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2004.05.19

第6話「楽園行き」

テレビ東京の「ウルトラQ dark fantasy」。今回はシリーズ構成が上原正三、脚本は村井さだゆき、監督は服部光則。

父親の失踪を相談するため、自宅の和室にマド改めゴウちゃんを上げ、父の2004年度業務ノートを手渡す娘。娘はゴウちゃんを坂本さんと呼ぶ。そうか、ゴウちゃんは坂本さんという名字なのか。初めて劇中で呼ばれた。どうやら娘と坂本ゴウちゃんは知り合いらしい。

営業畑一筋だったという父親は、下請工場へ転属になったあとしばらくして失踪した。工場勤務中の日誌には業務のことは書かれておらず、「特になし」という文字だけが並んでいる。

しかし、失踪3週間ほど前からは、意味ありげな短い文章が書いてあった。


04年2月16日
退職した後藤には、彼からあの噂を聞かされる。

04年2月21日(土曜日)
7時出社  17時退社
後藤から楽園の事を詳しく聞く。彼は本気で信じているらしい。

04年2月28日(土曜日)
配達人と取引きしているコンビニを探し当てる。
同日、後藤が行く。
(意味不明の図形が書き添えてある)


娘は雑誌「Mind」の記者であるゴウちゃんなら失踪事件に詳しいのではないかと思い、相談しているらしい。
父親の失踪にはなんの興味もなさそうだったゴウちゃんだが、失踪する直前の日誌の記述がとても気になったらしく、「あのさ、しばらくこれ(ノート)借りていいかな」と言う。メディアの力で父を探してもらえると理解したのか、娘は嬉しそうに頷き、頭を下げる。ゴウちゃんが個人の興味本位でノートを受け取ったとは微塵も思っていないようだ。ゴウちゃんの使命は重い。

ノートを受け取ったゴウちゃんは失踪男の足跡を追い、下請工場へ聞き込みに。

いじめがあったのではと尋ねるゴウちゃんに対し下請工場は、本社からの大事なお客様をいじめるわけがない、丁重におもてなししていた、と説明。
仕事が生き甲斐だった人になにもさせないっていうのは、本人には相当辛いことだったんじゃないですか?」と尋ねるゴウちゃん。丁重にもてなす余り、どうやらろくに仕事を与えずお客さん状態だったようだ。業務日誌に「特になし」と書かれているのは、失踪男のやる気がなかったわけではなく、実際に仕事がなかったからだった。

日誌に出てきた後藤というのは失踪男より前にリストラされて下請工場に回された部長のことで、そこも既に辞めて警備会社に転職しているという。ゴウちゃんは続いて警備会社を訪ねてみた。

警備会社のとあるフロアの応接スペースに座り、アポを取った相手を待つゴウちゃん。

待っている間、事務所内では社員が忙しそうに走り回っている。

気の弱そうな女性の事務員に、朝のうちに取っておいてくれと頼んでいたコピーができていないと怒っている山井という名の営業マン。コピーは諦めてタイプを依頼し席に戻ると、営業に出かける上司に、準備が遅いと怒られる。慌てて上着を羽織って出かける間際、女子事務員に念押し。

山井「ちゃんとやっといてくれよな。俺が怒られるんだから」

頷く事務員。小林という名の上司から「山井!」と怒鳴られ、またまた慌ててホワイトボードに行き先を書くと、出かけていった。

ボードによれば今日は3月10日水曜日。同部署に8人いる男性社員のうち、ナンバー1の佐々木はニューヨークへ出張中。山井はナンバー2の小林に次ぐナンバー3らしいが、この扱いだ。山井の下には、城本、芦田、湯本、安中、岸の名が並ぶ。女子社員は画面に見えるだけで5名。表は外出して直帰。田中(恵)は産休中、読み取れない1名も外出して直帰。社内に残るのは内田と田中(美)だが、山井に怒られていたさっきの事務員がそのいずれかなのかどうかは確定できない。

