いでるかどうか知らないです、うちにはね、2万円しか入れてないんですからねぇ」

テロップ “ダメですよ なんぼ稼いでるかどうか知らないですけど…”“ウチにはね 2万円しか入れてないんですよ”

要さん、顔の半分が口になる勢いで大笑い。
大泉さん、凹む

大泉「母さんもういいよ! 母さんもういいよ!」

テロップ “実家に2万円しか入れない大泉洋(31)”

またも立ち上がった石橋に手刀で突きを喰らう。
すっかり参ったという表情の大泉さん。わずかこの数分間で目の下に隈ができた。

中居「あと息子さんに今、聞きたいことはございますか?」
大泉母「いやあもう明日何時頃帰ってきて晩ご飯、食べるかどうか、聞いてください」
中居「晩ご飯? 晩ご飯?」
大泉「一番それが気になるん……」
中居「晩ご飯気になんの?」
大泉母「はぁい、食べるか食べないかによってこっち」
中居「食べるか食べないかに」
大泉「帰って仕事あるから晩ご飯いらない」
大泉母「いらないですか」
大泉「いらない、晩はいらない」
大泉母「あ、そぉ、うん」

いらないと聞き、やや残念そうな大泉母。

大泉「うん」
大泉 大泉母「また」「じゃ」

同時に発声。

大泉母「うん、気を付けて」
大泉「はい」
大泉母「あんまりいじめられないうちにさっさと帰っといで

テロップ “あんまりいじめられないうちにさっさと帰っておいで”

石橋、中居くん、手を叩いて喜ぶ。

大泉「母さんだよぉ……母さんがぁしゃべるからぁ。母さん余計なこと言うから」
石橋「さっさと帰っといで」
中居「母さんが一番味方なんだ」
大泉母「はぁい」

すっかり主役を母親に奪われたうえ、月々実家に入れる金額まで暴露された大泉さんはかなり気落ちしている。

中居「最後にお伺いします!」
大泉「もいいって」
大泉母「はい」
中居「息子さん、洋くんの」
大泉母「はい」
中居「一番、いいところは、どこですか」

大泉さんは、もうすっかりふてくされて机につっぷしてしまった。

大泉母「あー、優しくて明るいとこですねぇ」

テロップ “優しくて明るいとこですね”

明るい息子さんは、カメラに顔も向けないでふて寝してるぞ。

中居「はあん」
大泉母「はい、とってもわたしに優しい子です」
大泉どうでもいいよバカ

大泉さん、暴言。

大泉「小学生じゃないんだ」
石橋「なに、なに照れてんそこでぇ」
大泉「しょうが……」

石橋のフォローも虚しく響くくらい、大泉さんの凹みっぷりは激しい。

中居「明日帰りますんで!」
大泉母「はい!」
中居「晩ご飯いらないって!」
大泉母「よろしくお願いしまっす」
中居「どうもーっ!」
大泉母「ありがとうございました~」
中居「はーい!」
大泉母「失礼しまーす。中居さんもがんばってくださいねー」

テロップ “中居さんも頑張ってくださいね。(はぁと)”

大泉「お母さん礼儀正しい。礼儀正しいよね、母さんは」
中居「ありがとうございまーす! どうもでーす」
大泉母「はーい。ごめんくださーい」

テロップ “お母さん どうもありがとうございました”

大泉「礼儀正しい人だよ」
中居「いいお母さんだねぇ」
石橋「なぁーんであのお母さんでこの息子なの?」
大泉「ほっといてくださいよ、そんなの。あんな人じゃない、あの人はねオレにこう言ったんだ『あんたが生まれるってわかってたら生まなかった』って昔言ったんだから」

テロップ “あんたが生まれるって分かってたら生まなかった”

大泉「明らかによそ行きですよあれは」

幼少時代の大泉さんの写真に、“明らかによそ行きですよ”とフキダシ。

大泉「あんなこと言う人じゃない」

電話が切れて反論がないのをいいことに、暴言の限りを尽くす。

中居「あ、スープカレー。あ、じゃあ、こちらにあるとこに行ってみましょう」

ここで話題転換。

テロップ “突然ですが札幌みやげ登場!”

