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2000.09.05

おそれいります

おそれいります この座席は、よごれ のため使用できません
ひかり号の座席にそんなことを書かれた紙が置いてあったのを見たことはないだろうか。
わたいはある。今、まさに今それを見ているのだ。
3人がけのB席に置かれたその白い紙は、およそ15×8cmの縦長だ。1.5mm程度の黒い罫線に囲まれて、冒頭の文言が黒々とした太明朝に平体をかけて配置されている。
この席に座る権利を有する50代のサラリーマンと思しき男は動揺し、オレはどうしたらいいんだ、これはなんだ、ゲロか、誰かがオレの席にゲロを吐いたんだ、洗ったのか、どうなんだ、きれいじゃないか、湿ってるな、座れないのか、ここにオレは立ってるのか、おいキミどうなんだ、と目が泳いでいる。
その横でC席の指定券を持った部下らしき30代サラリーマンが、すみません、わたしの手配でそのようなババを掴ませまして、と謝りながらも、自分はちゃっかり席に収まって手にした缶ビールを今にも開けようかという風情だ。
出発間際、やおら登場した車掌が、あなたのために来たのです、さあ、14号車にどうぞ、お連れ様もどうぞ、ささ良い席が、と二人を連れて去って行った。
A席に座るわたいの隣はすっぽり空席になり、おそらくこの道中、誰も座りに来ることはないだろう。ゆっくりとできることこの上ない。
さて、荷物でも横に……置けないではないか。そもそも、わたいの席は「よごれのため使用でき」るのだろうか。そう思うとなんとなく辺りが酸っぱいような気がしてきた。この状況は得なのか、損なのか。おいキミどうなんだ

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