ようやく現れた年配社員からゴウちゃんは、後藤はここももう辞めていることを知る。
辞める際、後藤はただ電話をかけてきて一言言っただけだという。

年配社員「それが妙なんですが、電話で一言ただ“楽園に行く”と言ったきり……」
ゴウちゃん「楽園……?」

業務ノートの一節を思い出すゴウちゃん。

04年2月24日(火曜日)
そこに至る道は『配達人』だけが知っているそう。
配達人を探す手がかりは目印の並べ方にある。

朗読するゴウちゃん、「そこに至る道は、『配達人』だけが知っているという」 ん? 読んでるわけじゃないのか? まあいいや。

夜の町を歩くゴウちゃんの姿に、業務ノートの一部がカットイン。


配達人=男? 女?
黒のカバン(カバンが丸囲み)
おもちゃ

「おもちゃ」の「ゃ」の字が小さくて「ち」にくっつき過ぎなので、ぱっと見は「おもち。」に見える。

駅前、東口 コンビニ
(画面から切れていて読めず)ン商店街のななめ前

たったこれだけの記述を頼りに、「フレンドマート」というコンビニにたどり着くゴウちゃん。店の外の隅に、王様のアイディアで売ってそうなオブジェが置いてある。強力な磁石を組み込んだ黒い台に、型抜きされた薄く小さな金属板や、金属のリングなどをたくさん載せ、いろいろなシルエットを作って楽しむ一種の置物だ。

コンビニの外にこんなものを置いていては、地面直座り小僧らに弄ばれて散逸するか持ち去られるか、いずれにせよ初期の姿のまま存在し続けることは叶わないだろうと思うが、「ン商店街のななめ前」に集う小僧は躾がいいらしい。

ここで佐野史郎のナレーションとともにオープニングテーマ。失踪男は大手企業の第一線を走ってきた営業部長だったそうだ。営業部長が失踪した日は3月5日金曜日。業務ノートには

楽園行き

と書かれていた。
佐野N「楽園行(ゆ)き、楽園行き、楽園行き。その言葉を初めて耳にしたとき、彼は既に禁断の時空に足を踏み入れていたのかもしれません」

初めて聞いたときにはもう踏み入れているんだったら、防ぎようがないな。あんたのナレーションはいつもそうだ

フレンドマートに近づく人影を、物陰からこっそり見張るゴウちゃん。黒い帽子、黒いコート、黒いズボン。黒いヒールを履いているな。女か。

細面で眼鏡をかけているその人物は、コンビニの建物の横手に回ると、カバンからなにやら外付けハードディスクくらいの大きさの“箱”ふたつを取り出す。ダンボール箱を手に現れた店員がその“箱”を受け取り、代わりに黒ずくめの女はダンボールに入っている品々を、黒手袋をはめた手で黒いカバンに詰め込んだ。

品々は、「S・O・S」と書かれた保存パックと缶詰の乾パン。そして薬かサプリメントが入っているらしい瓶。どれもこれも、わたしが普段行くコンビニではあまりお目にかからないものばかりだ。

見るからに怪しい姿の女を尾行するゴウちゃん。

3月初旬だからそんな格好でもいいが、夏になったらどうしてるんだ、黒ずくめ。

そんな先の季節はおかまいなしに、地下商店街へと潜っていく黒ちゃん。地下街では標的からわずか5メートルくらい後ろを飄々と追うゴウちゃん。

磁石と金属板のオブジェが店先に置かれた雑貨屋で、店員からなにやら封筒のようなものを受け取る黒ちゃん。伏し目がちに封筒を渡した女店員は黒ちゃんについていき、店の横で箱を3つ受け取っていた。あ、なんだ、ホントに王様のアイディアやん。商品提供の代償でタイアップの店名露出か。ファンタジーを銘打っといて、生々しい実世界見せるなよ。

さらに歩き続ける黒ちゃんは、地下商店街を外れて鉄の扉の向こうへと入っていく。慌てて追うゴウちゃん。そこは地下駐車場だ。10数メートル先に黒ちゃんの姿。走って追うゴウちゃんの靴音が響く。いいのか、それが尾行と言えるのか

さらにさらに追うゴウちゃんは、明かりのない階段を懐中電灯で照らしながら下っていく。いつも懐中電灯を持っているのだろうか。用意のいい人だ。

明かりを点けて尾行するのもどうかと思うし、何度も言うようだが、靴音が大きいぞ。絶対気付かれないはずがない。いや、むしろ気付いて欲しいとしか思えない。

ずんずん進んでいくゴウちゃん。いっさい後ろを振り向かないが、帰り道はわかっているのか?

いつの間にやら地下鉄の軌道に出たらしく、線路上を歩いているゴウちゃん。横をあまり人の乗っていない車両が通り過ぎていく。そこ歩いていて大丈夫なのか?