大泉「あ、スープカレーをちょっと召し上がってもらいたいな」
中居「スープカレーって知らないなあ、でも」
大泉「スープカレーご存じないですか?」
石橋「これがぁ、まだ東京にそんなに」
大泉「まだない。これねぇ、とにかくここチキンのレッグとかとにかく大きい具材がどかーんと入るのがこのスープカレーの特徴なんすよね。一瞬だからこれはカレーなの?というのがわかんない感じですけども、こらぁねぇ、なんて言うんでしょう、1回ではなかなかハマりません」

テロップ “1回ではなかなかハマりません”

中居「ハマんないのぉ?」
大泉「これマジック・スパイスっていう、あのお、札幌ではカリスマ的なお店で、ずっと行列ができてるんですけどぉ。あ、これ辛さもすごい選べまして、これ今どれくらいなんだろうなぁ」

テロップ “札幌で大ブレイク!! 「スープカレー」試食”

ちなみにこのマジック・スパイスなる店、東京の下北沢に支店が出ている。おそらくスタジオに現物を差し入れたのは支店だろう。

中居「これ、辛っいよぉ」
大泉「いや」
中居「食べてちょっと。これどんくらい?」
大泉「これ、食べれない札幌じゃなかなか行列できてて」
石橋「うまい」
大泉「おいしいですよね」
中居「辛くない?」
大泉「あ、ほらほら」

大泉さんは中居くんから皿を受け取り、ひとさじ口に運ぶ。

中居「うまい?」
大泉うわっ、辛っ

テロップ “うわっ 辛っ”

眉間に皺が寄り、険しい表情。思っていたより相当辛いらしい。

大泉「なんだよぉ、これ。辛いよぉ。これはかなり辛くしましたねマジスパ」

辛い辛いと評判の皿からスープを取って飲んでみる石橋。

石橋「いや、このくらいでしょう」
大泉「辛いのお好きなんだ」
中居「辛いですよね」
石橋「うまい……うわっ、辛っ

テロップ “うわっ 辛っ”

中居「ねぇー? こっち絶対辛いよこれ」

テロップ “今回の新曲「本日のスープ」は このカレーを題材にしたそうです”

大泉「ああああとからね、あとから。あとからあとから」
石橋「あとからくるね、これ」
大泉「あとからくる」

あとからあとからと、何回も繰り返す大泉さん。

石橋「でもうまい」
大泉「これおいしいでしょ」
石橋「うまい! これはうまいと思う」
大泉「これなんでしょ、毎日食べれるんですこのカレー、なんとなくねぇ」
石橋「でもね、大泉くんは毎日いらないけど、これは毎日大丈夫」
大泉「(ちょっと心外な表情で)いらない情報ですよ、その大泉くんは毎日いらないってのは」
中居でもね!
石橋「大泉くんは毎日見たくない。濃いから」
大泉「よくもここまでこの短時間で嫌われたもんです」
石橋「(笑)」

笑いながらスープカレーを食べ進む石橋とは対照的に、司会者の顔に戻って進行する中居くん。さっき大きな声で「でもね!」と言いかけたのがなんだったのかはついにわからずじまいだった。

中居「さあそれではですねぇ、本日のこのぉ『本日のスープ』を披露していただけるということなんですけどもその前に、ちょっとウォーミングアップ的に、なんか、アカペラでちょっとなんか歌っていただけるようなことが」
「あー。はい」

出番がやってきて、居住まいを正す要さん。横で激しく頷いている大泉さん。

石橋「STARDUST REVUEのみなさんに、ウォーミングアップで」
「いやー、すっかり食べ切っちゃいましたね、ほんとにね」
石橋「アカペラのほうを、お願いします」
「じゃ、やるよ。えー、じゃ『上を向いて歩こう』ちょっと歌ってみるか」
STARDUST REVUE「あー、はい」

後列の3人に加え、いつの間にかコーラス要員が2人加わって、スタレビ4人+応援2人でアカペラ。
所在なさげな大泉さん。ちょっと首をこくこくさせてリズムを取ってみたりする。

『上を向いて歩こう』
 作詞:永六輔/作曲:中村八大
 歌:坂本九

さすがはSTARDUST REVUE、見事に歌い切って万雷の拍手。

歌い終わえたSTARDUST REVUEのみなさんに、嵐のような拍手を贈る大泉さん。すっかりうしろを向いて、ただの客。
途端に中居、石橋の両方からどつかれる。大泉さん、びっくり。

石橋なんか歌うんじゃねぇのかよ!

テロップ “なんか歌うんじゃねぇのかよ”

中居なにやってんだよ! “上を向いて”で上向いてんなよ!

テロップ “「上を向いて」で上向いてんなよ!”

大泉おぉほっれ、オレはSTARDUST REVUEじゃないんだよぉ! 全然歌えませんよ、こんなもん

テロップ “俺はSTARDUST REVUEじゃないんだよ
全然歌えませんよ”

石橋「なに逆ギレなんだよ、毎回毎回!

