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1999.04.28

社員食堂のチーフ

社員食堂には料理の責任者がいる。「美味しんぼ」の東西新聞にでもいるのだから、弊社にもいるのだ。
彼は厨房のおばちゃんたちからチーフと呼ばれている。チーフの名にふさわしく、頑固一徹叩き上げの風貌を持つ人物だ。噂では、現職に就いて3年ほどという。どこからか赴任してきたそうだ。
どの艦から来たのか知らないが、勤務3年で職場をドミニオンに明け渡す最後のチーフになってしまったとは不憫だ。しかも再奪取して舞い戻る可能性は皆無なあたり、真実は甘っちょろいSFドラマよりも厳しく辛いことを思い出させてくれる。(この数ヵ月後、社屋ビル建て替えのため社員食堂も閉鎖された)
実際この社員食堂は厳しく辛い。
辛いのではない。辛いのだ。塩辛いのである。どれもこれもそうだ。
辛くてなんぼのカレーも辛さの質が違う。もちろんうどんの汁の味付けも、醤油というよりも塩である。
これは辛い。
ここの辛いは辛いと読まず辛いと読んで欲しい。
塩の過剰供給は現チーフの赴任から始まったと、辛さに顔を歪めながら先達が証言している。
もっと肉体労働しろというチーフからの御達しなのか。毎日机に向かってばかりいる仕事っぷりの連中に、おそらく1日働いても汗一滴たらすことのないであろう種類の業務形態の我々に、勤労の汗の尊さを教えようという親心なのか。実にありがたい。皆、感謝のあまり、ひーひー言いながら額に汗して定食を平らげるのだ。その汗はねっとりとして冷んやりとした爽やかさに欠ける汗であるが、汗は汗だ
もう一つたまにチーフが見せる気配りは、だ。特にあさりの水煮を使った深川風丼に注目したい。食感がざらざらしているのだ。がりがりしているとも言える。がつっ、と歯に当たることも珍しくない。
もうおわかりだろう。消化されにくい貝類、まして丼で供された小さなあさりは丸呑みしがち。少しでも胃の消化活動の助けになればと、敢えてチーフが秘密の隠し味を混入させてくれているのだ。我々はまた涙を流して感謝しながら、ニワトリに思いを馳せるのである。

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