黒ちゃんの姿は完全に見失っているようで、きょろきょろしながら無造作に進んでいくゴウちゃんだが、どこでなにを目印に線路から逸れたのか、なにやら人間が通るために作られた風のトンネルに入り込んだ。

カンカンと鉄製の足場を踏む音を響かせながらどんどんと潜っていくゴウちゃんの十数メートル前で、黒ちゃんが右に曲がっていく姿がよぎる。あんたそんな近くまで寄ってその靴音立ててたら、ほんま、絶対バレてるって。

黒ちゃんの後ろ姿を見つけ、カンカン音を立てながら走って追いかけたゴウちゃんだが、すぐにまた姿を見失う。遊ばれてるんじゃないのか。だだっ広い一本道で、黒ちゃんが隠れられそうな場所はない。

その先では、巨大なダクトがうねり、大きな排気音が聞こえていた。明かりも点いている。今行った先からまた戻ってきたゴウちゃん。迷ったらしい。

ダクトの隙間を抜け、ひたすら進んでいくゴウちゃん。思いついたように携帯電話を出してかざして見るが、「」と悪態をついてジャケットにしまい込んだ。電波が飛んでいないらしい。そらそうやろ。

そのまま進むと、巨大な柱が林立する、やたらタッパの高い空間に出た。

下を覗くと、少なくとも十数名の人影があった。一列に並び、黒ちゃんから配給を受けているように見える。

黒ちゃんはコンビニでもらってきた「S・O・S」を配っていた。その代わり、列に並んだ人たちから、コンビニなどに置いてきた“箱”と同じものを受け取っている。黒ちゃんの横には腰の曲がった長髪の男がいて、受け取った“箱”をきれいにカバンに詰めている。

黒ちゃん、髪の毛を帽子に隠しているが、ばりばり女だな。

下まで降りてきたゴウちゃんは、どこからともなくデジカメを取り出し、その様子を収めようとする。しかし、アングルを決めるのにぐずぐすしている間に、青いスキー帽を被った男に見咎められ、とっさに逃げ出した。

人のいないほうに逃げればいいものを、左右に人がいて、正面は大きな柱という明らかに逃げ道のないところへ一直線に走るゴウちゃん。

無表情な男たちに囲まれて取り押さえられ、暴れるゴウちゃん。暴れながら取り囲む男たちを見回すうちに、なにかに気づいて動きをぴたりと止める。

佐野史郎失踪営業部長が立っていた。タツミという名字らしい。ゴウちゃんから呼びかけられても返事をせず、あんた誰?という表情で黙って視線だけを返すタツミ部長。

解放されてタツミの住まいで話しをするゴウちゃん。住まいと言っても、白い布やダンボールでだだっ広い場所を仕切った程度のプライベート空間だ。ホームレスと倍も変わらない。いや、ホームレスだろ、これは。

娘さんが心配していますよ、と伝えるゴウちゃんに、「ああ」とだけ答えるタツミ部長。こざっぱりした服装で、ヒゲも生えていない。こじゃれた椅子や机もあり、電灯も点いている。

彼らがいる場所は、作りかけで中止になった地下街の跡だと言う。それにしては深いし、柱多過ぎ

タツミ部長「いつの頃からかここに人が住み着き、横に穴を掘って広げ、今じゃ迷路のような地下都市が広がっているんだ」

住み着いたのはわかるが、穴掘って広げたというのはどうだ。とても個人が掘って広がったような景色には見えないぞ。
ゴウちゃん「もしかして業務日誌に書いていた楽園って……」

おいおい、ちょっと待てゴウちゃん。まさか、あんた今の今まで気づかなかったのか? なにを追ってるつもりだったんだ……。
タツミ部長「そう。ここだよ。安楽の園。だから楽園だ」

“だから”ってなんだ。説明になってないぞ。接続詞の使い方を一から学び直せ。「安楽の園、ですか……」納得したのかしてないのか、ぼんやりと口にするゴウちゃんは、タツミ部長が淹れてくれたインスタントコーヒーを受け取りながら、今日一番の笑顔を見せる。そんなに嬉しいのか、インスタントコーヒー。

電灯を見上げつつ、電気がどこから供給されるのか不思議がるゴウちゃんに、「開発途中で捨てられた大容量バッテリーだそうだ。誰かが改良して使えるようにしたらしい。電気は適当に、そのへんの共同溝から拝借してね」と答えるタツミ部長。