大泉さん十八番の逆ギレ発動。しかし藤村D対戦時と比べればまだまだおとなしい。

大泉「しょうがないじゃない、ボクはだって、ボクもだからどうしてようとは思いましたけど」

大泉さんがもごもご言っている途中でコマーシャル。

テロップ “まだまだ続く…爆笑トーク大泉洋は不滅です”

そしてモーニング娘。やら伊藤つかさやら大沢逸美やら杉田かおるやらが出てきた別コーナーを挟んで、いよいよ歌。いやあ、歌番組のくせになかなか歌わなかったなあ。この1時間でおまけのアカペラ入れても合計4曲しか流れないわけだから、ほとんどがトークの番組だ……と思っていたら、TBSのサイトではこのうたばんは歌番組ではなく“バラエティ”に分類されていた。それなら納得。

ご一行様は歌う態勢にスタンバイしているらしく、中居くんと石橋はステージの端に立って曲目の紹介。

中居「さあ。ぼくらの目の前で歌っていただけるということで」
石橋「はい」
中居「どんな歌か想像つきませんけど、参りましょう」
石橋「はい」
中居「えー、大泉 洋 with STARDUST REVUEのみなさんで、『本日のスープ』です、どうぞ!」

■『本日のスープ
 大泉 洋 with STARDUST REVUE

テロップ “2004年カウントダウンライブ(札幌大通り公園) 収録されているコーラスは約2万人の声”

無事に終了。1番だけだったが、今日も大泉さん、無難に歌い切る。ミュージックステーション出演時より余裕があったのか、前回は黙ってうつむいていたイントロの「オー ウィヤエー」も発声していた。

中居くんと石橋が、歌い終わった一行を迎える。

石橋「ちょっと歌うまいんでびっくり」

それはきっと素直な感想だろう。さっきまでのバカトークからは想像のつかない美声だ。
石橋「なあんだよそれ、ずるいよ」
大泉「(笑)いや、ずるい……」
中居「今なんかちょっとぉ、あの、ちょっと、なんか、腹立ってる感じなんですよ」

大泉さん爆笑。中居くんのそれも、きっと素直な感想だろう。

中居「だから申し訳ないですけどもぉ、アカペラで終わりにします」
大泉「あははははっ、それはぁ! じゃ、オレは何しに来たかわからない」
中居「お母さんとのトークを」
大泉「オレは、お母さんと話しに来た変わった人じゃないですか」
石橋「あはーはーはー」
大泉を、聞かせてくださいよ」

石橋「これ……売れるね
大泉「あはは」
中居「きちゃうんじゃないすか」
石橋「きちゃうね。でも、絶対東京に出てくんなよ
大泉「……とにかく嫌いだ。大嫌いですね。ぼくが(笑)」
石橋「(笑)」

中居「東京にもまた遊びに来てくださいね。どうもありがとうございましたぁー」
大泉「ありがとうございましたー」
「ありがとうございましたー」
中居「大泉 洋 with STARDUST REVUEのみなさんでしたーっ」
石橋「こーりゃー売れるよ」
大泉「そうですか?(頭を下げる)」
石橋「うん、こーりゃー売れる」

何度も頭を下げる大泉さん。そしてコマーシャル。アルカリを超えたオキシライド乾電池。これ、使えるかな、HP200LXに。

そんなことはともかく、今回(2004年5月6日放映)のうたばんでもSTARDUST REVUEのみなさんは大人の対応で、大泉さんを立ててくれていた。大泉さんにはこの勢いで、さらに他局の番組に殴り込んでいただきたい。

| | コメント (12) | トラックバック (5)

2004.05.06

第4話「パズルの女」

テレビ東京の「ウルトラQ dark fantasy」。今回はシリーズ構成が上原正三、脚本は広田光毅、監督に八木毅。

携帯電話で受け答えする自称坂本通称マド、携帯を持って外出するマド、携帯でしゃべりながら街角を走るエンクミ、誰だか知らないが怖がる若い男、そいつが「殺される」とつぶやくとエレベーターが火花を散らして落ちていくシーン、そして日のあたる団地の遠景……と短いカットが特になんのナレーションもなく続き、いきなりタイトルが挿入されてオープニングテーマが流れる。

団地に住んでいるのは、冒頭でなにかにびびっていた若い男。団地の建物外の共用部分に並ぶ郵便受けへ、自分宛の郵便物を取りに出てくる。口に歯ブラシらしきものをくわえているのと、まだ新聞が刺さっている郵便受けもあるところから、きっと朝だろう。どうでもいいがその場所はあまりにも吹きさらしだ。大事な郵便が配達される日に雨が降らないことを祈る。

