いちご狩り
人もすなるいちご狩りなるものをわたいもしてみんとてすなり。神鉄三田線で谷上から約10分。谷あいを走る単線ある無人駅「二郎」下車徒歩5分に、わたしは知らなかったが有名な「二郎いちご」の狩り場があるというのだ。爺婆二人が3つのハウスを切り盛りしているらしい。3歳以上は一人1200円、元を取るほど摘めるものなのかどうかというと、それにはいくつかの条件があるようだ。わたしなりの観察によると「客の数」「現場到着のタイミング」「おばはん度」の三つが重要である。いちご狩りで言う大きな成果とは“ほど良く熟した大きないちごをいかに多く摘んだか”である。多くの人は成果を挙げるために朝一番に行けばよいと思っているが、そんなことは誰もが思い、実行するものだ。一番に行ったあなたは(わたしもだが)人気ラーメン屋もかくやと言わんばかりの列を目にして愕然とすることだろう。まさにこれは「客の数」が多く「タイミングが悪い」最悪の状況だ。ありとあらゆるいちごはイナゴの群れが通った後のように食い尽くされ、なおも小さな青いいちごを殺伐とした雰囲気の中で奪い合うことになる。この波が通り過ぎると客足は一度途切れ、さらに管理の婆さんが未解放だったハウスの一部を次の波に備えて解放するのだ。この時が最も成果を挙げやすい瞬間で、確実に大粒のいちごが山盛り手に入ること受け合いである。さらに付け加えるなら「おばはん度」の高い人ほど目指すいちごがゲットしやすいのはバーゲン会場と同じである。事実おばはんは、ニュートラルゾーンにずかずかと侵入し取り放題であった。管理の婆さんに注意されても
「だって食べてない」と意味不明の答弁を繰り返すのみ。このくらい肝が座っていない客は、いちごとはいえ“狩り”という勇猛な試みは遠慮した方がよいのかも知れない。さて、一通り摘んで帰途に着いたわたしが「いちごの形が揃っていないので、いちご狩りに供するしかないわなあ」と思っていたところ、行きには気付かなかった看板が目に入った。「味は一番 二郎いちご」……なるほど、形についての意見を封じるよう、先回りして看板を。やるな、二郎いちご。
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