年配者数名が、バッテリーパックを製作している映像がカットイン。

黒ちゃんこと“配達人”は、住人がバッテリーパックに貯めた電気と交換に食料などを届ける役目を担っているという。地上で見た黒ちゃんの様子を思い出し、合点がいった様子のゴウちゃん。

タツミ部長「取引したい店は取引額に応じた目印を置いておく。すると配達人が現れて、契約を取り交わすという仕組みだ」

え? あのオブジェが目印であるのはわかるとして、それを契約したいという意思表示のために置くというのはどういう意味だ? 契約していますよという目印ではないのか。契約前に置くとしたら、いつどうやって“取引額に応じた目印”がどんなものかを知ることができるのだ。黒ちゃんが事前に営業して回っているのか?
タツミ部長「大きい店舗では月に数十万は経費が浮く」
ゴウちゃん「一体、何者なんです?」
タツミ部長「さあなあ。配達人は男か女か」

女やったで、黒ちゃん、どっからどう見ても女。
タツミ部長「一体何人いるのか。だが都市にはそういう輩が生息しているもんなんだよ。いつの時代にもな」

あ、そう。

ゴウちゃんはトイレを希望。コーヒーが早くも効いたらしい。即効だな。

もちろんトイレは完備されているようだ。タツミ部長は、水と食べ物とトイレがあれば人間はなんとかなると豪語。人々はコンクリートの床に椅子や畳を置き、思いおもいに本を読んだり車座になってしゃべったりしている。生きるために働きさえしてしない。ホームレスの風上にも置けないと言っていいだろう。

仕事が生き甲斐だった人になにもさせないっていうのは、本人には相当辛いことだったんじゃないですか?」とゴウちゃんは失踪したタツミ部長の気持ちを推し量っていたが、まったく的外れだったことがわかる。タツミ部長は仕事もなんにもない、みんなで歌おうゲゲゲのゲな世界を求めてここへ来たのだ。

100人かそれ以上が住むというこの場所には、“楽園”を信じる者だけが集まるのだそうだ。

タツミ部長「わたしや後藤みたいにね」
ゴウちゃん「後藤さんて人も、ここに?」
タツミ部長「彼は……」

なぜ顔をそむけて言葉を濁す。
ゴウちゃん「ここになにがあるっていうんです? 地上にない幸せがここにあるんですか」
タツミ部長「なにもないよ。我々はただ待っているのさ」
ゴウちゃん「待ってるって、なにを」

突然、チーンという金属音が鳴り響く。トライアングル、あるいは仏壇のリンのような音だ。

その音を聞いたタツミ部長は「また誰か逝ったようだ」と言う。彼らがただ待っているのは最期の時なのだそうだ。

タツミ部長「後藤は幸せそうな顔をしていたよ」

あらま。そういうことか。

ゴウちゃんの処遇についてタツミ部長は、「帰してやりたくても道がわからんのだよ。我々は配達人に連れてきてもらっただけで道を知らない」と語る。帰り道はゴウちゃん本人がわかってるんじゃないのか?

キミはあの迷路をひとりで戻れるかな?」 ぶるぶると顔を横に振るゴウちゃん。おいおい、だからたまには後ろを確認して帰り道を覚えておけとあれほど……。待てよ、帰してやってもいいなら、なぜ配達人には頼めないのだ。黒ちゃんに頼めば簡単だろう。

いっそここに住めと言われ激しく拒否するゴウちゃんだが、そのとき“楽園”に異変が起きた。遠くのほうからでエンジン音らしきものが響いている。

戻ろう、あいつらに見つかったら大変だ」と立ち上がるタツミ部長。追いかけるゴウちゃんは、娘さんのためにもなんとかして一緒に地上に戻りましょうよと、本来の目的を突然思い出して説得を試みた。

タツミ部長「キミ、あれはもう立派な大人だよ。ひとりでも充分やっていけるさ」

やっていけるかいけないかの問題じゃないだろ。
ゴウちゃん「でも」
タツミ部長「わたしはね、残された人生をここで静かに暮らしたいんだよ。誰にも煩わされることなく、安楽にね」

娘さえ煩わしいちうことなんか? 下請工場でも“誰にも煩わされることなく、安楽に”過ごしてたんちゃうんかいな。地上でなにが不満やったんか、今一ようわからんな、タツミ部長。しかもあんたに残された人生はまだ相当長そうだが。何十年も日の当たらない地下でぼんやりするのが楽園か?