郵便受けに入っていたものをすべて取り出して引き返そうとすると、投函されたなにかが郵便受けの底を叩いたかのような、乾いた音がした。郵便受けの表示から望月という名字らしい彼がもう一度蓋を開けると、そこには白い長三の封筒が入っていた。宛名面に住所はなく、“望月様”とだけ書かれている。裏に差出人の名はなく、ベロの部分にしゃれたエンボス加工が施され、赤いハートマークに天使の羽根のようなものが生えたシールで封緘してある。

部屋に戻った望月。笛吹ケトルで湯を沸かしている。わたいも同じようなヤカンを使っているが、望月のそれはやけにきれいだ。ヤカンの隣のコンロで油ものを料理したことがないらしい。ぴかぴかだ。部屋全体が映り込んでいるので、よく観ると左側のほうに黄色っぽい服や白い服を着た撮影者たちが映っているが、それは言わない約束だ。

白い封筒には、ジグソーパズルのピースが入っていた。机の上に出してみる望月。沸かした湯でマグカップに粉末ポタージュスープを溶かすと、机に向かってピースを組み始める。そんな余裕があるところを見ると、今日の仕事は休みなのだろう。

封筒に入っていたピースをすべて組んでみても完成しないパズル。できあがったのは白い服と白い靴の女性かあるいは女性を目指してホルモン注射を打ったり手術に挑んだり日々鍛錬を続ける男性かいずれかの左足部分のみ。「なんだよ、これ」と不満気な望月。

あさひなんとかかんとか(判別できず)という病院から出てくるスーツ姿の望月。なんだ、仕事だったのか。余裕を持って起床するとはよい心がけの男だ。契約を済ませたと電話で報告しているので、製薬会社のMRではなく卸のMSか、医療機器メーカーの営業、あるいは給食会社、はたまた売店に品物を入れている業者、自販機のベンダー、ユニマットとかなんかそういう商売と推測してみたが、この物語にはなんら関係ない。

病院の前ですっころげてリンゴやミカンを歩道や車道にぶちまける老女。思わず大丈夫ですかと声をかけて駆け寄り、果物を拾い集める望月。好青年。車道に転がっていったリンゴふたつを取りに行った望月は、向かい側の歩道に停めてある赤いオフロードバイクのエンジンの下に、白いハイヒールを履いた左足が覗いているのを見つける。身体は、ない。

驚く望月だが、その鼻先を右からクラクションを鳴らしながら突っ込んできた白いセダンが減速せずに通り過ぎ、これまた驚いて尻餅をつく。それでも右手に掴んでいたリンゴは離さない望月。

夜、帰宅ついでに郵便を回収する望月。部屋に戻って机の上に広げたままのパズルを見ると、昼間見たのと同じ左足であることに気付く。足首に巻かれた貴金属が、同じ足であることを強く主張している。

回収してきた郵便物のなかに、また白い封筒に入ったパズルがあった。熱心に取り組む望月の部屋に、コツコツとヒールの踵を響かせながら、近づく音がする。本日分までのピースでできあがったのは、腿から下の全部。「いたずら?」とつぶやく望月。

所変わってマドの勤めるGLOBAL MAGAZINE JAPAN。時間は夜。今日もマドとつるむエンクミが、用意しておけと朝頼んだ資料がなんで見あたらないんだよと、紙を巻き散らかしながら大荒れ。

マドの机は汚いらしい。編集者の机は常に汚いというのが固定されたイメージだ。いろんな紙が集まってくるので、そうなりがちなのには同情するが、結果として汚いのは個人の性癖で要するにだらしないのだ。

さて、コースター代わりにされていたMOに、エンクミの望む資料が収められていた。ノートPCの液晶モニタに表示して見せるマド。それはスキャンされた雑誌の記事のよう。

“タクシー運転手「死のドライブ」動機なき自殺”という記事。さらにエンクミは、コピーした記事を2点、マドに見せる。“高校教師 理由なき焼身自殺 校舎の裏で壮絶な死”、“白昼の悲劇 飛びり自殺にかりたてたものとは? なぜ? 人望ある介護士の飛び降り自殺の動機は?”誤植原文ママ

エンクミ「ゴウちゃんの記事も含めて全部、一年以内に起こった事件よ。3人とも、自殺の動機がわからないの」

動機のわからない自殺は珍しくないと思うが、それよりもマドはエンクミから初めてゴウちゃんと呼ばれたのが特筆すべき点だ。

エンクミはこれらの自殺になんらかの共通点があると見ているのか、ただ単なる野次馬根性なのか、「ミステリアスな匂いがしない?」と暗にマドに対して取材への協力を匂わせる。「お前、また首突っ込もうとしてるな!?」と警戒心たっぷりのマド。

エンクミ「ジャーナリストの端くれとして、放っておけますかってぇの」

カメラマンじゃなくてジャーナリストだったのか、エンクミ

夜、リラックスした格好で買い物に出ている望月。自販機でタバコを買い、コンビニかスーパーの袋を左手にぶら下げて団地に向かう。すると、後ろからコツコツと足音がついてきた。振り返っても誰もいない。しかし歩き出すとまた足音が聞こえる。

「はーーー、はーーーー、はーーー」

寒いのか口癖なのか、はーはー言いながらついてくる足音。白い靴を履いた半透明の足が歩いている映像は望月のイメージか、劇中の現実か。かつて見た左足だけの女(あるいは以下略)を思い出して、びびった望月はダッシュで帰宅。部屋の机には、腿から下が完成しているパズルがまだ置いてあり、それを見て「まさか」とまたびびる望月。
「はーーー、はーーーー、はーーー」

規則正しい足取りながら、着実に望月の部屋に向かってやってきたはーはー声&コツコツ足音。望月はびびりながらも、玄関のドア越しに大声で威嚇すると、ドアを素早く開けて外に飛び出し、周りを見渡す。もちろん、誰もいない。はーはー声も消えた。

時と場所を変えて、どこかのビルでエレベーターを待つ望月。そこに登場したはーはー声&コツコツ足音は、じわじわと望月に迫る。

異常を察した望月が、ちょうどやってきたエレベーターに転がり込むと、ドアが閉まる寸前に、白い靴の左足先が差し込まれ、ドアが閉じるのを阻止。びびりまくった望月は、足の持ち主は誰なのかと視線を上に上げることなく、ひたすら足先のみを見て「やめろ! 来るな! 消えてくれぇ!」と恐がり倒す。エレベーター内を転がり回っているときに、ドアに正対する壁を背にしていたが、その位置からなら、隙間の向こうの姿が全面的に見えただろう。なぜ視線を上げないのか、望月。

すると、突然警報音が鳴り響き、7階にいたらしいエレベーターは滑落を始めた。そのまま底まで落ちるのかと思ったら途中で停まり、しかもきちんとどこかの階に高さを合わせて停まったらしく、普通にドアが開いた。普通じゃないのは、ドアの向こうに、足を揃えたはーはーちゃんが立っていたことだけだ。完全に扉が開いているので全身が見えていると思われるが、またも望月は足先だけを見て消えろ! 消えろ!」と大騒ぎだ。

床にうずくまり、はーはーちゃんが消えるのを待つ望月に、どうした望月、大丈夫かと声をかける男がいた。マドだ。なぜマドがそこにいる。どこだそこは。そもそも知り合いか、きみら。

どこぞのオープンテラスでお茶する望月とマド。これまでの経験をかいつまんでマドに話したらしい望月は、パズルで作った女がつきまとってる?と聞き返すマドに、「あり得るのかな、そういうこと」と尋ねてみるが、マドは一言のもとにあり得ないと否定。田舎の母親が見合い写真をパズルにして送ってきたりしてんじゃないのかと笑顔で推測を述べるマドに、望月はまじめに聞いてくれとぶち切れる。

マドに対して語るところによれば、望月には女の姿が見えていないらしい。しかしさっきエレベーターでは見ていたではないか。よくわからない。

自室に戻り、今日もまた届いていた封筒からピースを取り出して組んでいく望月。これまで組んだところまでの姿が画面にも出てきているわけだが、望月はその点をあまり気にしていないらしい。今夜は両手を含め、肩までができあがった。残るは首から上だけだ。

一方、どこからともなくタクシー運転手、高校教師、介護士の自殺現場写真を手に入れてきたエンクミは、得意満面な様子でマドの机の上に並べて見せる。自殺ではなく、殺人の線はないか、と根拠もなく言ってみるエンクミ。相手にしないマドだが、興味津々で眺めていた写真のうちの1枚に、ジグソーパズルのピースが写っていることに気付く。

早速夕暮れのタクシー会社に聞き込みに行くマドに、「そういやガラにもなく作ってたなあ」とあっさり答える同僚。よくそんなこと知ってたな。ほかの2人についても聞き込んだマドは、3人とも死ぬ前にパズルを作っていたことを突き止め、望月に電話をかけてそう伝える。関連性は不明ながら、パズルを作るのは止めておいたほうがいいかも、と望月にアドバイスするマド。しかし望月の手には、今日もきっちり届いているピース入り封筒があった。