わたい同様納得しかねる様子のゴウちゃんが「そんな……」と絶句したその瞬間、遠くで男の断末魔の叫び。

赤いレーザー光を照射しながら、キャタピラで動く大きな乗り物が迫ってきた。その周りを、頭のてっぺんからつま先まで白い衣装で包んだ人々が囲んで歩いている。戦車+歩兵のようだ。

タツミ部長「いかん。あいつらだ」
ゴウちゃん「あいつらって、誰?」

当然の質問だ。誰なんだ、あの白ちゃん軍団は。しかし質問には答えず、ゴウちゃんの腕を取って逃げたタツミ部長は物陰に隠れて様子を伺う。再度尋ねるゴウちゃんに、ようやく答えるタツミ部長。
タツミ部長「ネズミ取りだよ」

自分たちのことを“ネズミ”と自覚してるのか。なのにネズミなら駆除されても致し方ないとは思わないのか。地に墜ちた赤い彗星でさえ、グラスを片手に言い放つだろう。「ネズミだからさ」と。

白ちゃんらは、楽園の住人を発見すると、手にした噴霧器で、白い除草剤か殺虫剤のような毒ガスを吹き付けて“ネズミの駆除”を実行。白ちゃん自身は白いガスマスクを装着している。

ハンカチを口に当てて逃げるタツミ部長とゴウちゃん。しかし、トンネルに入ったところで、向こうから来た6人の白ちゃんに見つかり、囲まれてしまった。レーザーサイトから発せられる赤い光が、二人の額にばっちり照準を合わせていることを示す。ガス噴霧器にレーザーサイトが必要とは思えないが、無駄な装備を付けるのが白ちゃんの趣味なんだろう。

絶体絶命と思われたそのとき、白ちゃんの後ろから、住民が忍び寄って一撃を加えた。ヘルメットの後頭部を鉄パイプで打たれ、昏倒する白ちゃん。ヘルメット被ってる意味ないやん。スネル規格通ってないんちゃうか。レーザーサイト買う金あったら、もっとええヘルメット買えるやろ。金の使い方知らんなあ、白ちゃん。

助けに来たのは、ゴウちゃんを最初に見つけて押さえつけたスキー帽だった。今日もスキー帽を被っていたところを見ると、あの帽子が相当気に入っているらしい。

「どうして放っておいてくれないんだ。あいつらはっ!」

憎々しげに吐き捨てるタツミ部長。どうやら白ちゃんらが来訪したのはこれが初めてではないようだ。“ネズミ取り”が来るのをあらかじめわかってる場所が、なぜ“静かに暮らせる楽園”なのか、理解に苦しむ。

自分たちのねぐらに戻ってきたタツミ部長らが見たのは、壊滅した住居と、累々と横たわる住人たちだった。

殺したまま放っとくんかい。地上に連れて戻る気ぃないんかい。失踪してるもんも行方不明者も区別なく撲滅かい。ネズミ取りといえ、乱暴やなあ、都知事(都知事と決めつけたらあかん)

逆上したスキー帽らは、迫り来る白ちゃん軍団に肉弾戦を挑むが返り討ち。その様子を間近に見ているタツミ部長は言う。「ここは危ない
いや、言われんでもわかってるよ。あんたこそ、今わかったんかい。

タツミ部長「キミは逃げろ」
ゴウちゃん「タツミさんは?」
タツミ部長「なあ、キミ。もし地上に戻ることができたとしてもここでのことは秘密にしておいてくれ」
ゴウちゃん「……でも!」
タツミ部長「我々をそっとしておいてくれ、頼む」

我々って、もう“我”しか残ってませんけど
ゴウちゃん「娘さんにはなんて」

使命を忘れていないゴウちゃん、このまま帰ったのでは立場がない。
タツミ部長「幸せになるように」

そない言うたら、ここでのことを秘密にはしとかれへんやん。「直接会うといて、なんで連れて帰ってくれへんねん」て泣かれるやろ、普通。困った楽園オヤジやなあ、タツミ部長。

安楽マニアのタツミ部長はそれだけ言い残すと白ちゃん軍団に特攻を仕掛けた。鉄パイプを拾い、戦車風の巨大な乗り物の前に仁王立ち。しかし横にいた歩兵白ちゃんにどつかれ、あっさり鉄パイプを落として万事休す。