すっかりいやになって頭を抱え、へたり込む望月。と、そこへやって来たのはおなじみのはーはーちゃん。気配を感じてキッチンのほうを振り仰いだ望月の目に、見えていないと言っていたはずのはーはーちゃんがばっちりと姿を見せて立っていた。なんか、わたいの部屋の見た目ととてもよく似てるのがヤな感じだが、それは置くとして、他人様の部屋に上がるんだから、靴くらい脱げ、はーはーちゃん。しかしはーはーちゃんは聞く耳を持たない。首がないからだ。

腰を抜かす望月。そのざまがおかしかったのか、含み笑いを漏らしたはーはーちゃんは、両手を望月のほうへ差し出すとゆっくりと近づき、望月の首を掴むと絞め上げた。なぜだ。その行為になんの意味がある。

夢だった。……なんだ夢オチか。

日を改めて、パズルの現物を見せてもらおうと自殺者の家を訪れているマド。だが、息子はパズルを途中で作るのを止め、燃やしてしまったのだと説明する自殺者の母親。それが3軒目だったらしく、家を出るなり携帯電話で誰かに連絡を取ろうとするマド。彼の取材によれば、3人ともパズルを作るのを止めた途端に死んだとのことだ。ちなみにマドが電話をかけた先が誰なのかはわからずじまい。

夜、ぼんやりと道を歩く望月。やや車道にはみ出していたのか、またもクラクションを鳴らすだけで避けようとしない白いセダンに轢かれそうになる。走り去るセダンのテールランプをにらみつけ、気を取り直して歩き出す望月。ここで背後からはーはーちゃん登場。足音に気付いて後ろを見る望月だが、誰もおらず、車が1台やってくるのが見えただけだ。安心して歩き出した望月の目に、その車のヘッドライトが照らす影が入ってきた。自分ともうひとり、ふたり分だ。そして後ろの人影には、首がない。

茫然自失の望月。ケタケタと笑い声をあげながら近づいてくるはーはーちゃん。後ろから望月の首に両手を回し、抱きついてきた。はーはーちゃん、割と背が高い。望月と同じくらいあるだろう。それどころではない望月は絶叫すると、両手をはねのけて自室まで猛然とダッシュ。

部屋に駆け込むと、机の上のパズルに向かい、「殺される……なぜオレなんだぁ。なんでオレにつきまとうんだよ!」と叫ぶと、いつ届いたのかしらないがパズルの横にあったピース入りの封筒を、中身がそこらへんに散らばるのもかまわず破り捨てる。さらに狂乱した望月は完成間近のパズルを机から払い落とし、それでも飽きたらずに壁にかかっていたスーツを床に叩きつけ、部屋の中の品々を払い落とすは倒すは壊すはの大暴れ。その様子を、窓の外から見つめるはーはーちゃん。見つめると言っても、そんな感じがするだけで、実際には頭がないからよそ見されていたところでこっちにはわからない。

ひとしきり暴れた望月だが、ラックに収まったデスクトップパソコンなど、倒して壊すと困るものには手を出していないあたり、頭のどこかは冷静だったと見える。その望月、窓のほうを見て、なにかに気付く。レースのカーテンを開けてみると、窓に残る“ごめんなさい”の文字。一見、息を吹きかけて窓を曇らせ、そこに指で書いた風。これにより少なくとも、はーはーちゃんは外気よりも高い温度の気体をどこからともなく噴射できるということがわかった。

私服で昼間の公園のベンチに座り込む望月。ふと見ると、幼い娘が父親の背中から首に腕を回し、甘えている姿があった。それを見て、はーはーちゃんが以前後ろから抱きついてきたのは、甘えてそうしたのではないかと想像する望月。かつてエレベーターの扉が閉じないよう足を差し込んできたのも、その後にエレベーターが滑落するという事態を察知して、警告してくれたのではないかと、善意の妄想はふくらむ。

その夜もまたタバコを買い、自室に向かう望月。当然のように後ろからついてくるはーはーちゃん。一瞬びびる望月だが、今晩はひと味違う。積極的に打って出たのだ。相手の素性を知ろうと誰何し、さらにこう続けた。

「あのパズルを作って、そのあとボクをどうするつもりなの。殺したいの?」

そして身体は前を向いたまま、左手を後ろに差し伸べる。いつものリズムで近づいてきたはーはーちゃんは右手を伸ばし、望月の手を取ろうとするが、結局は握らずに後ずさり、立ち去った。思い切って振り向く望月だが、誰の姿も見えず、ただ遠ざかる足音だけが聞こえていた。

独自の調べを進めていたらしいエンクミは、自殺者3名をつなぐ共通点をマドに知らせた。それは「栄恵大学病院」。いつぞやのオープンテラスで再びお茶をしながら、マドは望月に情報を伝える。望月はその病院の担当ではないが、以前同僚の代理で一度だけ訪れたことがあるという。「そのとき、なにかトラブルがあったんじゃないのか?」と問うマドに答えて望月曰く、

「作ってあげたいんだ、あのパズル」
「なに言ってんだ」

マドじゃなくても「なに言ってんだ」だ。
「彼女、寂しくて、ただ、誰かが作ってくれるのを、待ってる。寂しそうなんだ、とても。空の下で、ひとりで待ってるみたいで」
「空?」

もう望月はマドとも目を合わさず、青い空を見上げたり机を見たりで、すっかり自分の世界に入り込んでしまっている。大丈夫か、望月。

栄恵大学病院のロビーで待ち合わせるエンクミとマド。エンクミの案内で院内の売店へ。売店の棚には青い空に緑の山々という絵柄のパズルが置いてある。売店のおばちゃんが問わず語りに話すには、それが最後の一個で、これまでしょっちゅう買ってくれたお得意さんの患者はもう亡くなったんだとか。その患者は二十歳前のきれいな娘だったと言う。そうか、では、「はーはーちゃん=女性を目指す男性」説は撤回しよう。女性看護士の証言によれば、小さい頃から入院暮らしで、両親とは早くに死に別れたそうだ。どうやって入院費を支払っていたのかはわからない。

女性看護士の手元には、患者が遺した数通の手紙があった。葬式のあと、病室の引き出しの奥から出てきたらしい。患者が死亡したあとも看護士あるいは病院が持っているらしい。遺族には返さないのか。誰が葬式出したんだ。その後の発言内容からすると、手紙の中身もきっちり読んでいるようだ。

封筒の宛名面には「未来の私へ」と書かれている。結構きれいな字だ。封筒は、パズルが入っているものと同じ。ただしハートに羽根の封緘シールは貼られていない。

手紙を渡されたエンクミは、音読。音読しなくてもいいだろう。でも、視聴者にとってはありがたい。

未来の私へ
 これを読んでいる私は、きっと死にたくなるくらい嫌な事があったんだよね。
 でも挫けないで。
 ほら思い出して、売店で本をとってくれた介護士さん
 本のお話が大好きで、いつもそっと笑いかけてくれた。
 私を見つけてくれた最初の人だよ。
 だから未来の私、頑張れ。

介護士? と顔を見合わせるエンクミとマド。しかしマドは手紙の扱いを全面的にエンクミに任せており、手紙を手に取ろうとも、顔を寄せて手紙を覗こうともしない。
 私、また素敵な人に見つけてもらったよ。
 タクシーの運転手さんで、ハイキングに行った話をしてくれたの。
 空がとってもきれいで、今度、元気になったら、ぼくが運転手になって連れて行ってくれるって。

マドは早速望月に電話。すると電話の向こうの望月は、最後のパズルが来たことをマドに告げて電話を切る。

完成直前のパズル。最後のピースは顔の真ん中。望月は敢えてそれを楽しみに残していたと見える。しかしその机、最初の足を作っていたときとても全部完成したら置けないような机だったように見えたが大丈夫なのか。その前に、あれだけ暴れて散らかしたピース、全部見つけたのか。すごいな。

入院中、かまってくれた成人男性に癒されたのだろうと推測を述べるマド。病院から手紙をパクってきたらしいエンクミは、3通目を音読。音読が好きな人だ。

 また、この手紙を読んでるんだね。でも思い出して。パズルのピースを、拾ってくれた男の人。高校の先生なんだって。
 晴れた空の下でやる運動会で食べるお弁当は、格別に美味しいって。

マドは、この女性は死んだあともう一度自分を見つけて欲しくて、好きだったパズルに身を変えて男たちの元へ行ったのだろうと、さらに推測を述べる。しかしみんな恐怖に負けて、パズル作りを途中で止めてしまったのだろうとエンクミ。
マド「彼女は、そんな仕打ちをした男たちを、殺してしまったんだ」
エンクミ「違うよ、彼女が殺すわけないじゃない!」
マド「じゃ、3人の死はどう説明する?」
エンクミ「事故よ。ただの不運な事故

えーー!? そうなん? ちょっと呆れた表情のマド。
エンクミ「望月さんだけが作り続けた。ただひとり、その恐怖の向こうにある彼女の寂しさに気付いてくれたんだよっ!」