それを見て思わず助けに飛び出そうとしたゴウちゃんを、突然現れた黒ちゃんが遮った。

それでも助けに行こうとするゴウちゃんを、引きずるようにその場から連れ出す黒ちゃん。明らかに女性でゴウちゃんより体格が劣るのに、力は圧倒的にゴウちゃんを上回るようだ。鍛えてるな、黒ちゃん

逃走径路に立ちふさがる二人の白ちゃんをあっと言う間に投げ飛ばして気絶させた黒ちゃんに導かれ、わりとあっさり外へ出られたゴウちゃん。シャッターの閉まっている地下街を荒い息で走り、ここを登れば地上に出られるという階段の下でへたり込む。

そこへ後ろから黒ずくめの女性が顔を晒して近づき、ゴウちゃんにデジカメを手渡した。楽園で捕まったときに使っていたFUJIのデジカメだ。

黒女「落とし物ですよ」

ゴウちゃんの脳裏に、警備会社で山井に怒られていた女子事務員の顔がフラッシュバック。さすが雑誌記者。よく覚えているものだ。

戻ってきたデジカメからは、記録メディアが抜かれていた。がっかりするゴウちゃん。と、突然今の黒女を追いかけなければと思い立ち、階段を駆け上がるも、時既に遅し。黒女の影はどこにも見あたらなかった。途方に暮れた表情のゴウちゃん。

でも、あの警備会社に行けば、いるんじゃないの?

シーンはその警備会社。案の定、黒女は事務員姿でPCに向かっている。

机の上になにも広げず、背広を着たままぼんやりと座っている山井。シャツの一番上のボタンは留まっているが、ネクタイは曲がっている。

そこへ後ろから近づいた黒女が、無言で山井の肩に手を置いた。目を合わせるがなにも言わず、そのまま席に戻る黒女。

立ち上がった山井は、黒女を一瞥してからふらふらとホワイトボードに向かうと、思い詰めた表情で、行き先に「楽園」と書き記した。にやりと笑う黒女。ちなみに佐々木上司はまだニューヨーク出張中。

それにしてもタツミ部長は「連絡員が誰かわからない」言うとったで。社内で勧誘してたらバレバレやん。

タツミ部長佐野史郎のナレーションがかぶる。

佐野N「あの地下都市を楽園と感じるかどうか、それはあなたの日常が、どれだけ魅力的なのかに懸かっているのかもしれません。この彼の場合は……」

都市ちうより、村程度の規模やったけどな。それに彼=山井の日常が上司に怒られ三昧やったんは、黒女が頼まれた営業事務をきっちりせぇへんかったからちゃうん? 少なくとも映像ではそういう様子しか映されてなかったけどなあ。しかも随分黒女を小バカにしてたで、山井くん。そんな相手に誘われて楽園行き決定? どうも納得いかんな。行ったところでなんもせんと、座して安楽死を待つだけのことやろ。上司に怒られたくらいで行きたなるんか、そんなとこ。まず先に転職してみたらどやねん、山井くん。

今日はエンクミと渡来教授の出番なし。

黒ちゃんこと連絡員は、地下に“気力に欠くる”ホームレスを飼いつつ、地上に電気を売っていたようだ。同時にOLをやっているところを見ると、連絡員だけでは食えないらしい。食べるためではないとすれば、精神的、宗教的な理由で連絡員をやっているのか。都庁(だから決めつけるなと)が駆除に来るのを知っていてもなおあの場所を譲らないとすると、よほど得があるのだろうが、なんのためにヤバイ橋を渡っているのかわからない。
山井を勧誘した黒ちゃんは、楽園行きとボードに書く姿を見て喜んでいた。ひとり勧誘するとポイントでもつくのか。ダメ社員の肩叩きをしてネズミ取りに駆除させるために、地下へ送り込んでるようにも見える。
全体を通してざっくり言うと、都庁とホームレスの闘いであった。
ゴウちゃんはタツミ部長の娘になんと伝えたのだろう。

エンディングテーマは「どこか遠くに行きたくなるとき それでもわたしはここで花を咲かそう いつかはあなたが見つけられるように」とタツミ部長らとは相容れない気持ちを朗々と歌い上げていた。

次回は「綺亞羅」。予告を見る限りでは、ジャズにからめてちょっと高級感を出した、しかし所詮はロリコンネタっぽいが、さてどんなエピソードなのだろう。

※この稿は、2004.9.20に書き起こし、エントリーしたものです。

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