ほな、最初からもっとフレンドリーな近づき方しといたらええねん。前から、堂々と、姿見せて。なんでまた必ず背後からはぁーはぁー息つきながら、忍び寄るねん。恐がらせる意図以外になにがあるちうねん。

だいたいこのはーはーちゃん、声かけてくれた男やったら誰でもええんやん。嫌な目ぇに遭うた奴んとこ行って脅かさんと、むしろ親切にしてもろた人から順番に破滅させていくあたり、なんとも迷惑ですな、はーはーちゃん。

マド「だから……だからと言って死んでいいはずないだろっ!」

ハンドルを叩いて憤るマド。わたいはマドに一票。しかしそれには動じないエンクミはさらに音読を続ける。
 Hello. 未来の私

ハローかい。
 今日、なんかとっても寂しくなって、ぼんやり空を眺めていたら、望月さんっていう人が、声をかけてくれたの。

エンクミの音読に、はーはーちゃん自らの音読が被る。望月は窓を開けましょうか、きっと気持ちいいですよ、とはーはーちゃんに近づく。窓を開けると一陣の風が吹き抜けた。
望月「あー、今日は随分と空が青いね。いつかあの空を、自由に飛べたらいいね」

 だから私、目をつぶって想像してみたの。
 望月さんが私の手を引いて、真っ青な空を、白い雲を、ぐんぐん進んで行くの。


「だから」ちゃうやろ。「だから望月さんが手を引いてくれる」わけやないやろ。えらいまた自分勝手な想像やなあ。まま、想像は勝手にしたらええけど、相手の都合も考えんとそれを実現させようちうのんはいかがなものか、はーはーちゃん。

自室で最後のピースをはめ込む望月。するとパズルの人物部分だけが明るく輝き始め、望月を下から照らす。完成した人物が誰なのかわかった望月は、にやにやと嬉しそう

パズルから発せられる黄色い光はますます明るくなる。

その者 青き衣を纏いて 金色の野に降り立つべし

王蟲の触手の如く下から差し出されるはーはーちゃんの両手。嬉しげにそれを取る望月は、光とともに消えた。

ちょうど最後の光が消えるところに、マドとエンクミが駆け込んでくる。鍵は開いていたのか。

机の上には、草原と青空だけのパズル。どうでもいいが、上下カツカツやな。机からこぼれそうやん。なんで机の長辺とパズルの長辺を合わせて作らへんねん。そんなぎりぎりの状態で無理からに載せいでも。

マドはパズルを見ただけですべてを察知したのか、「ばかやろう」と一言。エンクミは穏やかな表情で、「きれいなお空」。いや、それだけかい。えらい勢いではーはーちゃんに同情しているが、いったいなにがエンクミのハートを掴んだのか。

現実世界から消えたふたりは、パズルと同じ景色のなかを歩いていた。なんなんだそこは。キャプテンウルトラの最終回か。

だいたいなんで顔のほうからピース送らへんねん。最初はしゃーないとしても、3人も失敗してんで。そない失敗続けといて、気ぃ付かへんのんかいな、どないなってんねん、はーはーちゃん。そやから確信犯やろ、て言われんねん。

ほいでまた望月。自分、最後手ぇつないでもろてにったらにったらしてるけど、喜んでる場合ちゃうやろ。はーはーちゃん、別に自分やのうてもよかってんで! たまたま順番で回ってきただけやねんで、手ぇつないでもろてんのん! あほちゃうか、すっかりにやついてしもて。まあ、お似合いちうたらお似合いやけど。

佐野史郎「顔のない人物に惹かれた瞬間から、その人物はあなたを向こうの世界へ引き込もうと狙っているのかもしれません。くれぐれも、ご注意を」

こっちが顔のない人物に惹かれようが惹かれまいが、向こうが最初から引き込むつもりで来てるんやろ。そういう話やったやん、今日。

画面では、どこぞのアパートの102号室「上田」さんの郵便受けがアップで写り、なにかが投函された音がオーバーラップ。ここで「夕方に咲く花」が流れ、幕。

今回は途中までホラータッチだったが、最後にはエンクミの強引な物言いで、ちょっといい話し風になってしまった。望月が妙にいい人過ぎたためだ。エンクミにも望月にも賛同できないエピソードだった。

次回、「ヒエロニムスの下僕(しもべ)」。あの男が帰ってくる。果たして悪評を覆せるのか、渡来教授の実力が試される。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

« 2004年4月 | トップページ | 2004年7月 »